本記事は、桐生稔氏の著書『説明の一流、二流、三流』(明日香出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

ビジネス,トーク
(画像=taka/stock.adobe.com)

帰納法
三流は、何の根拠もなく語り、二流は、事実を並べて語り、一流は、どのように語る?

論理的な話し方で、もう1つ有名な方法があります。

それが「帰納法」です。帰納法とは、複数の事実から結論を導くやり方です。

例えば、次のような提案。


【事実】『鬼滅の刃』が大ヒットしています
【事実】『呪術廻戦』も大ヒットしています
【事実】『シン・エヴァンゲリオン劇場版』も大ヒットしています
【結論】今は空前のマンガブームです。当社でもマンガの要素を取り入れた商品を開発しませんか?

複数の事実を展開したあとに、結論を述べる。これが帰納法です。

しかし、帰納法にも弱点があります。それは、「たとえ複数の事実があったとしても、結論が正しいとは限らない」ことです。マンガがヒットしているからといって、自社でもヒットするとは限りません。

例えば、友達に「年収を上げたい」と相談したら、「ランニング専門誌が行った調査によると、皇居の周りを走る男性ランナーの半数以上が年収700万円以上なんだって。だから皇居を走ってみたら?」と言われました。

アドバイスはうれしいですが、あまりピンとこないですよね。確かに皇居の周りを走っている人の年収は高い、というデータはありますが、皇居を走っていない方でも、年収700万円以上の方はたくさんいるでしょうし、他にもやり方はありそうです。

そこで、どうするか?

実は、「帰納法は結局、仮説でしかない」のです。いくら複数事実を並べても、結論が正しいとは限りません。信憑性を高めるために100個も200個も事実を並べていたら、それこそ大変です。だから、仮説でしか結論が言えないのです。

仮説で結論を言うとは、こういうことです。


【事実】今、糖質、脂質、タンパク質といった3大栄養素を耳にする機会が多くあります
【事実】胃腸を休めるために半日断食をする人も増えました
【事実】グルテンフリー(小麦を抜いた食事)の書籍もヒットしました
【結論】今、空前の健康食ブームがきていると思います

【事実】田中社長は朝5時に起きています
【事実】鈴木部長も朝5時に起きています
【事実】私の友人も朝5時には起きていて、彼もなかなか仕事ができます
【結論】私の知る限り、早起きしている人は仕事ができる傾向にあるようです

「思います」「傾向にあるようです」はすべて仮説です。

帰納法で言い切ると、「そうとは言い切れんだろ」という突っ込みが入る可能性があります。

複数事実があるからといって過信しない。言葉の細部まで用意周到なのが一流です。

Road to Executive

一流は、複数の事実を並べたあとに、仮説で語る

  • 帰納法の欠点を見抜いて対策を打つ
説明の一流、二流、三流
桐生稔
株式会社モチベーション&コミュニケーション代表取締役・メンタル心理カウンセラー 人材派遣会社の営業をボイストレーニングスクールの職員を経験後、コミュニケーションスクールを立ち上げる。現在は全国20ヶ所で、伝わる話し方、好かれる話し方、あがり症改善、人前でのスピーチトレーニングなどを実施。年間1,500回のセミナーを開催し、受講者数は20,000人を越える。

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