本記事は、野上麻理氏の著書『ピークパフォーマンス』(WAVE出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

ビジネスのプロは時間よりエネルギーを大切にする

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(画像=ah/stock.adobe.com)

ビジネスプロは成果を出しつづけなければならない

コーポレートアスリートの目的は「ビジネスパーソンの生産性を上げる」もので、トレーニング自体は今でも存在し、実施されています。

私がこのトレーニングに出合ったのは30代の前半。ラーニングの冒頭には「トレーニングのタイトルに、なぜコーポレートアスリートという言葉がついているのか」という説明があります。

トレーニングの創始者であるジム・レイヤー博士は、超一流のスポーツ選手のメンタルコーチをしていました。選手たちがオリンピックやワールドカップなどのメジャーな試合で、最高のパフォーマンスを出せるようにサポートしていたところ、同じように究極の場、プレッシャーの強い場で最高のパフォーマンスを要求される人々、例えばFBI捜査官や外科医、さらにはビジネスパーソンにも、氏の理論が当てはまることがわかったのです。

それで、「コーポレートアスリート」というタイトルで広めているということでした。

このトレーニングを、まずは普通に受け、その後トレーナーとして教えるだけでなく、実際に仕事をしていく中で理論の正しさを確認し、また、やり方のコツを実生活でつかんできた ―― というのが、私の「仕事でも私生活でも最高のパフォーマンス、成果を上げる」というやり方です。

理論の前に学ぶこととして、ビジネスパーソンは持続的にパフォーマンスを出すことを要求され、その時間軸はスポーツ選手よりもずっと長い、ということがあります。

スポーツ選手は競技人生の終わりが30代、40代と体力の衰えとともにやってきます。しかし、ビジネスパーソンにとって30代、40代、50代は、体力は落ちてきはしますが、仕事上の責任は増していくときでもあります。

また、スポーツ選手であれば練習時間のほうが、パフォーマンスを示す試合に出ている時間よりも長いですが、ビジネスパーソンの場合、トレーニングや研修の時間というのは、OJTを除けば1割にも満たないでしょう。実践時間が長いということです。

そんな中で最高のパフォーマンスを持続していくには努力が必要で、漫然と経験を積んでいってもパフォーマンスは維持されない、ということを最初に説得されます。

うーん、ここまでは確かに。でもどうやって?

時間よりもエネルギーを管理する

ここからは、次の2つの理論がこのトレーニングの中核になります。


(1)パフォーマンスを最大化するためには、時間を管理するのではなく、エネルギーを管理する。

(2)そのエネルギーを一貫して管理して増やす

時間に追われるプロであれば、時間管理術を学びたい、ワークライフバランスを時間管理で最適にしたい、と思うのは普通のことですが、このトレーニングでは、まず「パフォーマンスの最大化」と「時間の管理」は別のことである、ということを叩き込まれます。

「時間」は誰にでも平等にあるもので、どんな人にも24時間しかありません。継続的なパフォーマンスが要求される場合には、睡眠を削っても限度があります。であれば、増えない「時間」をどう使うかということ以上に、成果を上げるために増やせるもの、つまり「エネルギー」を管理して増やすほうが結果につながるというのです。

この考え方は、最初に聞いたときには「え?」と思いますが、普通に考えれば当たり前のこととも言えます。誰でも同じ仕事をするのに、例えば集中力が高いときにかかる時間と、疲れて集中できないときにかかる時間とでは、大きく違うという体験はあると思います。

また、同じ仕事を違う人がやる場合には、その人のスキルの差によって、これまたかかる時間が大きく変わってきます。つまり、増えない時間を増やすことよりも、同じ時間内に、より効率的、効果的に結果を出すようにしていくことが重要であり、そのために必要なのが、「エネルギーの管理」と「基礎的なスキル」というわけです。

人は4つのエネルギーで強くなる

エネルギーに関して言うと、まず、体調不良であれば仕事がはかどらない。例えば徹夜明け、私の場合だとお腹がすいているとき、といった単純な身体面への影響があります。

若い頃の私は、失恋して落ち込んで仕事が手につかない、ということもありました。先輩に叱られて、その内容よりも叱られたこと自体がショックすぎて仕事が手につかない、ということもありました。感情面への影響です。

体調だけでなく、例えば朝1時間で片付くメールの処理が、夕方になるといろいろな邪魔が入って全然片付かないというのは、誰にでも経験があるでしょう。思考への影響ですよね。

さらには、自分が好きな仕事、やりがいを感じる仕事だとはかどる、まわりの人がいつも以上に手伝ってくれてはかどる、といった精神面への影響を感じたことがある人も多いのではないでしょうか。

これらは、まさにビジネスのプロがパフォーマンスを最大限に発揮するための「4種類のエネルギー」となります。

  • 身体のエネルギー
  • 感情のエネルギー
  • 思考のエネルギー(集中力)
  • 精神のエネルギー(自分が人生で大切にしていること)

どれも当たり前のことかと思いますが、大切なのは、これらのエネルギーを自分が管理して増やせるということです。

これはマズローの法則と同じようにピラミッド構造になっていて、まず身体を整え、感情をコントロールし、思考を明確にして、精神と同じ方向に合わせていけば、最大のパワーが得られます。

ピークパフォーマンス
(画像=ピークパフォーマンス)

《身体のエネルギー》がもっとも基礎的なエネルギーでベースになり、《精神のエネルギー》が全体の方向を定め、下の3つのエネルギーを統制することで、最大出力を生み出せるという仕組みになっています。

ピークパフォーマンス
野上麻理
◎1969年大阪府生まれ。大阪外国語大学(現大阪大学)卒業後、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)ジャパン㈱入社、マーケティングに従事。第一子出産後、SK-IIブランドマネジャー、東アジアスキンケアマーケティングディレクターに就任する。
◎第二子出産後、37歳で部下が2,000人を超えるマックスファクタージャパン(P&Gスキンケア・化粧品事業部)のプレジデントに就任。P&Gブランドオペレーション&マーケティングヴァイスプレジデントを経てアストラゼネカ㈱プライマリーケア取締役事業本部長に着任。執行役員マーケティング本部長として国内全製品のマーケティングを統括し、スウェーデン海外赴任。グローバルポートフォリオグループの呼吸器領域・吸入療法製品のグローバルブランドヘッドに。
◎帰国後、アストラゼネカ㈱の執行役員コマーシャルエクセレンス本部長、呼吸器事業本部長。その後、2018年9月より2021年3月末まで武田コンシューマーヘルスケア㈱(現アリナミン製薬㈱)取締役社長を務める。
◎趣味は息子の誕生とともに35歳で始めたマラソンで3時間15分を切り、トライアスロンデビュー。石垣島トライアスロンで年代別2位。

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