本記事は、泉野晶代氏の著書『これで人づきあいは楽になる』(明日香出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

自信,ビジネス,スーツ
(画像=naka/stock.adobe.com)

境界線で「責任」を明確にすれば、仕事が生き甲斐の場にもなる

第4フィールドが趣味・嗜好の場であるのに対して、第5フィールドは仕事の場であり、社会的責任が発生します。会社の商品やサービスを提供し、相手から対価を手に入れる関係です。

自分の役割を果たし貢献することで自分の存在を認めてもらうことができるので、達成感や充実感も得られ、生き甲斐の場にもなります。

しかし、職場はいろいろな個性や価値観を持つ人々が働く場所なので、人間関係の問題も多く起こります。トラブルを避けるためには他の人と境界線を明確に引く必要があります。

境界線を曖昧にしていると責任の所在もわからなくなって、次のような問題が起こります。


(1)自分がやったほうが早いと、部下の仕事を上司が行ってしまい、部下が育たない。
(2)頼まれても断ることができず、残業が多い。
(3)自分の担当外の仕事を押しつけられる。

(4)必要以上の交友関係を求める人がいる。
(5)私生活に干渉してくる人がいる。
(6)パワハラ、セクハラを受けている。

(7)特定の人の存在が気になってイライラしてしまう。

(8)仕事が続かない(続けられない)。
(9)注意されると落ち込んでしまう。

自分の仕事とそうでないものは線引きをする((1)(2)(3)の問題)

傍観者効果の法則というのがあります。自分しかいなければやりますが、人数が多いとやらなくなるというものです。

たとえば、コピー機の隣のゴミ箱が一杯なのに、誰かが捨てるだろうと放置され、結局誰も捨てずにゴミがあふれんばかりになっているような風景、見たことはありませんか?

会社では、それぞれに役割や責任範囲を決めておくことが大切です。そうしなければ、頼まれると「NO」を言えない人が、自分の仕事ではないものも請け負わされて、その人の本来の業務が後回しになってしまいます。そういったことが、残業の原因となり、キャパオーバーでストレスを慢性的に抱えて最悪の場合には倒れてしまいます。

会社の対処に期待せず、あなたも自分の担当業務ではない場合は、安請け合いをしないで、「今回だけです」「○月〇日までにやります」などと伝えて、線引きをしておきましょう。そうでないと、あなたが取るべきでない責任が後々、覆いかぶさってくるのです。

このような状態は、結果的に、自分だけでなく会社にとっても良い状態ではありません。

また逆に、部下の業務なのに、自分がやったほうが早いと、部下の仕事を奪ってしまうのも相手の領域を侵す行為です。部下が育たないですし、いつまで経っても任せることができないでしょう。上司は部下が自分で考え、問題にも1人で対処できるように指導するものです。

ハラスメントへの対処法((4)(5)(6)の問題)

パワハラ、セクハラについては、自分で距離を取ろうとしても難しいことがあります。また相手に問題がある場合が多いですが、あなた自身が相手に過敏に反応していたり、勘違いだったりすることもあります。

上司だから仕方がないと受け入れてしまいがちです。上司を正すことは難しいです。悪質な場合でなければ、あなた自身が視点や視野を拡げて対応を変えるほうが解決しやすいのです。

1人では難しいなら、カウンセラーに相談しましょう。

また、あなたの私生活を詮索したり、干渉してくる人もいるかもしれません。それに対しても線引きしておくことです。昔は会社でも人の私生活に干渉するということがあったかもしれませんが、現代ではそういったことは少なくなってきています。

相談の中には、自分のSNS上に上司からのコメントがあり、干渉されるのが嫌だという内容もあります。こういう場合は、無視するか、無視しないかの2択ではなくて、一意見だと自分の心の中で境界線を引きましょう。

基本的には、上司と部下の関係の中に「信頼関係」があればトラブルにはならないものです。

仕事を辞める理由の多くは人間関係の問題です。仕事場で、自分のパーソナルフィールドを満たしたい気持ちはわかりますが、仕事場は仕事をする場所です。人間関係は大切ですが、仲良しグループの場所ではないということは心得て下さい。

職場とは自分の仕事を精一杯することで、信頼を得ることができ、必然的に横のつながりができてくる場です。精神的熟度が同じだと、日々の責任を果たすことによって、かけがえのないパートナーとなり、あなたのパーソナルフィールドがより充実し、仕事も順調に進めることができ、会社からも認められることになるのです。

主導権を奪われてしまう((7)の問題)

「あの人がいると、イライラする」
そんな人、あなたの職場にいませんか?

