特集「令和IPO企業トップに聞く~経済激動時代における上場ストーリーと事業戦略」では、IPOを果たした各社の経営トップにインタビューを実施。激動の時代に上場した立場から、日本経済が直面する課題や今後の動向、その中でさらに成長するための戦略・未来構想を紹介する。

株式会社コラントッテは1997年に創業した、大阪市に本社を構える医療機器メーカーだ。近年は緊急時の身元確認・連絡をサポートする、生活不安を解消するビジネスにも参入している。2021年7月には東証マザーズ(現グロース)へ上場。本稿では代表取締役社長の小松克已氏に、事業の特長や上場の経緯、今後目指すべき姿について伺った。

(取材・執筆・構成=大正谷成晴)

株式会社コラントッテ
小松 克已(こまつ かつみ)――株式会社コラントッテ代表取締役社長
1957年2月2日生まれ。大阪府出身。高校を卒業後、建設会社に入社。22歳で建築士の資格を取得し、24歳で建設会社「小松建設」を設立。その後複数社の経営に携わる。
1997年10月に株式会社アーク・クエスト(現:株式会社コラントッテ)を設立。家庭用磁気治療器「Colantotte」を中心に、さまざまな商品を提供している。2021年7月に東証マザーズ(現グロース)市場への上場を果たす。
株式会社 コラントッテ
家庭用磁気治療器を開発および販売。現在はコラントッテ事業とCSS事業の2つの事業を展開する。「本気の笑顔の実現」という経営理念のもと、事業活動を通じて社会的課題の解決に貢献することで、社会的価値と企業価値を高める取り組みを推進。コラントッテ事業では「Colantotte」「Colantotte RESNO」「Lierrey」の3ブランドを展開し、年齢・性別を問わず、幅広い層が利用できるよう商品開発に注力している。

目次

  1. 磁気健康ギアのリーディングカンパニー
  2. 特許と医療機器のエビデンスが他にはない強み
  3. コロナ禍でも増収増益を記録

磁気健康ギアのリーディングカンパニー

―― 株式会社コラントッテについてご紹介ください。

▶コラントッテの事業ストラクチャー

株式会社コラントッテ
(画像提供=株式会社コラントッテ)

コラントッテ代表取締役社長・小松克已氏(以下、社名・氏名略):弊社は磁気健康ギアの「Colantotte(コラントッテ)」を中心とした「家庭用永久磁石磁気治療器」の製造・販売を手がけています。最大の特長は厚生労働省が指定した第三者認証機関から認証を受けた管理医療機器で、装着部位の血行を改善し、コリを緩和する効能・効果がある医療機器であることです。現在はベースとなる「Colantotte」を中心にアスリート向けのサブブランドである「Colantotte SPORTS」、日々のセルフケア習慣をサポートする「Colantotte RESNO」、女性を意識した「Lierrey」など複数のブランドを展開し、アイテムも磁気ネックレスや腕用のアクセサリーなどを扱っています。幅広い世代の方にお使いいただき、最近はZ世代のご利用も広がりました。直営店のデータによると、男性6:女性4の割合でお買い上げいただいています。一方、もともとアスリート向けのギアというイメージが強いこともあり、現在はフィギュアスケートの宇野昌磨選手など、合計60以上の選手・団体とアドバイザー契約を結んでいます。

健康に関する領域(コラントッテ事業)と並行して、2017年から生活不安に関する領域のCSS(コラントッテ・セーフティ・システム)事業も始めました。CSSは緊急時における身元確認や、指定された緊急連絡先への連絡などを実現するサービスで、弊社のペンダントやキーホルダー、カードなどを携帯することで、それぞれに記載されたID番号とフリーダイヤルにより、緊急時にあらかじめ指定された連絡先に連絡が入り、身元を確認できます。例えばゴルフ場で倒れて意識不明になった場合、本人については免許証や名刺などで身元が判明しますが、ご家族や親族の連絡先はわかりません。病院では親族の承諾がないとできない治療が多いため、これでは非常に困ります。CSSでは24時間365日稼働しているコールセンターに連絡を取ると、速やかに家族や勤務先など指定したところに連絡できる仕組みです。現在は、日本とアメリカで特許を取得しています。

――どういった思いでCSS事業を始めたのですか。

▼CSS事業の概要

株式会社コラントッテ
(画像提供=株式会社コラントッテ)

2014年に都内在住の認知症高齢者が電車に乗り、7年後に北関東で見つかったというニュースを目にしたのがきっかけです。自分の家族がそれだけの間見つからないとは非常に痛ましい話であり、社会に役立つサービスを作りたいとの気持ちで始めました。費用は月429円(税抜390円)で提供していますが、大手企業との提携も進めており、2019年10月には株式会社大阪メトロサービスと業務提携契約を締結し、OSAKA PiTaPa専用のCSS商品の展開を始めました。他にも、法人や組合の福利厚生としてご利用いただくケースも出てきました。

特許と医療機器のエビデンスが他にはない強み

――1997年に創業してから今日までの、事業の変遷をお聞かせください。

私は、幼い頃から「将来は社長になる」と決めていました。靴屋なら靴が、服屋なら服が安く買えるという発想で、子ども心に「建築会社なら高額な家が安く手に入る」と思い、当初は建築会社を目指しました。当時の田中角栄首相は高等小学校出身ながら建築士の資格を持ち、総理大臣にまで登りつめた人物で、これも影響したと思います。

