この記事は2023年2月17日にSBI証券で公開された「東エレク、レーザーテックetc・・・半導体の今後と銘柄間の強弱は?」を一部編集し、転載したものです。

東エレク、レーザーテックetc・・・半導体の今後と銘柄間の強弱は?
(画像=SBI証券)

目次

  1. 決算発表が佳境!株価上昇期待の主力好業績10銘柄は?
  2. 掲載銘柄の投資ポイント
    1. 信越化学工業(4063)~1~3月期の需要減を織り込むも通期予想は上方修正。株式分割も発表
    2. 東京エレクトロン(8035)~業績予想上方修正と株式分割を発表
    3. デンソー(6902)~自動車の挽回生産遅れで下方修正も悪材料出尽くし?TSMC合弁へも出資
    4. HOYA(7741)~マスクブランクで高シェアも、足元は顧客に在庫調整の兆し
    5. ルネサスエレクトロニクス(6723)~車載向けに強く、落ち込みは軽微な可能性
    6. レーザーテック(6920)~短期的には受注の伸び悩みに注意も、過度の懸念は不要か?
    7. アドバンテスト(6857)~半導体をテストするための製品で最終工程で使用。今期・来期の見通しは弱気?
    8. ディスコ(6146)~切断装置の大手。1-3月期は前年同期比減収・減益予想
    9. ローム(6963)~カスタムLSI(大規模集積回路)や半導体素子が主力製品。昨今では、パワー半導体投資が活発
    10. 富士電機(6504)~パワー半導体事業の拡大を目指す

決算発表が佳境!株価上昇期待の主力好業績10銘柄は?

東京株式市場では、決算発表シーズンが一巡しました。企業業績の方向感を示唆している日経平均株価の予想EPS(1株利益)は、1/20(金)の2,144円から、2/16(木)には2,101円まで低下し、業績予想の下方修正が多かったことを示しています。ただ逆に、日経平均株価は同期間に26,553円から27,696円まで上昇しています。

なぜ、企業業績見通しが悪化したのに、株価は上昇したのでしょうか。その大きな理由のひとつとしては、投資家の多くが景気・企業業績は、さほど遠くない将来に底を打ち、年後半には回復すると予想しているためとみられます。その象徴が「産業のコメ」といわれる半導体の市況で、2023年後半もしくは2024年以降、半導体市況は回復すると予想する投資家が増えているように感じられます。

本当に半導体市況は回復するのでしょうか。そこで、本日の「日本株投資戦略」では、2022年10~12月期の決算が出そろったこのタイミングで改めて半導体関連銘柄について、考えてみることにしました。

図表1は、米国市場に上場している主要半導体関連銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体指数(SOX指数)の月足チャートです。同指数は2018/12を底に、2021/12まで3.4倍となる「大相場」を形成しました。その理由は以下の通りです。

(1)5G(第5世代移動体通信サービス)、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)等の普及により、半導体に求められる能力や需要が拡大。
(2)自動車電装化の進展にとどまらず、半導体をより多く搭載するEV(電気自動車)の市場拡大で新たな半導体需要が拡大。
(3)2020年以降、新型コロナウイルスの世界的な流行で巣ごもり消費が拡大し、パソコンやゲーム機の需要が拡大。

2021年は世界半導体出荷額が前年比で毎月2桁を超える伸びとなり、半導体市場は循環的な「シリコン・サイクル」を繰り返すことなく「スーパーサイクル」という持続的、成長局面に突入したと考えられるようになりました。ただ、2022年になると、出荷額の伸びが鈍り、フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)も下落に転じました。「山高ければ谷深し」の格言通り、同指数(月足)は2021/12から2022/9まで4割を超える下げとなりました。足元では2022/7~12の世界半導体出荷額は6ヵ月連続で「前年割れ」となっています。

今後はどうなるのでしょうか。半導体市場拡大のもたらした上記3要因のうち、(1)と(2)には長期的な要因を含んでおり、半導体需要は中長期的に拡大傾向を続けるとみられます。しかし、(3)の部分は、新型コロナウイルスの流行が、半導体需要に「バブル」をもたらした可能性が大きく、現在は需要が縮小傾向です。米中半導体摩擦が当面の需要に与える影響も無視できないでしょう。

