地方企業の採用活動への追い風もある
地方企業の採用は都市部に比べて難しいという一面があるが、採用活動にとって追い風となっていることもある。
働き方や就職活動の多様化が進んでいる
IT技術の進歩などによって働き方や就職活動の多様化が進んでいるのは、地方企業にとってもメリットが大きい。
コロナ禍は多大な経済的損失を与えたが、一時的にでもリモートワークが取り入れられ、労働者にとっては働き方の選択肢が増え、多様化が進む要因の一つにもなった。
就職や転職先の情報をウェブ上で気軽に集めることができ、採用試験もオンラインで行われるなど、就職活動の多様化も進んでいる。そのような変化により、地方企業にとっても都市部の人材を採用するチャンスが生まれている。
U・Iターンを希望している層が一定数いる
進学や就職に伴って地方から離れた人のUターンはもちろん、地方生活に魅力を感じている人によるIターンなど、地方での就職や転職を希望する層も一定数いる。
総務省の『地域の人の流れに関するデータ』によると、地方に縁がある20代~50代のうち約半数が地方への移住に興味を持っているという結果がある。また、出身県へのUターンの理由は、「1位:就職(30.4%)」「2位:退職(19.0%)」「3位:転職(16.0%)」であり、仕事に関連した移動が少なくないことが分かる。
コロナ禍による首都圏離れなども進む中で、地方企業にとっては追い風となるだろう。
地方就活助成などのサポートが増えている
UターンやIターン移住者に対する地方就活助成など、国や地方自治体のサポートが増えているのも地方採用にとっては追い風だ。
先の総務省の調査結果によると、UターンやIターンによる地方移住において仕事面で最も懸念されているのが「求人の少なさ」である。そのため、地方自治体では独自の移住者サポートと同時に、就職や起業のためにUターンIターンをする人に対して補助金を支払うといった取り組みを行っている。
地方自治体との連携によって、移住予定者に自社の認知度を高めることも不可能ではないだろう。
地方企業が採用活動の前にはっきりさせること4つ
地方企業の採用はその目的を事前に定め、採用計画を立てることが欠かせない。そのためには、まずはっきりさせておくべき4つのポイントがある。
(1)自社は存続と成長のどちらを目指すのか?
大前提として、自社はこれから緩やかな存続と事業成長のどちらを目指すのかを明確にする必要がある。
長期事業計画に近いものだが、これからの事業方針によって必要な社員数や組織構成などは変わるため、採用活動の方向性の決定には欠かせないものだ。地方の中小企業では事業計画を立てていない企業も少なくないが、経営者は自社をどうしたいのかを明確にして、社員に示す必要がある。
(2)自社に必要な人物像はどのようなものか?
採用活動を進める前に、自社に必要な人物像を明確にすることも欠かせない。
既存の事業や今後行う予定の事業に対して、どのような経験やスキルを持つ人材が必要なのかを考えなければならない。さらに、既存社員との年齢や性格面でのバランスなど、新規採用することで自社にとってメリットがある人物像を考えよう。
(3)新卒採用と中途採用の割合をどうするか?
新しく雇用する人材を、新卒人材と中途人材のどちらで採用するかをはっきりさせる必要がある。
新卒採用と中途採用のどちらに注力するかで、採用活動の方針や方法も大きく変わるため、必要な人物像に照らし合わせ、自社のリソースや採用活動に関するノウハウの有無を考慮した上で取り決めよう。
(4)採用活動の対象地域をどうするか?
採用活動において募集する人材の対象地域を地元や周辺地域に絞るか、全国に拡大するかも決めなければならない。
地元や周辺地域の人材ならば、ハローワークなどを通じて直接応募してくる求職者がいるだろう。しかし、自社の人物像に合致した人材が応募してくるとは限らない。そのため、採用活動の難易度は上がるものの、募集地域を全国に拡げて幅広い人材から応募を受けるという手段もあるだろう。
いずれにせよ、対象地域によって採用活動の内容も異なるため、優先順位を決めておく必要がある。