日本企業の99%を占める中小企業は、経営者の高齢化という課題に直面しており、後継者不在に伴う廃業の増加が懸念されている。事業承継の重要性が増す「大事業承継時代」ともいわれる現代で、事業承継に失敗しないためには何が必要なのだろうか。
目次
中小企業経営者の高齢化とともに廃業が増加
事業承継に失敗しないためのポイントを確認する前に、中小企業を取り巻く経営環境について簡単に触れたい。
中小企業庁によると、2000年から2020年の20年間で、中小企業の経営者の年齢層は高齢化した。例えば、2000年の中小企業の経営者を年齢層別でみたとき、割合が最も高かったのは50~54歳だった。
この年齢層のピークは5年ごとに高齢化していき、2020年に入ると、60~70代が中小企業経営者のボリュームゾーンとなった。
<中小企業経営者の年齢層の推移>
2020年に廃業した事業者の6割は黒字、事業承継の難しさ浮き彫りに
中小企業経営者が高齢化するとともに、廃業件数は増加傾向だ。
2014年の中小企業の休廃業・解散件数は3万件あまりだったが、2020年には4万9,698件まで増加した。2020年に関しては、実に6割超の事業者が黒字だったにもかかわらず廃業しており、中小企業の経営環境の厳しさを物語っている。
また、日本政策金融公庫総合研究所が実施した2020年の別の調査では、廃業事業者のおよそ3割が後継者難を理由に挙げた。「事業に将来性がない」との回答も24.4%と高く、事業承継の難しさを浮き彫りにしている。
株式譲渡、借入金……後継者難だけではない事業承継の課題
事業承継を望む中小企業経営者が直面している課題は後継者難だけではない。
東京商工会議所が2020年に実施した事業承継に関するアンケートは、後継者(候補を含む)の有無別に、経営者に事業承継の障害や課題を尋ねている。
それによると、後継者がいる企業が挙げた事業承継の課題としては、「後継者への株式の譲渡」(38.4%)、「借入金・債務保証の引継ぎ」(32.0%)、「後継者教育」(27.4%)などが多かった。