飲食業の人手不足の原因5つ

飲食業が人手不足になっている原因には、業界特有の課題が関連している。ここでは、飲食業が人手不足になっている主要な原因を5つ紹介する。

1. 給与待遇が他業種よりも低い

飲食業は他業種に比べて賃金が安く、待遇面で劣っているという課題がある。

厚生労働省の『賃金構造基本統計調査』によると、2021年の「宿泊業、飲食サービス業」の賃金平均は年収257万6,000円であり、全産業の中で最下位だ。特に、女性の賃金は215万円で、こちらも全産業でワースト1位だ。

2. キャリア形成が難しい

飲食業は経験が偏ることが多く、他業種で活躍できるようなキャリア形成が難しいという一面がある。

飲食業界でも大手ならば社内部署も細分化されているため、社員の希望に応じたキャリア形成を支援している場合がある。しかし、中小の飲食店では店舗ごとの運営が基本であり、携わる業務が流動的なこともあってキャリアアップが難しい。

3. 人間関係のトラブルが起こりやすい

飲食業は店舗内という限定された空間内で常に社員と店員が関わり合う環境であるため、人間関係のトラブルも起こりやすい。

職場のハラスメントに関する実態調査報告書』によると、2020年度の職場内でのハラスメントの発生率1位はパワハラ、2位はセクハラである。飲食サービス業は顧客と直に接する業種なので顧客等からの迷惑行為も多く、その割にハラスメント対策への取り組み割合が低いという結果だった。

そのため、職場内での店員同士のトラブルはもちろん、顧客とのトラブルも発生しやすいという特徴がある。

4. 労働条件があまり良くない

飲食業は長時間労働が慢性化しており、労働条件が良くないという一面がある。

働き方改革以前の状況ではあるが、農林水産省の2016年度の報告によると、外食産業の所定外労働時間は正規雇用、非正規雇用ともに多く、繁忙期には特に負担が大きい。

所定外労働が増える理由のトップは「人員が足りないため」であり、「業務の繁閑の差が激しい」「客対応が長引く」といった理由が続いている。

年間休日数については「就労条件総合調査(2020年)」によると103.9日であり、全産業で最下位だ。

5. 研修制度などが整っていない

業界構造上、現場で働く社員はパートやアルバイトが多く、そもそも研修制度が整っていないという課題もある。

大手チェーン店であれば、すでに独自の研修を行っていたり、外部サービスを利用したりしており、幹部候補の育成システムも整っている。しかし、中小規模の飲食店では育成方針が定まっておらず、経営者の背中から学ぶという文化が根強く残っている。