なお、(3)に関する需要の縮小は、NANDやDRAM等「メモリ」といわれる分野で強く出ており、他は強さを維持している分野もあるようです。このため、一口に半導体関連銘柄といっても、需要先等により、業績見通しの強弱が分かれやすくなっているので、要注意です。SBI証券企業調査部では、2023年もすべての四半期で、半導体出荷額は減少(前年同月比)と予想しています。しかしマイナス幅は1~3月期が最大となり、以降は縮小する予想です。

図表2は、我が国の主要半導体関連20銘柄をご紹介したものです。銘柄抽出の条件は以下の通りです。

(1)SBI証券の銘柄検索ウィンドウに「半導体」と入力し、出力される銘柄
(2)信用取引規制等の対象になっていない。

上記2つの条件を満たした銘柄を、時価総額の大きい順に20銘柄並べました。 (2023年2月16時点)

次項では、その一部について、詳細等をご説明します。

東エレク、レーザーテックetc・・・半導体の今後と銘柄間の強弱は?
(画像=SBI証券)
東エレク、レーザーテックetc・・・半導体の今後と銘柄間の強弱は? 東エレク、レーザーテックetc・・・半導体の今後と銘柄間の強弱は? 東エレク、レーザーテックetc・・・半導体の今後と銘柄間の強弱は?
(画像=SBI証券)

掲載銘柄の投資ポイント

以下、掲載銘柄の一部をご紹介します。

信越化学工業(4063)~1~3月期の需要減を織り込むも通期予想は上方修正。株式分割も発表

半導体の基盤となるシリコンウェハの世界シェア首位の企業です。さらに塩ビ樹脂(電線、建材、日用品等幅広い製品の材料)でも世界シェアトップです。日本の半導体関連銘柄の中で、時価総額は東京エレクトロンと首位を争います。顧客である半導体メーカーとは長期供給契約を締結していることが多く、業績は安定しやすいのが強みです。

1/26(木)、2023/3期・第3四半期(10~12月期)の決算を発表。10~12月期だけで、売上高7,539億円(前年同期比39%増)、営業利益2,719億円(同50%増)と大幅な増収・増益を達成。これを受け、通期の予想営業利益は9,400億円→9,950億円(前期比39.0%増)と上方修正されました。下期配当は上期配当(225円)に対し50円増配の275円、通期1株配当500円を予想。3月末を基準に1→5株の株式分割を実施することも発表しました。

半導体シリコンウェハは、7~9月期から10~12月期にかけて150mm、300mmを中心にマイナス成長でした。2023年1~3月期も総じて1割程度の調整(会社側)になりそうです。第3四半期累計と修正後会社予想数値から逆算される1~3月期は5%程度の営業減益が織り込まれているようです。顧客の多くは、7月以降半導体デバイスの需要が回復と予想しているうえ、信越化学の在庫は減っているため、生産自体は1~3月以降も高水準で続ける方針のようです。

東京エレクトロン(8035)~業績予想上方修正と株式分割を発表

米アプライド・マテリアルズ等と比較される半導体製造装置の世界的な大手企業です。フォトレジスト(感光剤)の塗布や現像を行うコータ・デベロッパは世界シェア89%(2021年・会社資料)と圧倒的です。半導体関連銘柄の中核的存在として、半導体業界、特にその設備投資動向の影響を強く受けます。日経平均株価でのウェイトが高いため、日経平均株価の変動に強く影響を受ける傾向があります。

2023/3期の営業利益は、第1四半期1,175億円(前年同期比17.1%減)、第2四半期2,326億円(同75.1%増)の後、第3四半期1,147億円(同26.5%減)と不安定な状況で、半導体メーカーの設備投資先送り・抑制の影響が出ています。ただ、一部顧客への納入時期精査や一部投資の前倒し等により、通期会社予想営業利益は5,460億円から5,800億円(前期比3.2%減)に上方修正されました。

