本記事は、小林義崇氏の著書『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)の中から一部を抜粋・編集しています。
富裕層は年金もしっかりもらう
お金持ちでも年金は頼りになる
富裕層の資産をより強固にしているのが、意外にも「公的年金」です。
公的年金は老後の生活の強い支えですが、これは富裕層においても例外ではありません。
仕事や投資から得る収入に加えて年金ももらえれば、質素倹約に努める富裕層なら確実にお金が残ります。
そのため、普通は老後になると資産は目減りしていくものですが、富裕層はむしろお金が増えていくというわけです。
現状のルールでは、富裕層でもきちんと年金はもらえます。受けとれる公的年金は、現役時代の働き方や収入額によって変わりますが、1か月あたりの受取額は会社員などの厚生年金加入者で平均15万円ほど、個人事業主などの場合は約6万円が目安です。
富裕層の場合、現役時代に高い収入を得ていた人が多く、その分、厚生年金の受給額が高くなります。
現状のルールでは月給65万円、賞与150万円で厚生年金の最高額をもらえるのですが、会社経営者などの多くがこの水準に達しているでしょう。
この公的年金は、税金の面で優遇されています。受けとった公的年金は「公的年金等控除」を差し引いたうえで課税されるので、税負担が抑えられているのです。
たとえば65歳以上の人が年間200万円の公的年金を受けとった場合でも、課税対象となるのは90万円にとどまります。
しかも、年金収入が年間400万円以下の場合、「確定申告不要制度」を使うことができ、所得税の負担をさらに抑えることが可能です。
さらに、公的年金の受給資格をもつ人が亡くなった場合などは、「遺族年金」が支払われ、家族の生活の支えになってくれます。これについては税金が一切かかりません。
遺族年金は被相続人の死亡後に支給されるので、相続税の対象になると勘違いする人がいますが、そうした心配は不要です。
ときどき、「年金をもらえないかもしれないから保険料を払いたくない」という人がいますが、取材などを通じて年金制度のしくみを学んだ限りにおいても、現在の年金制度が崩壊することは、まず考えられません。
年金支給開始年齢が65歳だったものが70歳に後ろ倒しになったり、年金が減額したりする可能性は大いにあるものの、やはり年金は心強い老後の生活の支えになってくれるでしょう。
前述のとおり、大きな資産を築いたとしても、収入が一切入ってこず、今ある資産を切り崩していくしかない状況は不安なものです。
たしかに年金保険料を納めるのは負担感が強いのですが、老後も精神的に安心して生活できるよう、年金保険料はきちんと納めておくべきです。