この記事は2022年11月28日に「The Finance」で公開された「TCFDとは?概要・国内外の事例まで総解説【2022年版】」を一部編集し、転載したものです。


昨今、気候変動が世界経済のリスクになっていることに伴い、気候変動の影響を想定した経営戦略を練ることが企業の最重要課題とされています。本稿では、TCFDに関する動向を踏まえて、TCFDとは何か?基本的な概要についてわかりやすく解説します。

目次

  1. TCFDとは
    1. (1)定義
    2. (2)TNFDとの違い
  2. TCFDが注目される背景
  3. TCFDに企業が賛同する意義
  4. TCFDのシナリオ分析
  5. TCFDで推奨される4つの開示項目
    1. (1)ガバナンス
    2. (2)戦略
    3. (3)リスク管理
    4. (4)指標と目標
  6. TCFDに賛同している代表的な企業・機関
    1. (1)金融業界でTCFDに賛同している企業
    2. (2)事業会社でTCFDに賛同している代表的な企業
    3. (3)政府機関でTCFDに賛同している組織
  7. TCFDへの賛同を表明する方法
  8. TCFDに関する日本の取り組み
  9. TCFDに関する海外の取り組み
  10. まとめ

TCFDとは

TCFDとは?概要・国内外の事例まで総解説【2022年版】
(画像=narawit/stock.adobe.com)

(1)定義

TCFDとは「Task force on Climate-related Financial Disclosures」の略称で、日本語訳では「気候関連財務情報開示タスクフォース」と呼ばれています。

昨今では地球温暖化などの影響により、大規模な気候変動などのリスクが大きくなっております。こうした気候変動のリスクは、世界経済への影響も大きいことから、環境問題に対する気候関連の財務情報開示を求めています。

また投資家の中には気候変動により、企業の潜在的なリスクを見ていきたいと考えるニーズが増えてきているため、適切な投資判断をしてもらうためにも必要としています。

具体的には気候変動への取り組みを企業や機関がどのように行なっているかを、積極的に開示することを求めるものです。2015年、G20の要請を受けた金融安定理事会(FSB)が、マイケル・ブルームバーグ氏を委員長として設置しました。その後、2017年6月に最終報告書を公表し、具体的な公表内容として以下の項目を推奨しています。

  • ガバナンス(Governance):どのような体制で検討し、それを企業経営に反映しているか。
  • 戦略(Strategy):短期・中期・長期にわたり、企業経営にどのように影響を与えるか。またそれについてどう考えたか。
  • リスクマネジメント(Risk Management):気候変動のリスクについて、どのように特定、評価し、またそれを低減しようとしているか。
  • 指標と目標(Metrics and Targets):リスクと機会の評価について、どのような指標を用いて判断し、目標への進捗度を評価しているか。

引用:TCFDコンソーシアム

TCFDの提言内容は世界的に広まっており、これまで3,868を超える企業や機関が賛同を示しています。日本においても1,062を超える企業や機関が支持しており、情報提供を行っています。

* 参照
 ・Task force on Climate-related Financial Disclosures
 ・日本のTCFD賛同企業・機関(経済産業省)

(2)TNFDとの違い

TNFDとは「Taskforce on Nature-related Financial Disclosures」の略称で、日本語訳では「自然関連財務情報開示タスクフォース」です。TNFDでは、企業の事業活動がどのように自然へ影響を与えているかを報告することが求められています。
そのためTNFDの目標は、以下のように明記されています。

TNFD の目標は、常に変化する自然関連リスクを組織が報告し行動を起こせるようにするためのフレームワークを提供することで、世界の金融の流れを自然にとってマイナスの結果から自然にとってプラスの結果へとシフトさせるようサポートすることです。
引用:TNFD Nature in Scope

TCFDは気候変動に関することが主となっていますが、TNFDは生物多様性保全にフォーカスされています。TCFDによって気候変動に関するものが注目を集めましたが、それに伴い、生物多様性保全の情報開示の必要性も求められるようになりました。こうした背景から、企業が生物多様性保全を行うためにはどのような活動が必要なのかを示すTNFDが設立されています。

TCFDが注目される背景

TCFDが注目されている背景には、「地球規模の気候変動に対するリスク」が挙げられます。気候変動に対して、すでに世界各国は動き始めており、2015年には温室効果ガスの削減に向けた国際的な枠組みである「パリ協定」が締結されました。結果として、パリ協定により世界中の企業は、温室効果ガスの削減が求められるようになりました。

