本記事は、桐生稔氏の著書『話し方の正解 誰とでもうまくいく人の55のルール』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

上司
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

理不尽な上司への受け答えはどうしたらいい?

話し方の正解 誰とでもうまくいく人の55のルール
(画像=話し方の正解 誰とでもうまくいく人の55のルール)

「上司からの理不尽な要求に対して、どう受け答えすればいいですか?」

よく寄せられる相談の1つです。

例えば、上記のような相談内容です。

あなたもこんな風に理不尽なことを言われて、悔しい思いをしたことがあるかもしれません。

理不尽とは、「理 → 道理」「不尽 → 尽くさない」です。

つまり、理にかなっていないことを言います。

逆は、「正当」です。

問題は、あなたは「理不尽」だと思っても、相手は「正当」だと思っているということです。

「理不尽」VS「正当」の構造で論戦すると、お互いバチバチに言い合うか、片方が言いたいことを押し殺すか、いずれにせよ傷は残ります。

本来やるべきなのは、「理不尽」と「正当」の間の差を埋めることです。

では、どうやって埋めるか?

それには、タイムアウト法が有効です。

タイムアウト法とは行動療法の一つです。

簡単に説明すると、バスケットボールやバレーボールの試合中に「タイムアウト」がありますよね。いったん戦うのをやめて、ベンチで相談することです。

このタイムアウトと一緒で、タイムアウト法ではいったん「理不尽」と「正当」で戦うのをやめます。やめて何をするのか?

相手に質問をします。

「どうしてそう思われたのでしょう?」と。

冒頭で取り上げた3つの相談例にあてはめてみましょう。

  • 発注間違え → 「何で私だと思われたのでしょうか?」
  • 納期確認 → 「先週と決まっておりましたでしょうか?」
  • 仕事遅くない? → 「なぜそう思われたのでしょうか?」

唐突に「どうしてそう思ったんですか?」と質問すると喧嘩になるかもしれませんので、クッション言葉として前置きで「1つ質問させていただいてもよろしいでしょうか?」と言ったほうがいいでしょう。

質問することでタイムアウトの時間が生まれます。

いわば、冷却タイムです。熱くなったお互いのモーターに冷水をかける行為だと思ってください。

そして、お互いのボルテージが下がったあとに、相手にしっかり説明をしたり、今後はどうするかを相手に選択してもらえばいいわけです。

次の例題でもっと詳しく説明しましょう。

テーマ「言った言わないの水掛け論」

質問

上司「あのときはできると言っただろ!」
部下「申し訳ありません。記憶をたどるので、少し質問してもよろしいでしょうか?」
部下「あのときとは、どのときでしょうか?」 or 「どういった文脈でその話になったのでしょうか?」

と冷静に質問します。これで問題の背景が確認できます。

上司から具体的な返答があれば、それは真実である可能性が高いです。

一方、上司の返答があやふやであれば、上司のほうも不安になってきます。

ひとまず考える時間を設けて冷却タイムに。その後に、説明タイムに入ります。

説明

上司「いや、確かにそう言った!」
部下「そうですか。5つタスクを抱えているタイミングで、私が6つ目を受けるとはちょっと考えにくかったもので、確認させていただきました」

ここで自分の考えを説明します。

「5つタスクを抱えていて」と、事実はできるだけ具体的に述べたほうが信憑性は出てきます。

あとは上司に選択してもらいましょう。

選択

部下「○○日までならばできると思いますが、○○日までの納期でよろしいでしょうか?」 or 「Aタスクは後回しにしてもよろしいでしょうか? それならば、すぐに対応できます」 or 「○○さんにサポートを依頼してもよろしいでしょうか?」

以上の例からもわかるように「質問・説明・選択」と、どれも相手と戦っていません。

大切なのは、「理不尽」と「正当」の差を埋めることです。

そのためには、埋める「時間」が必要です。

それが質問から始まるタイムアウトです。

冷静さを取り戻す時間でもあります。

人間関係において、誰だって相性のよし悪しはあり、考え方や意見が合わないのは当然です。

でも「相性が最低、だからアイツは最低」と考えると、何を言われても理不尽に聞こえてしまいます。

そうなると、相手とどんな会話をしてもうまくいかず、建設的な会話になりません。

人から理不尽なことを言われたら、すぐに反論せず、心の中で「T」の字を立てて、まずはいったんタイムを取ってください。

タイムアウト法を使うことで自分も相手も、落ち着いて会話ができるゆとりが生まれるはずです。

話し方の正解
理不尽なことにはタイムアウトで間をあける
話し方の正解 誰とでもうまくいく人の55のルール
桐生稔
◎13万部のベストセラー『雑談の一流、二流、三流」の著者。株式会社モチベーション&コミュニケーション代表取締役。日本能力開発推進協会メンタル心理カウンセラー。日本能力開発推進協会上級心理カウンセラー。一般社団法人日本声診断協会音声心理士。
◎1978年、新潟県十日町市生まれ。2002年、大手人材派遣会社に入社。営業成績がドベで新卒3カ月にして左遷される。そこから一念発起し、全国で売上達成率No.1を実現。その後、音楽スクールに転職し、事業部長を務める。2017年、社会人の伝わる話し方を向上すべく、株式会社モチベーション&コミュニケーションを設立。これまでに全国40都道府県で年間2,000回にわたり「伝わる話し方」のセミナーや研修を開催してきた。
◎セミナーや研修では、「1回で伝わる話し方テンプレート」「30秒で伝えるピンポイントトーク」などが大好評を博す。60分に20回以上笑いが起こるほど会場が盛り上がり、最後には衝撃的な感動が走る「心震わすメソッド」が評判を呼び、日本経済新聞、プレジデント、東洋経済オンライン、Yahoo! ニュースで紹介される。テレビ朝日とABEMAが共同製作する人気番組『マッドマックスTV論破王』では、ディベートの審査員も務めている。
◎著書に、『雑談の一流、二流、三流』『説明の一流、二流、三流』(以上、明日香出版社)、『10秒でズバっと伝わる話し方』(扶桑社)、『緊張しない「最初のひと言」大全』(Clover出版)など多数。

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