18歳で入った建設会社ではさまざまなことを学び、23歳の時に独立しました。バルコニー関連の特許を取って業績を伸ばし、飲食店やゴルフウェアの輸入販売、釣りの撒き餌を作る機械の製造販売など複数の会社を持ち、30歳を前に自社ビルを建てることができました。ところが、その後大きな詐欺に遭い、またビルの建設代金が支払われないといったトラブルが相次いで経営が苦しくなり、40歳の時にすべての会社をたたみました。

しかしながら、自分にサラリーマンは務まらないという思いがあったので、その半年後には小さな事務所を借り、妻を社長に会社を立ち上げました。その後、父の病気をきっかけに考案した「Colantotte」を事業化したのです。

――「Colantotte」には、起源となる製品があるのですね。

父親が脳梗塞で倒れて左半身にマヒが残ったことから、右半身が肩こりや腰痛に悩まされるようになりました。磁石に詳しかった私が、永久磁石のN極・S極を交互に配列するサポーターを友人に作ってもらって着せたところ、2日で良くなったのです。興味を持った医師にメカニズムを解説して試してもらったところ、「効果を感じる。製品化したほうがよい」と勧めていただき、完成したのが「Colantotte」でした。父親に着せたプロトタイプを経てタンクトップとウエストベルトが生まれ、徐々に効果が口コミなどで広がって業績が伸び、アイテムを増やしていきました。現在は、全国各地の百貨店やショッピングモールに直営店を出店するに至っています。展示会にいらした海外の方からも好評で、2004年の香港を皮切りにアジアや欧米でも商品を販売しています。

――磁気を使った健康器具は他にもありますが、どのように差別化を図っていますか。

▼Colantotteの製品ラインナップ

株式会社コラントッテ
(画像提供=株式会社コラントッテ)

N極とS極の交互配列は国内外で特許を取っていて、日本では管理医療機器として認証を受け、韓国では医療機器認証、EUでは医療機器のCEマークを取得しています。現在は認証のハードルが高く、撤退することはあっても新規参入は難しいので、それが結果的に弊社の優位性になっています。医療機器としてのエビデンスも積み上げ、2008年には業界に先駆けて、医療機器の品質マネジメントシステムに関する国際規格のISO13485も取得しました。これも新たに取得するのは大変ですから、自社で作るよりも弊社に頼んだほうが早いと判断するに違いありません。ニーズの有無を計算するのも容易ではなく、実際のところ新規参入はかなり少ない業界です。特許、医療機器としての認証、エビデンスの積み上げが差別化となり、長く続いている秘訣だと思います。その結果有名なアスリートにもご契約いただき、皆さんが活躍することで、弊社商品の認知度向上にもつながっています。

――2021年7月にはIPOを果たしました。

12年前に自社ビルが完成したのですが、当時は磁気の商品しか扱っていませんでした。このままでは先行きが不安な社員もいるのではないだろうかと思い、「100年企業を目指しましょう」と話したのですが、それには信頼される製品づくりが最も重要です。弊社はそこにこだわっていて、「良いものを作ると会社は長く続く、自信を持ってものづくりをしましょう」と訴える中、社員のモチベーションを上げるために上場が有効であり、会社の信頼にもつながると考えました。「上場してこうしたい」ではなく、会社を存続させるための土台になると思って目指したわけです。

――上場してから約1年半経ちますが、何か変化はありましたか。

結論として、上場して良かったです。お客様の見る目が違いますし、取引先の皆様にも安心していただいております。社員のモチベーションも上がっているようです。何年も前から実質無借金経営なので必要に迫られていませんが、資金調達も焦らずに済みます。いずれにしても、信頼と社員のモチベーションの向上というメリットを実感しています。

コロナ禍でも増収増益を記録

――資源高や円安など、日本経済は大きな課題に直面しています。2021年という激動の時代に上場した立場から、これらをどのように捉えていますか。

もともと2020年に上場する予定でしたが、証券会社からの提案もあって1年延期しました。コロナ禍でもECサイトの売上が好調で、店頭でも前年比10~15%増で商品が売れていて、納品が間に合わないほどでした。その年に上場してもよかったのですが、コロナ禍でも業績が好調であることを示すには、1年待ったほうがよいと判断したわけです。お陰様で増収増益を維持することができ、改めて足腰の強い会社だと実感しました。為替は円安に振れましたが吸収できる範囲内で、値上げはしていません。今後はインバウンドが回復し、海外での販売も回復すれば、ネガティブな影響を受けることはないと考えています。

――今後の目標や5年後、10年後に目指すべき姿についてお聞かせください。

創業以来、機関車のように事業を牽引していますが、私自身が目標を掲げることは控えています。それは、私が引っ張る会社であってはいけないからです。社内には中期経営計画を策定する部門があり、チームとして動いています。仮にグロースからプライムに行きたいなら、社員が中心になって進めていけばよいと思います。実際、私がオフィスに行くと全社員とグータッチをしながら言葉をかけるくらいで、私が方向を定めるわけではなく、社員に任せています。強いて挙げるなら、今後は人間だけでなく犬や猫向けの製品も作りたいと考えています。

――最後に、ZUU onlineの読者へメッセージをお願いします。

医療機器の認証を取得してエビデンスも積み上げるなど、弊社は押さえるべきことをしっかり押さえている会社です。有名アスリートと契約しているので派手に映りますが、実際はそうではなく、地道にビジネスを続けてきた結果にすぎません。投資家の方からすると「真面目過ぎてはいけない、もっとアクティブでもよい」という意見もあると思いますが、業績も伸びていますから、そういった点を評価していただきたいと思います。コロナ禍にも関わらず、しっかり製品を作って販売し、これだけの業績を達成できた理由は、真面目以外の何物でもありません。長期的には、株価にも反映されると思います。そんな弊社の今後にご期待ください。