しかし経済活動にとって気候変動は大きなリスクになると分かっていても、規模の大きさや長期的な展望が必要なことから、企業の意思決定において蔑ろにされているケースも少なくありません。

なお気候変動に対するリスクには、「物理的なリスク」と「移行リスク」の2つの側面があります。物理的なリスクとは、台風などの災害によって事業が行えないなどリスクを指します。

一方で移行リスクとは、世界的に気候変動に対応するために起こるリスクのことです。例えば気候変動に対応するために起こった技術革新についていけなくなる、気候変動を考慮した市場の変化に対応ができなくなるなどです。こうした「物理的なリスク」と「移行リスク」に対応するためにも注目されています。

TCFDに企業が賛同する意義

TCFDに企業が賛同する意義としては、「企業価値への評価基準が変化」してきていることが挙げられます。

なぜなら昨今では会社の利益のみに注目をする投資家は少なくなってきているからです。投資家は企業の業績だけではなく、環境問題への対応や社会貢献活動など財務諸表には表れない情報も合わせて、評価するように変化してきています。つまり企業価値への評価基準が変化してきているのです。

このような総合的な側面から企業を評価することは「ESG投資」と呼ばれています。ESG投資は、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字を取った略語で、投資家は財務諸表と合わせてこのESGにも注目して企業を評価し始めています。環境省の「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ」によれば、ESG投資の総額は日本で約336兆円に上るとしています。
TCFDはこのような財務諸表には表れない企業価値のアピールにもなるため、企業はTCFDに賛同する意義があります。

TCFDのシナリオ分析

TCFDを企業が行っていく上で欠かせないのが「シナリオ分析」です。シナリオ分析とは、その名の通り、企業が気候変動などに対応するためのあらゆるシナリオを用意し、それぞれの対応方法を考えることです。シナリオ分析を行うことで、そのシナリオにおいての事業継続性の判断材料にすることが可能です。

環境省ではシナリオ分析を以下の手順で進めていくことを推奨しています。

  • 経営陣の理解を得た後、シナリオ分析にあたっての分業体制、分析対象、時間軸を設定する。(事前準備)
  • 企業が直面しうる気候変動によるリスクと機会を洗い出し、財務上どのような影響を与えるか考え、それらの重要度を判断する。(リスク重要度の評価)
  • 平均気温の上昇温度別に、それぞれのシナリオを想定する。(シナリオ群の定義)
  • 想定したシナリオごとに、事業や財務面にどのような影響を与えるかを評価する。(事業インパクト評価)
  • これまでの分析結果を踏まえ、企業としてどのような対策ができるか検討する。(対応策の定義)
  • 分析したシナリオ、事業インパクト、対応策を文書化し、情報を開示する。(文書化と情報開示)

参照:環境省

シナリオ分析を行うことは、企業にとって多大な労力を必要とします。しかしシナリオ分析を行うことで、企業の未来を予測できるとともに、ESG投資を行う投資家に対してのアピールにもなります。

TCFDで推奨される4つの開示項目

TCFDで推奨される4つの開示項目としては、以下のものが挙げられています。

  • ガバナンス
  • 戦略
  • リスク管理
  • 指標と目標

定義の章でも説明しましたが、本章ではより詳細に解説していきます。

(1)ガバナンス

ガバナンスとは、企業自身が気候変動に関するリスクに対しての取り組みを、どのように管理するかにスポットを当てたものです。具体的には気候変動に取り組む委員会の設置などになります。

「気候関連財務情報開示タスクフォース」では、推奨される開示内容として、以下のようなものが挙げられています。

  • 気候関連のリスク及び機会についての取締役会による監視体制の説明をする
  • 気候関連のリスク及び機会を評価・管理する上での経営者の役割を説明する

企業の経営陣がどのように気候変動に関する取り組みを行っているかなどを開示することで、信頼性や明確性のある情報開示につながります。

(2)戦略

戦略とは、企業が事業を行なっていく中で「短期」「中期」「長期」のそれぞれにおいて、どのような気候変動のリスクがあるか、そのような気候変動が起こった際にどのような影響があるかを示したものです。実際に起こりうる影響はもちろんのこと、潜在的なリスクについても開示することで、信頼性のある情報開示になります。前章のシナリオ分析は、この戦略の部分に含まれます。

