本記事は、川上徹也氏の著書『面倒なお願いでも、気持ちよく相手に届く伝え方は? 人を動かす伝え方50の法則』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

グループワーク,意見
(画像=Creative-Touch/stock.adobe.com)

【お金を出してもらいたいとき】
何に使うのかできるだけ詳しく伝える

寄付をはじめ、お金を集めるときに効果的な方法があります。それは、集めたお金の使いみちを詳細に伝えるということです。

セントルイス・ワシントン大学のシンシア・クライダーとカーネギーメロン大学のローウェンスタイン教授とシャインズ教授は、参加者を3グループに分け、寄付を求める文章の違いによって、集まる金額がどのくらい違うかを研究しました。文章は次の3通りです。

A オックスファム・インターナショナルは、世界でもっとも実績のある援助機関の1つです。オックスファムは、世界中の人々に幅広い人道支援を提供しています。オックスファムへの寄付を求められたら、いくら寄付しますか?

B (Aの文章に加え)寄付金はたとえば、困っている人たちがきれいな水を利用できるよう使われます。

C (Aの文章に加え)寄付金はたとえば、困っている人たちがペットボトルの水を利用できるよう使われます。

いずれも違いはごくわずかです。しかし、結果には大きな差が出ました。

まずはAとBの違いです。Aの寄付金の平均が7.54ドルだったのに対し、Bの寄付金は平均10.25ドルでした。たった一言、使いみちを加えただけなのに、30%以上寄付が増えたのです。

次にCです。実はCの結果は驚くべきものでした。寄付の平均は6.95ドルと、なんとAより低かったのです。つまり、使いみちを書いたのに書かなかったときより寄付が集まらなかったのです。

これは「ペットボトルの水」という表現が、「きれいな水」という表現に比べてイメージされにくかったためだと考えられます。その結果、Aのほうがまだマシというレベルまで落ち込んだのです。

このテクニックは、寄付だけでなく、さまざまな場面で応用がききます。

たとえば会社で予算を獲得しなければならない場面を考えてみてください。そういうときも、まずは予算をどのように使うかを明確に伝えることが重要です。

ただし、イメージしにくい表現は逆効果になりかねません。わかりやすい表現をするよう、気をつけましょう。

まとめ

「使いみち可視化効果」を使えば、人はお金を出しやすくなる

面倒なお願いでも、気持ちよく相手に届く伝え方は? 人を動かす伝え方50の法則
川上徹也
湘南ストーリーブランディング研究所 代表/コピーライター
大学時代、霊長類学や社会心理学の研究に没頭。世界中の論文との出会いを求めて図書館に通いつめ、狭いアパートの部屋を学術論文のコピーでいっぱいにして暮らす。
「人の心を動かす」仕事に興味を持って、広告代理店に入社。大阪支社で暗黒の営業局時代を経て、29歳で転局しCMプランナーに。しかしそこでも芽が出ず、会社を辞め何のあてもなく上京。フリーランスという名のフリーターをしながら通った広告学校の講師から、コピーライターとしての才能を見いだされ、TCC新人賞を受賞。その後、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞などを多数受賞する。
現在は、ブランドの魅力を物語にして伝える「ストーリーブランディング」という手法を確立し、企業や団体のマーケティング・アドバイザーとして活動。ジャンルの垣根を超えて、様々なものの魅力を伝え続けている。
『物を売るバカ』『1行バカ売れ』 (角川新書)、『ザ・殺し文句』(新潮新書)など著書多数。海外へも広く翻訳されている。

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