この記事は2022年10月27日(木)配信されたメールマガジンの記事「岡三会田・田・松本賢 アンダースロー(日本経済の新しい見方)『財務省の異次元の為替介入は可能』を一部編集し、転載したものです。

財務省
(画像=キャプテン・フック - stock.adobe.com)

目次

  1. シンカー
  2. 田キャノンの政策ウォッチ:為替介入のルール

シンカー

  • 財務省が円買い・ドル売りの為替介入に踏み切ったが、日本の外貨準備は179兆円であり、限界があるという見方がある。外貨準備の中の流動性の高い資産は更に限られることも指摘される。しかし、法令では、為替介入は現物だけではなく、先物やスワップなど、手段が豊富であることが分かる。先物などを使えば、為替介入は外貨準備の強い制約を受けない。財務省の神田財務官は「為替平衡操作の弾薬について制約を感じたことはない」と発言した。先物などを使った財務省の「異次元の為替介入」も可能であることを背景にした発言であると考えられる。

  • 財務省の為替介入は、為替の水準より、変動を問題視したものだと考えられる。日本の景気回復の促進には、日銀の金融緩和の継続が必要で、金融緩和継続の決断が為替の変動を大きくする連鎖を断ち切ろうとするのが為替介入で、日銀の金融緩和継続を側面支援するものと考えられる。しかし、それでも連鎖による変動が大きければ、財務省は「異次元の為替介入」で対抗するだろう。

田キャノンの政策ウォッチ:為替介入のルール

日本政府が行う為替介入は、財務大臣の指示の下、日銀に対して財務省が介入実行の具体的指示を行い、特別会計の法律に基づき、外国為替資金特別会計(外為特会)の資金を使って日銀が実務を担当する。円買い・外貨売り介入のオーソドックスな手段は、外為特会が保有する外貨を売却し、円貨を購入することだろう。もっとも、介入の手段はこれに限らない。

現行の法律では、(1)民間金融機関からの外貨の借入、(2)金融指標等先物契約の締結、などが利用可能である。金融指標等先物契約には、通貨スワップも含まれる。日銀に財務省が介入資金の調達を指示することはないが、スワップ先物市場でドルを調達し、その調達したドルを介入の原資とすることは可能である。その場合、外貨準備の制約を受けずに外貨を調達できるため、為替介入限度額は外貨準備を上回ることになる。

なお、為替介入について2022年11月上旬に、2022年7月から9月の介入日、金額、通貨ペアが公表される予定だが、そのほかの情報については公表予定はない。

会田 卓司
岡三証券 チーフエコノミスト
田 未来
岡三証券 エコノミスト
松本 賢
岡三証券 エコノミスト

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