「気候関連財務情報開示タスクフォース」では、推奨される開示内容として、以下のようなものが挙げられています。

  • 組織が選別した、短期・中期・長期の気候変動のリスク及び機会を説明する
  • 気候関連のリスク及び機会が組織のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響を説明する
  • 2℃以下シナリオを含む様々な気候関連シナリオに基づく検討を踏まえ、組織の戦略のレジリエンスについて説明する

(3)リスク管理

リスク管理は、気候変動に関わるリスクを識別し、評価を行い、管理することです。重要なのは、開示するものがプロセスだということです。組織全体としてどのようなプロセスでリスク管理を行っていくかを明示していくことが求められます。

「気候関連財務情報開示タスクフォース」では、推奨される開示内容として、以下のようなものが挙げられています。

  • 組織が気候関連のリスクを選別・評価するプロセスを説明する
  • 組織が気候関連のリスクを管理するプロセスを説明する
  • 組織が気候関連リスクを識別・評価・管理するプロセスが組織の総合的リスク管理においておのように統合されるかについて説明する

(4)指標と目標

指標と目標とは、気候変動に関するリスクや機会を評価する際に利用する指標を明確にするものです。どのような指標を用いたのか、どのような目標を立てたのかなどを開示していきます。

また温室効果ガスの排出量についての開示も求められる場合もあります。なおどのような指標を用いるかは義務付けられていないため、自社の取り組みの中で適切な指標を選択することが大切です。

「気候関連財務情報開示タスクフォース」では、推奨される開示内容として、以下のようなものが挙げられています。

  • 組織が、自らの戦略とリスク管理プロセスに即し、気候関連のリスク及び機会を評価する際に用いる指標を開示する
  • Scope1、Scope2及び該当するScope3のGHGについて開示する
  • 組織が気候関連リスク及び機会を管理するために用いる目標、及び目標に対する実績について説明する

