本記事は、小林義崇氏の著書『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)の中から一部を抜粋・編集しています。

シニア,夫婦
(画像=Deen Jacobs/peopleimages.com/stock.adobe.com)

戦略的に収入を得ながら年金をもらう

より多くの資産を築くには、できるだけ長く働くことが有効です。ただし60歳以降も仕事を続けるのであれば、「在職老齢年金」のルールを押さえておく必要があります。

在職老齢年金は、60歳以降に在職しながら受けとる厚生年金を意味するのですが、「収入が一定以上になると年金の受給額が減額される」というしくみがあります。

つまり、働き過ぎると年金が減って損をする可能性があるのです。

在職老齢年金の対象となるのは、60歳以降も厚生年金に加入する人です。たとえば会社経営者や会社員として、60歳以降も働き続ける人は注意する必要があります。

ここで意識しておきたいのが、受けとる厚生年金(加給年金額を除く)と、総報酬月額相当額の合計を47万円以内に抑えることです。

難しいいい回しでわかりにくいかもしれませんが、とりあえずは「1か月あたりの年金と賃金の収入が47万円を超えないようにする」と考えてください。

この在職老齢年金のルールとともに押さえておきたいのが、年金の受給開始時期は繰り下げ・繰り上げが可能ということです。

受給開始時期を繰り下げる、つまり遅くずらすことによって、1年あたりの年金の受取額を増やすことができます。

逆に早める(繰り上げ)と、年金が減ることになります。

繰り下げによって増やせる年金は、繰り下げた月数に0.7%をかけた値です。

現在の法律では最長で10年間(75歳まで)繰り下げられるので、そこまで伸ばした場合、年金の受取額を84%増やすことができます。

元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者
(画像=元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者)

このようなルールから、「年金は繰り下げたほうが得」と思うかもしれませんが、そうとはいい切れません。

人の寿命には限りがありますから、年金の受給開始時期を遅らせると、年金をもらえる期間が短くなります。つまり、いつまで生きるかを予想しないと、最適な受給開始時期を決めることはできないのです。

そこで1つの目安となるのが、平均余命の統計です。厚生労働省の「令和元年簡易生命表の概況」によると、65歳時の平均余命は男性が19.83年、女性が24.63年となっています。

ここから、65歳の男性は85歳0か月まで生き、女性は90歳0か月まで生きると仮定します。この仮定に基づいてシミュレーションをしたところ、下記の時期に年金をもらいはじめると、年金総額が最大になるということがわかりました。

◆平均余命まで生きるとして、年金総額が最大になる受給開始時期
男性(85歳0か月まで生きると仮定):69歳1か月まで繰り下げ
女性(90歳0か月まで生きると仮定):71歳7か月まで繰り下げ
元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者
(画像=元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者)

ここまでにお伝えした年金のルールを踏まえると、老後の資産形成を有利に進めるには次のような戦略が有効と考えられます。

戦略的に働きながらお金の余裕を得る方法
  • 在職老齢年金の減額に注意しながら60歳以降も働き続ける
  • 年金はすぐに受けとらず、繰り下げを活用して受給額を増やす

働きながら年金を得ることが資産形成につながるという意味では、富裕層の資質として心身が健康であることも重要といえます。

私は、公務員時代はほとんど健康に気をつかっていなかったのですが、独立して自営業者となってからは、食事や運動を意識するようになりました。

収入の源泉が自分自身だということを意識するようになると、否が応でも健康意識が高まるものです。納め続けている年金保険料を無駄にしないためにも、私は健康を心がけることにしたのです。

元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者
小林義崇
1981年福岡県生まれ。西南学院大学商学部卒業。2004年東京国税局の国税専門官として採用され、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事。2年連続で東京国税局長より功績者表彰を受ける。2017年7月東京国税局を退局し、フリーライターに転身。マネージャンルを中心に書籍や雑誌、ウェブメディアにて執筆。朝日新聞社運営のサイト『相続会議』をはじめ、連載記事多数。2021年9月に一般社団法人かぶきライフサポートの理事に就任し、相続に関する問題の解決をサポートする活動を行っている。

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