富士フイルム <4901> が30日発表した連結税引き前利益は前年同期比21.3%増の758億円となった。会社側が発表した上期実績と据え置いた通期計画に基づいて、当社が試算した10-3月期(下期)の連結税引き前利益は前年同期比11.0%減の841億円に減る見通しとなった。


利益上昇の大きな要因

今回の決算内容の利益に大きく貢献している要因がある。それは”デジカメ事業の高級路線シフト”である。

低価格コンパクトカメラの販売を縮小する一方、ミラーレス一眼や高級コンパクトの販売を伸ばすことで採算は改善された。こうした高級路線シフトを背景に、デジカメ事業の営業損益は前年の赤字から黒字に転じた。さらに、撮影したその場で現像された写真が出てくるインスタントカメラ『チェキ』が北米や欧州、台湾や韓国の若年層を中心に好調だった。このカメラの4~9月期の販売台数は180万台強と約8割増えた。

カメラ事業以外でも、スマートフォン向けの需要拡大を背景に、半導体の製造工程で使われるフォトレジスト(感光性樹脂)や研磨剤が好調だった。超音波診断装置などの医療機器も伸びた。


エボラ対策はじめ医薬品領域拡大へ

ここ最近、エボラ治療薬、『アビガン錠』で注目が集まる同社だが、現時点では、医薬品事業は研究開発費の負担が重いままである。その一方で、エボラ出血熱の治療にも使われているインフルエンザ薬や抗がん剤を手掛けるなど医薬品事業を強化しており、買収で事業領域を広げる。そして、同社は27日、バイオ医薬品の受託製造を手掛ける米国の子会社を通じ、ワクチン受託製造会社のケイロン・バイオセラピューティクス(テキサス州)を買収すると発表した。

富士フイルムはケイロン社を炭疽(たんそ)菌など危険度の高い感染症向けの製造技術を持っており、世界的な需要が見込めると判断した。ケイロン社はウイルスや細菌の出入りを完全に遮断する最先端の可動式クリーンルームを保有している。独立した小型クリーンルームを使い、製造するワクチンの種類を迅速に変えることができ、開発が進められているエボラ出血熱のワクチンを製造することも可能だ。

バイオ医薬品の受託製造事業の世界市場は約2千億~3千億円規模とされる。さらに、バイオ医薬品は副作用が非常に少なく、高い効能が期待できることから、今後の将来性にも大きく期待が持てる。

富士フイルムは同事業の売上高を18年度までに300億円規模に拡大したい考えをもっている。特にワクチン向け医薬品は従来の感染症予防に加え、がんの予防・治療にも広がっていることなどから、世界的に年約10%の成長が見込まれており、ケイロン社をその中核事業会社として育成し今後の収益の一角にしたいというのが狙いだろう。

(ZUU online)

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