SEMI(国際半導体製造装置材料協会)の発表では、2022~25年に、世界で67カ所の300ミリウェハ新工場建設が見込まれ、半導体製造装置産業の中長期的見通しは明るそうです。同社は、半導体製造前工程市場は2023年後半から回復し、2024年以降も力強く成長するとの予想です。データセンターの刷新、メタバース、EVの普及や、スマートフォン需要の回復がけん引しそうです。第3四半期決算発表とともに、3月末基準で1→3の株式分割を実施すると発表しています。

デンソー(6902)~自動車の挽回生産遅れで下方修正も悪材料出尽くし?TSMC合弁へも出資

トヨタ自動車が24%、豊田自動織機が9.2%の株式を保有(2022/9末・自己株式を除く発行済み株式に対する比率)するトヨタ系の自動車部品国内最大手で、売上高(2022年4~12月)の約半分がトヨタグループ向けです。世界で自動車のEV化や電動化への流れが加速し、当社の電動化システムや、ADAS(先進運転支援システム)への注目度も高まりつつあります。2020年、デンソーが51%、トヨタ自動車が49%を出資し、次世代車載半導体の研究を行う合弁会社「ミライズテクノロジーズ」が始動しています。EVやHVなどの燃費性能を左右する「パワー半導体」などが得意分野です。世界最大の半導体受託製造大手企業である台湾TSMC社が熊本に建設する合弁工場に対し、ソニーと当社が資本参加(持分比率10%超)しています。

2023/3期の営業利益は、第1四半期(4~6月期)636億円(前年同期比40.6%減)の後、第2四半期(7~9月期)917億円(同76.0%増)まで挽回し、第3四半期(10~12月期・2/3発表)は1,125億円(同16.1%増)となりました。会社側は第3四半期決算発表とともに、通期の予想営業利益を4,800億円(10/28修正値)から4,200億円(前期比23.1%増)へ下方修正しました。10月に想定していたよりも、自動車の減産が響きました。

株価は第3四半期決算および業績予想下方修正が発表(取引時価中)された2/3(金)に、6,809円(前日比174円安)の安値を付けましたが、同日終値は7,145円(同162円高)と切り返し、2/16(木)には一時7,481円まで上昇しました。自動車の挽回生産への期待が高まり、業績予想下方修正が悪材料出尽くしととらえられた可能性もありそうです。

HOYA(7741)~マスクブランクで高シェアも、足元は顧客に在庫調整の兆し

当社は1941年に光学レンズメーカーとして創業されました。売上構成比(2023/3期・第3四半期累計)はヘルスケア(メガネレンズ・コンタクトレンズ他)とメディカル(内視鏡他)からなる「ライフケア」が65%、エレクトロニクス(半導体用マスクブランクス他)と映像からなる「情報・通信」が4%となっています。売上高税前利益率は30%と高めですが、特に「情報・通信」は49%と高くなっています。2023/3期・第3四半期累計は「ライフケア」が好調に推移し、売上高は5,378億円(前年同期比9.3%増)、経常利益1,618億円(同3.1%増)と増収・増益でした。

半導体製造工程で不可欠なフォトマスクは微細で複雑な回路パターンを半導体ウェハに転写する原盤のようなものです。当社はフォトマスクのベースとなるマスクブランクで高いシェアを有しています。特にオランダASML社が市場を独占するEUV(極端紫外線)向けマスクブランクスでは世界シェアの4分の3超(2022/3期)を有しているとみられ、中長期的には今後も高い成長が見込まれます。

なお、半導体向けフォトブランクス事業は短期的に、顧客の在庫調整の影響が強まりつつあります。2023年1~3月期、4~6月期前年同期比15%程度のマイナスが続き、その後は緩やかに回復するというのが会社側の見立て(会社資料)のようです。会社予想業績は未公表で、市場では今期5%、来期13%の経常利益増加を見込んでいます。