その人がいる限り、あなたはずっとイライラし、ストレスになるでしょう。

心理学的に言うと、あなたはその人に主導権を握られている状態です。

こういう場合は、「私が勝手にあの人にイライラしている」という風に考えるのです。

そうすれば、あなたに主導権が移り、あなた自身がコントロールできることにフォーカスします。

「あの人のせいだ」と人のせいにしてしまうと楽ですが、「自分には力がない」「あの人より弱い」という暗示を自分にかけてしまっているのです。そして、「あの人がいると、私はイライラする」と受動的になり、その人が言動を起こすたびにストレスを感じます。

あなたが「あの人」の動き次第で感情を左右されているということは、自分のパーソナルフィールドをあの人が支配していることになり、境界線を侵されています。考えてみればわかりますが、主導権があるほうが当然、力があります。

あなたはあの人のせいにしながら、自分の力を失っているのです。

仕事に対する考え方も、同じことが言えます。「お金がないと生活できないから、働かなければならない」ではなく、「人の役に立てお金をもらえるから、働きたい」と考え、「上司に怒られるから、仕事を早く済まさないといけない」ではなく、「自分の時間を有意義に使いたいから、仕事を早く済ませたい」と考えると、心持ちは大きく違ってきます。

受動的に働いている人は、主体的に働いている人と比べるとストレスが多いことが統計でもわかっています。

仕事にコントロールされる人ではなく、仕事をコントロールする人を目指しましょう。意欲が持てない人は、「やらないといけない」から「やりたくてやっている」と発想を変えて主導権を取り戻しましょう。

物の捉え方を変える((8)(9)の問題)

仕事が続けられない人は、物事の捉え方の枠を拡げていきましょう。

職場は仕事に対する責任を果たしていく場所なので、注意されることや教えられることも当然多くなります。しかし、注意されてその後ずっと悩み続けてしまうのは、自分のパーソナルフィールドが不安定な状態だからです。

人にとって安心できる場所は、非常に大切です。基本となる場所があるから前向きに進むことができるのです。悩み事から立ち直れない人は、まず考え方を変えましょう。

あなたが悪いから叱られるのではなくて、結果が悪かったから叱られたということです。

あなたの存在が否定されたわけではなくて、仕事の結果に対しての評価です。

仮に、あなたに対して誰かがひどい言葉を放ったとしても、それをそのまま鵜呑みにせず、考え方を変え、事実だけを捉えるようにしましょう。

また仮に、誰かがあなたに対して「最低ね」と言ってきても、「あなたのフィールドでは、最低という風に見えているのね。私のフィールドでは、頑張った結果になっているのよ」と、相手と自分の見え方をきっちりと区別します。

相手の発言が気になってしまう理由は、あなた自身が相手の目線で、あなたを見てしまっているからです。そのため、相手と同じ捉え方をし、自己否定し、落ち込みが始まるのです。自己肯定感が持てないということは自分を否定している状態です。

自己否定してしまいそうなときは、あなたが悪いのではなくて、「結果が悪かった」と考えるようにしましょう。
またチャレンジすればいいだけのことです。

これで人づきあいは楽になる
泉野晶代
高知県生まれ。
オフィス イズ代表。
父亡き後、多額の借金を引き継ぐ。返済の最中に親子問題や人間関係などの悩みを抱えるが、そのときに出会った心理学により克服。この経験を活かし、2011年に「自然の中にある静かな場所で人の可能性を引き出す」を理念としたオフィス イズを高知県香南市に設立。
NLP心理学を中心にカウンセリング、コーチング、セミナー講師として活動中。
発達障がい、愛着障がい、離婚、引きこもりなど相談件数は1万件以上にのぼる。

NLP(TM)協会公認トレーナー
NLP(TM)協会認定コーチ
ソーシャルパノラマプラクティショナー
社団法人日本学習事業会認定メンタル心理士

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