本記事は、桐生稔氏の著書『説明の一流、二流、三流』(明日香出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。
帰納法
三流は、何の根拠もなく語り、二流は、事実を並べて語り、一流は、どのように語る?
論理的な話し方で、もう1つ有名な方法があります。
それが「帰納法」です。帰納法とは、複数の事実から結論を導くやり方です。
例えば、次のような提案。
- 【事実】『鬼滅の刃』が大ヒットしています
【事実】『呪術廻戦』も大ヒットしています
【事実】『シン・エヴァンゲリオン劇場版』も大ヒットしています
【結論】今は空前のマンガブームです。当社でもマンガの要素を取り入れた商品を開発しませんか?
複数の事実を展開したあとに、結論を述べる。これが帰納法です。
しかし、帰納法にも弱点があります。それは、「たとえ複数の事実があったとしても、結論が正しいとは限らない」ことです。マンガがヒットしているからといって、自社でもヒットするとは限りません。
例えば、友達に「年収を上げたい」と相談したら、「ランニング専門誌が行った調査によると、皇居の周りを走る男性ランナーの半数以上が年収700万円以上なんだって。だから皇居を走ってみたら?」と言われました。
アドバイスはうれしいですが、あまりピンとこないですよね。確かに皇居の周りを走っている人の年収は高い、というデータはありますが、皇居を走っていない方でも、年収700万円以上の方はたくさんいるでしょうし、他にもやり方はありそうです。
そこで、どうするか?
実は、「帰納法は結局、仮説でしかない」のです。いくら複数事実を並べても、結論が正しいとは限りません。信憑性を高めるために100個も200個も事実を並べていたら、それこそ大変です。だから、仮説でしか結論が言えないのです。
仮説で結論を言うとは、こういうことです。
- 【事実】今、糖質、脂質、タンパク質といった3大栄養素を耳にする機会が多くあります
【事実】胃腸を休めるために半日断食をする人も増えました
【事実】グルテンフリー(小麦を抜いた食事)の書籍もヒットしました
【結論】今、空前の健康食ブームがきていると思います
- 【事実】田中社長は朝5時に起きています
【事実】鈴木部長も朝5時に起きています
【事実】私の友人も朝5時には起きていて、彼もなかなか仕事ができます
【結論】私の知る限り、早起きしている人は仕事ができる傾向にあるようです
「思います」「傾向にあるようです」はすべて仮説です。
帰納法で言い切ると、「そうとは言い切れんだろ」という突っ込みが入る可能性があります。
複数事実があるからといって過信しない。言葉の細部まで用意周到なのが一流です。
Road to Executive
一流は、複数の事実を並べたあとに、仮説で語る
- 帰納法の欠点を見抜いて対策を打つ
桐生稔
株式会社モチベーション&コミュニケーション代表取締役・メンタル心理カウンセラー 人材派遣会社の営業をボイストレーニングスクールの職員を経験後、コミュニケーションスクールを立ち上げる。現在は全国20ヶ所で、伝わる話し方、好かれる話し方、あがり症改善、人前でのスピーチトレーニングなどを実施。年間1,500回のセミナーを開催し、受講者数は20,000人を越える。※画像をクリックするとAmazonに飛びます
『説明の一流、二流、三流』
- 三流は、あいまいに説明し、二流は、詳しく長く説明し、一流は、どうする?
- 三流は、口頭で説明し、二流は、分厚い資料で説明し、一流は、 どうする?
- 三流は、何の根拠もなく語り、二流は、事実を並べて語り、一流は、どう語る?
- 三流は、話がバラバラになり、二流は、なんとなくまとめようとし、一流は、どうまとめる?
- 三流は、黙ってしまい、二流は、相手に合わせて妥協し、一流は、どうする?
- 三流は、いきなり頭が真っ白になり、二流は、いきなり説明しはじめ、一流は、いきなり何をする?
- 三流は、説明することで精一杯で、二流は、聞き手の耳に届け、一流は、聞き手のどこに届ける?
- 三流は、口頭だけで説明し、二流は、資料だけで説明し、一流は、どうする?
- 三流は、長いメールを送り、二流は、短くまとめたメールを送り、一流は、どんなメールを送る?