ルネサスエレクトロニクス(6723)~車載向けに強く、落ち込みは軽微な可能性

日本では数少なくなった半導体メーカーの1社で、マイコンの世界的大手企業となっています。日本電気(6701)、日立製作所(6501)、三菱電機(6503)の半導体部門が統合され、設立された経緯があります。自動車分野、産業分野、インフラ分野、IoT分野の半導体を提供しています。売上高(2022/12期)の43%が自動車向けで、56%が産業・インフラ・IoT向け、残りがその他になっています。

自動車分野を得意としています。車載用マイコンは、自動車の「走る」「曲がる」「止まる」といった基本的動作をつかさどる重要な半導体で、今後普及加速が見込まれるEV(電気自動車)や、自動車の電動化には不可欠な存在と考えられています。エンジンや車体などの制御向け、カーナビゲーションなどの車載情報機器向けに、SoC(system-on-a-chip)、アナログ半導体、パワー半導体等を中心に提供しています。近年は世界的な競争力を高めるため、積極的にM&Aを展開し、アナログ半導体や組み込みAI等の技術を取り入れています。

2/9(木)に発表された2022/12期の営業利益は4,241億円(前期比144.0%増)、調整済み(※)営業利益5,594億円(同88.6%増)と好調な内容でした。自動車向け、産業・インフラ・IoT向けともに大幅な営業増益となりました。2023/12期・第1四半期(調整済み)の会社予想売上高は3,550億円±75億円、売上高営業利益率は32.5%です。予想売上高中央値に対し、予想営業利益率を乗じた予想営業利益は1,153億円(前年同期比14.9%減)と、慎重な見通しです。事実、世界半導体出荷額は7~12月に前年同月比で減少しています。ただ、メモリやMPUが足を引っ張っている形で、12月単月の出荷高(前年同月比)はパワートランジスタ、MCUはいずれも10%超の増加、アナログも増価を維持しています。SBI証券企業調査部(2/6付レポート)では、こうしたトレンドの影響から、ルネサスエレクトロニクス、富士電機(6504)、ローム(6963)の業績は相対的に底堅く推移すると想定しています。 なお、会社側は決算発表ともに、自己株式4,045万超の株を1株1,236円(総額およそ500億円)で公開買付けする(産業革新投資機構が4,000万株応募)と発表しています。

※調整済み営業利益~会社側が「Non-GAAP」と表現している数字で、IFASに基づく業績数値から、非経常的な項目棟を控除・調整したものです。

レーザーテック(6920)~短期的には受注の伸び悩みに注意も、過度の懸念は不要か?

半導体製造工程において、回路をシリコンウェハに焼き付けるときの原板をフォトマスクといいます。また、フォトマスクに加工される前の、ガラス基板に遮光膜を形成したものをマスクブランクスといいます。当社はフォトマスク、マスクブランクスの検査装置を手掛ける会社です。おもな納入先は、インテル、台湾TSMC、韓国サムスン電子など世界の大手半導体メーカーです。

半導体のコスト競争力を左右するのが、回路の線幅を極力狭くする微細加工であると考えられますが、現在、最先端の微細加工を可能にするEUV(極端紫外線)を使った露光装置(ステッパー)の分野では、オランダのASML社が独占的な存在となっています。当社はEUV露光装置に対応した検査装置を独占的に供給している模様です。このため、当社の業績はASML社の成長とともに拡大傾向です。

1/31(火)発表の2023/6期第2四半期決算(累計)は、売上高551億円(前期比49.2%増)、営業利益181億円(同41.6%増)、受注高943億円(同47.2%減)、受注残高4,084億円(同47.1%増)となりました。会社側では2023/6期は売上高1,400億円(前期比54.9%増)、営業利益420億円(同29.3%増)と過去最高更新を予想し、前回からの修正はありません。市場では営業利益について今期(2023/6期)は39.7%増、来期(2024/6期)は118.6%増と予想しており、1,000億円が視野に入ってくるとみられています。

今回の決算発表で市場が衝撃を受けたのは、受注の減少です。最先端のEUVに関連した投資でも受注の先送りがあったようです。株価は決算発表後、一時急落しました。ただ、依然として豊富な受注残を抱えていることに加え、ASML社の業績が好調に推移していることもあり、過度の懸念は不要とみられます。ただ、半導体業界の調整は2023年前半は続くとみられるため、受注の伸び悩みがもうすこし続く可能性があります。

アドバンテスト(6857)~半導体をテストするための製品で最終工程で使用。今期・来期の見通しは弱気?