TCFDに賛同している代表的な企業・機関

TCFDに賛同している代表的な企業や機関は以下の通りです。

(1)金融業界でTCFDに賛同している企業

金融業界でTCFDに賛同している企業
東京海上ホールディングス株式会社 株式会社三井住友フィナンシャルグループ MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社 株式会社みずほフィナンシャルグループ
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ SOMPOホールディングス株式会社 株式会社大和証券グループ本社 野村ホールディングス株式会社
株式会社日本政策投資銀行 三井トラスト・ホールディングス株式会社 日興アセットマネジメント株式会社 第一生命ホールディングス株式会社
株式会社滋賀銀行 株式会社りそなホールディングス 株式会社日本取引所グループ 日本生命保険相互会社
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社 株式会社格付投資情報センター ニッセイアセットマネジメント株式会社
明治安田生命保険相互会社 住友生命保険相互会社 アセットマネジメントOne株式会社 東京海上アセットマネジメント株式会社
農林中央金庫 株式会社T&Dホールディングス 損保ジャパン日本興亜アセットマネジメント株式会社 日本郵政株式会社
株式会社ゆうちょ銀行 株式会社商工組合中央金庫 野村アセットマネジメント株式会社 株式会社日本貿易保険
三菱UFJ信託銀行株式会社 株式会社かんぽ生命保険 株式会社日本政策金融公庫 芙蓉総合リース株式会社
ジャパンリアルエステイトアセットマネジメント株式会社 朝日生命保険相互会社 信金中央金庫 株式会社九州フィナンシャルグループ
富国生命投資顧問株式会社 リコーリース株式会社 株式会社KJRマネジメント 株式会社国際協力銀行
オリックス・アセットマネジメント株式会社 日本バリュー・インベスターズ株式会社 株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 株式会社千葉銀行
三井住友DSアセットマネジメント株式会社 明治安田アセットマネジメント株式会社 株式会社海外需要開拓支援機構 株式会社コンコルディア・フィナンシャルグループ
朝日ライフ アセットマネジメント株式会社 大樹生命保険株式会社 スパークス・グループ株式会社 株式会社新生銀行
一般社団法人 環境不動産普及促進機構 三菱UFJ国際投信株式会社 株式会社東邦銀行 株式会社地域経済活性化支援機構
MU投資顧問株式会社 京都大学イノベーションキャピタル株式会社 株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構 東京大学協創プラットフォーム開発株式会社
株式会社静岡銀行 株式会社広島銀行 株式会社八十二銀行 伊藤忠リート・マネジメント株式会社
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 株式会社あおぞら銀行 株式会社日本格付研究所 森ビル・インベストメントマネジメント株式会社
富国生命保険相互会社 株式会社群馬銀行 積水ハウス・アセットマネジメント株式会社 野村不動産投資顧問株式会社
株式会社T.K.J. ニッセイ・ウェルス生命保険株式会社 株式会社ふくおかフィナンシャルグループ オリックス株式会社
東北大学ベンチャーパートナーズ株式会社 セゾン投信株式会社 りそなアセットマネジメント株式会社 株式会社ひろぎんホールディングス
大和アセットマネジメント株式会社 株式会社ほくほくフィナンシャルグループ 株式会社東京きらぼしフィナンシャルグループ 株式会社伊予銀行
株式会社めぶきフィナンシャルグループ 東京センチュリー株式会社 株式会社山陰合同銀行 株式会社民間資金等活用事業推進機構
大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社 株式会社西日本フィナンシャルホールディングス 株式会社北國銀行 株式会社第四北越フィナンシャルグループ
株式会社東京リアルティ・インベストメント・マネジメント/td> 株式会社中国銀行 株式会社北洋銀行 国家公務員共済組合連合会
株式会社十六銀行 株式会社百五銀行 株式会社阿波銀行 ジャパンエクセレントアセットマネジメント株式会社
株式会社山形銀行 株式会社南都銀行 株式会社福岡中央銀行 株式会社七十七銀行
地方公務員共済組合連合会 岩井コスモホールディングス株式会社 ヒューリックリートマネジメント株式会社 株式会社琉球銀行
株式会社筑波銀行 株式会社愛媛銀行 株式会社岩手銀行 オールニッポン・アセットマネジメント株式会社
株式会社四国銀行 株式会社西京銀行 株式会社武蔵野銀行 株式会社福井銀行
株式会社愛知銀行 GLIN Impact Capital 有限責任事業組合 東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社 株式会社東和銀行
株式会社百十四銀行 株式会社名古屋銀行 株式会社京都銀行 株式会社秋田銀行
株式会社ストラテジックキャピタル 株式会社おきなわフィナンシャルグループ 三菱HCキャピタル株式会社 ケネディクス不動産投資顧問株式会社
株式会社山梨中央銀行 株式会社紀陽銀行 株式会社神奈川銀行 株式会社池田泉州ホールディングス
MCPジャパン・ホールディングス株式会社 ジャパン・ホテル・リート・アドバイザーズ株式会社 イオンフィナンシャルサービス株式会社 株式会社山口フィナンシャルグループ
東急不動産キャピタル・マネジメント株式会社 株式会社栃木銀行 株式会社大分銀行 株式会社大垣共立銀行
株式会社京葉銀行 株式会社筑邦銀行 スルガ銀行株式会社 株式会社セブン銀行
株式会社三十三フィナンシャルグループ 三菱地所投資顧問株式会社 平和不動産アセットマネジメント株式会社 イオン・リートマネジメント株式会社
トーセイ・アセット・アドバイザーズ株式会社 東急不動産リート・マネジメント株式会社 NTSホールディングス株式会社 丸紅アセットマネジメント株式会社
ジャパン・リート・アドバイザーズ株式会社 大和ハウス・アセットマネジメント株式会社 CREリートアドバイザーズ株式会社 株式会社清水銀行
株式会社宮崎銀行 株式会社岡三証券グループ 岡三アセットマネジメント株式会社 三井不動産投資顧問株式会社
株式会社大東銀行 株式会社中京銀行 株式会社富山銀行 株式会社佐賀銀行
楽天銀行株式会社 全国市町村職員共済組合連合会 森トラスト・アセットマネジメント株式会社 株式会社十六フィナンシャルグループ
警察共済組合 公立学校共済組合 フィデアホールディングス株式会社 ダイヤモンド・リアルティ・マネジメント株式会社
京都中央信用金庫 碧海信用金庫 タカラアセットマネジメント株式会社 株式会社プロクレアホールディングス
みずほリアルティOne株式会社 株式会社イデラキャピタルマネジメント 株式会社クレディセゾン トモニホールディングス株式会社
株式会社北國フィナンシャルホールディングス 株式会社富山第一銀行 株式会社鳥取銀行 東京都職員共済組合
株式会社北日本銀行 アルヒ株式会社 株式会社Wizleap 株式会社静岡中央銀行
株式会社オリエントコーポレーション 東急リアル・エステート・インベストメント・マネジメント株式会社 株式会社高知銀行 NECキャピタルソリューション株式会社

