地方企業が抱える主な問題点として「人口減少による地域経済の縮小」「少子高齢化による労働力不足や後継者不足」「都市圏との格差」の3つが挙げられる。このような状況で地方企業が経営を現状維持で問題ないと考えていては、将来経営が立ち行かなくなってしまうだろう。場合によっては、廃業につながる危険性もあるため、やはり地方企業にも事業拡大の取り組みは必要だ。
新型コロナウイルス感染症の影響からテレワークも定着し、ワーケーションなどといった働き方も現れている。東京から地方へ拠点を移す企業が増えていることからも分かるように、現代は東京のような大都市部にいなければ事業が行えないわけではない。実際に地方企業でも地方の優位性を活かして発展を遂げている企業もある。
本記事では、地方企業が抱える課題を取り上げ、その解決方法について解説していく。
目次
地方企業が抱える経営課題
人口減少や少子高齢化の問題は、地方に限ったことではない。ただし、地域経済の縮小や労働力不足、後継者不足の問題などは、都市圏にある企業よりも地方で事業を行う企業のほうが影響を受けやすい。ここでは、地方企業が抱える経営課題には、どのようなものがあるのか紹介する。
人口減少による地域経済の縮小
内閣府の「令和4年版高齢社会白書」によると2053年には日本の総人口が1億人を割り込み、9,924万人になると推計されている。さらにその12年後の2065年には、8,808万人にまで減少すると予想されている。人口減少の流れを止めることはできず、人口構造だけを考えると地域経済の縮小は避けられない。
人口が減少すれば、国内では日本企業の競争はますます激化していくだろう。高度経済成長期のように大量・低価格の商品の販売、画一的なサービスの提供では、企業は生き残ることができないのではないだろうか。大手企業のように、人口が増加して経済成長が見込まれる国や地域の市場に参入する方法もあるが、中小企業では資金力に限界がある。
国内市場で企業が生き残るためには、顧客ニーズに合ったオーダーメイド型のサービスや高品質・高性能な商品を求める顧客の要望に応える事業戦略が必要だ。
少子高齢化による労働力と後継者の不足
現代の日本は65歳以上の高齢者が増えている一方で新生児の数が減少している。内閣府の「令和4年版高齢社会白書」によると高齢者が総人口に占める割合は2036年に33.3%と推計されており、国民の3人に1人が65歳以上となる計算だ。65歳以上の人口は、2042年にピークを迎え、3,935万人になると予測している。
若い世代が高齢者を支える仕組みになっている日本において労働力人口の減少は、深刻だ。日本政府は、一億総活躍社会の実現に向けて働き方改革を推進している。しかしそもそも65歳以上の人口も2042年にピークを迎えたあとに減少に転じていくため、将来の労働力不足は避けて通ることはできない。
少子高齢化により日本の総人口が減少するなかで65歳以上の人口増加やその後の高齢社会の進展、労働力不足の問題は、企業にとっては大きなリスクとなる。近年、後継者不足もあって中小企業においてもM&Aが盛んに行われている。しかし地方の中小企業経営者は、わが子のように愛着をもって自身の企業を経営しており、M&Aで会社を売却することにためらう者が多い。
また子どもが親の会社を引き継ぐことを望まないケースも多く見られ、後継者不足が原因で廃業する企業が増加している。地方でも永年営業してきた優良企業は多く存在するが、後継者不足で優良企業が廃業してしまうことは、日本経済にとって大きな痛手といえる。
都市圏との格差
そもそも地方と都市圏では、商品やサービスの需要量に大きな差がある。東京や大阪などの大都市では、ビジネスとしてターゲットとなる人口が圧倒的に多く、どのような商品・サービスを提供してもある程度商売につながる優位性があるのだ。このことは、人通りの多い通りで食堂をオープンすれば、ある程度の人数が食事に来店すると考えれば分かりやすいだろう。
地方は、競合企業が少ないといっても顧客がいなければビジネスが成り立たないことは明白だ。地方では、人口が少なく特にスタートアップ企業においては、固定客やなじみ客がいないため、事業参入が難しい。そのためスタートアップ企業と地元に根付いた業歴のある企業とでは、おのずと差が出てしまう。
地方で事業を行うためには、ターゲットとなる消費者を地方の地域に限定せず、地方にいても事業が成り立つビジネスモデルを構築しなければならない。