半導体検査装置の大手です。半導体製造の最終工程で、半導体が設計仕様通りに作動するのか否かを“テストするための製品”を顧客に提供しています。よって、後工程の中でも最終工程で使用されます。半導体のパッケージテストに不可欠なテスト・システム、テスト・ハンドラ、デバイス・インタフェースの全てをワンストップで提供可能です。売上高に対する事業部門ごとの割合は、当社の代表格である半導体・部品テストシステムが69%、メカトロニクスが10%、サポート・サービスなどを含むサービス他が21%です。半導体が先端的になるに連れ、テスト(検査)装置の需要が増す傾向にあります。

1/31(火)に発表された2023/3期第3四半期決算は、売上高が4,127億円(前年同期比38%増)で進捗率75%、純利益は998億円(同64%増)で進捗率76%と通期予想をやや上回る順調なペースで着地しました。収益性の高い製品の販売比率の上昇や、円安による増収増益が寄与し、第3四半期累計としては過去最高額を達成した形です。好調な業績推移を背景に、期末配当予想を70円とし、年間配当金額は前期(22.3期)の120円から135円(予想)に増額となりました。通期業績見通しに関しては、世界経済の先行きに対する不透明感などを要因に変更はありませんでした。今期(23.3期)は高水準の受注残を背景に、過去最高業績の達成を見込んでいます。

足元の半導市場が供給過多(メモリー・民生品向けetc)と供給不足(パワー・EV向けetc)の分野が混在する中、今後のテスタ需要もまだら模様と会社側は予想しています。来期(23.3期)の半導体テスタ市場は、事業環境の不確実性から需要低迷の可能性を会社側がリスクとして挙げている点にはご留意ください。昨年7月の第2期中期経営計画改訂で示した2023年度売上高見通しのレンジは前年度比-15%から+10%でした。しかし、同決算説明会の質疑応答では市況が悪化傾向にあるので+10%の増収率は難しくなっているとの言及がありました。目標レンジに関しては、同社の想定以上に世界経済が落ち込んだ場合や回復が遅れた場合、見直しもあり得ると述べています。

ディスコ(6146)~切断装置の大手。1-3月期は前年同期比減収・減益予想

高度な「切る・削る・磨く」の加工に特化した企業です。1937年の創業当初は「第一製砥所」という砥石メーカーでした。 モノを小さく・薄く・キレイに加工する「装置」と、モノを加工するための消耗品である「加工ツール(おもに砥石)」を開発・製造・販売しています。 電子製品の軽量化や縮小化に伴い、半導体等の部品に対しても同様の進化が求められます。当社は、その半導体を“小さく”、“薄く”するための製品で有名です。半導体製造工程において、当社製品には「ウェハ」と呼ばれる円盤状の素材を賽の目に切り分けるための切断装置など(ダイシングソーやレーザソー)を多く取り扱っています。特に、ダイシングソーの当社シェアは7~8割と会社側は見ています。

1/24(火)に発表された2023/3期第3四半期決算では、前四半期決算と同様にパワー半導体向けの需要が堅調であったことから第3四半期累計として過去最高売上・利益を達成。ただ、2023/1-3月期だけみれば前年同期比で減収減益の予想となるうえ、会社の通期業績見通しは市場予想を下回っています。決算通過後、軟調な業績見通しなどが嫌気され一旦売りが先行する場面が続いていました。しかし、2月に入ると米SOX指数の上昇に連れ高となり、株価も同決算発表前の水準まで回復しています。相当の値がさ株であり、東証が明示する「望ましい投資単位の水準(5万円以上50万円未満)」の基準外であることから、将来、株式分割の実施にも期待が持てます。