(2)事業会社でTCFDに賛同している代表的な企業

事業会社でTCFDに賛同している代表的な企業(*一部抜粋)
東京電力ホールディングス株式会社 株式会社NTTドコモ
ソニー株式会社 トヨタ自動車株式会社
第一三共株式会社 キリンホールディングス株式会社
三菱商事株式会社 住友化学株式会社

(3)政府機関でTCFDに賛同している組織

政府機関でTCFDに賛同している組織
金融庁 環境省
経済産業省 独立行政法人中小企業基盤整備機構
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 国立研究開発法人産業技術総合研究所      
独立行政法人日本貿易振興機構 日本銀行
国立研究開発法人科学技術振興機構 独立行政法人住宅金融支援機構

* 参照
 ・日本のTCFD賛同企業・機関(経済産業省)
 ・Task Force on Climate-related Financial Disclosures

TCFDへの賛同を表明する方法

TCFDへ賛同することは、TCFDが提言している内容を組織として支持することを指します。
賛同するためには、以下のTCFDの公式ウェブサイトへアクセスし、必要事項を記載して送信することが必要です。
なお氏名や肩書きは組織の代表者ではなく、担当者の氏名であることに注意が必要です。なぜならTCFD事務局から確認のメール等が届く場合があり、対応が求められるからです。
賛同する際には、提出事項に自社のTCFDへの取り組みなどを記載する欄もあります。そのため外部へ向けた発信にもつながります。
公表される内容は組織名、業種、所在地、賛同月などです。また経済産業省への掲載も行えます。

[TCFD公式ウェブサイト]
https://www.fsb-tcfd.org/become-a-supporter/

TCFDに関する日本の取り組み

TCFDへの取り組みに関して日本では、積極的な取り組みが目立っています。なぜなら2022年10 月現在、賛同している企業・機関の数は1,062にも上っており、世界トップになっているからです。日本が官民を上げて取り組んでいると言えます。
具体的には経済産業省による「TCFD研究会」の開催や、「TCFDサミット」の開催などです。特に「TCFDサミット」に関しては、2019年から4年間、毎年開催されており、TCFD提言の活用に向けた議論を活発化させていることに加え、TCFD開示を行う際の事例や解説などを掲載している「TCFDガイダンス3.0」を発行するなど枠組みについても、先行して進めています。

他にも「アサヒグループホールディングス株式会社」や「味の素株式会社」など、多くの企業が「気候変動適応情報プラットフォーム」内にて、自社のシナリオ分析の実践などを公表しています。
こうした取り組みから、今後も日本を中心にTCFDへの取り組みが広がることが期待できます。

TCFDに関する海外の取り組み

海外でもTCFDの取り組みは進んでいます。
アメリカに本社を置く独立系資産運用会社である「Neuberger Berman」では、CROとCOOの管理の下、気候変動に関する潜在的な影響について、シナリオ分析を行っています。またシナリオ分析の結果から、エンゲージメント候補の優先順位付けや投資選択を行うポートフォリオの活用に活かしています。

また同じくアメリカの独立系電力会社である「AES Corporation」では、経営層が中心となった仕組みでシナリオ分析を行い、リスクレベルに応じて複数部門での検討や管理を行っています。また行ったシナリオ分析の詳細を、シナリオごとに計算プロセスなどを詳細に説明しているのも特徴です。
AES Corporationでは、これらを” AES Climate Scenario Report”として公表を行っています。

まとめ

TCFDヘの賛同企業は年々増加傾向にあります。それだけ気候変動に関する関心が高まっているのと同時に、投資家へのアピールにもなると捉えられています。持続的な企業の成長と脱炭素社会への移行・実現に向けた政府、各企業の取り組みに注目が集まります。


[寄稿]TheFinance編集部
株式会社セミナーインフォ