同社代表が1月末に示した見通しでは、2023年年内に半導体市場で供給過剰の需給バランスが回復し、2024年からは再び成長軌道に戻ると予想しています。

ローム(6963)~カスタムLSI(大規模集積回路)や半導体素子が主力製品。昨今では、パワー半導体投資が活発

特定の部品ニーズに対応したカスタムLSI(大規模集積回路)や半導体素子を主力製品とする企業です。LSIとは、半導体の表面にある装置で、製品が複雑な機能を行うために使われる電子回路部品です。 当社は電子部品メーカーとして1958年に創業され、1969年に半導体分野に進出しました。2年後の1971年には日系企業初のシリコンバレー進出を果たしたという歴史を持っています。足元でも需要が堅調なSiC*を用いたパワーデバイスに強みを持ち、積極的に投資を行っています。

2/2(木)に発表された2023/3期第3四半期決算では、民生機器関連市場は需要減衰で前期から減収となりました。一方、自動車関連市場と産業機器関連市場を中心に業績を拡大し、累計では売上高3,901億円(前年同期比15%増)、営業利益754億円(同34%増)と通期見通しに対し順調に推移しました。ただ、第3四半期だけみれば為替影響分を除くと減益で、通期の売上高見通しの進捗率は標準(単純計算:4分の3で75%)を下回る形です。為替感応度は円安が業績にはプラスに働きます。1ドルに対し1円動くと、年間で売上高は26億円、営業利益は8億円変動が見込まれる計算です。海外売上高比率は67%です(22.3期)。

今期(23.3期)の業績見通しに関しては、据え置きでした。エレクトロニクス市場で予断を許さない状況が続くと想定し、今後の業績予想に変更の必要があると判断される際には、改めて業績予想の修正を行うとのことです。来期の設備投資に関し、需要が堅調なパワー・アナログ向けを中心に1,000~1,200億円規模の投資を検討中です。

*SiCパワー半導体…SiC(シリコン・カーバイド)素材を使った、次世代のパワー半導体。EVの部品などに使われており、SiCパワー半導体を使うことで、搭載機器の省エネと小型・軽量化を実現することが可能。

富士電機(6504)~パワー半導体事業の拡大を目指す

産業用・自動車用のパワー半導体に強みを有する総合電機メーカーです。1953年に半導体部門に進出しています。 売上高に対しての半導体が占める割合は19%であり、他にはパワエレエネルギーや食品流通等といった幅広い分野で、事業を展開しています(22.3期時点)。2023年度を最終年度とする中期計画では、パワー半導体事業の拡大を成長戦略の推進のための中核として掲げています。収益が下期に偏重傾向である点にはご留意ください。

1/26(木)に発表された2023/3期第3四半期決算では、売上高6,908億円(前年同期比11%増)、営業利益424億円(同30%増)で第3四半期ベースで過去最高を達成。半導体のみならずパワエレエネルギ―など他の部門でも売上高が増加となりました。半導体部門では、前回の四半期決算と同じく、EV向けや産業分野向けのパワー半導体の需要拡大と円安が寄与しました。通期の業績見通しに関しては、据え置きとしています。

同決算の質疑応答では、来期(24.3期)の見通しに関して現在検討中であるものの今期(23.3期)を上回る水準を目指すであろうと言及されています。また、1-3月期の産業向け半導体の受注高は、10-12月期とほぼ横ばいでの推移を予想。EV向けSiC*は2024年度からの量産に向け、現在津軽工場で準備中であり、2024年度以降の受注の大幅拡大を見込んでいます。

*SiCパワー半導体…SiC(シリコン・カーバイド)素材を使った、次世代のパワー半導体。現在はSi素材を使ったパワー半導体が主流ですが、SiCパワー半導体を使うことで、搭載機器の省エネと小型・軽量化を実現します(同社HPより)。高い成長性が見込める分野であるため、前述でご紹介したロームも世界シェア獲得のため大型投資を実行中です。

▽当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。

鈴木 英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長
・出身:東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味:ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技:どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物:サイゼリヤのごはん
・好きな場所:秋葉原(末広町)
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的な寄稿も多数