本記事は、桐生稔氏の著書『説明の一流、二流、三流』(明日香出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

ヒアリング
(画像=taka/stock.adobe.com)

説明の届け方
三流は、説明することで精一杯で、二流は、聞き手の耳に届け、一流は、聞き手のどこに届ける?

「説明とは何ですか?」と聞かれたら、私はこう答えます。

「自分の頭の中を、相手の頭の中にインストールすること」と。

何かを説明する際、説明したいことは自分の頭の中にあります。しかし、まだ相手の頭の中にはありません。だからこそ、説明が必要になります。それも、相手の脳内に映し出すような説明です。

特に、人前で話すときは、この意識が説明のクオリティに大きく影響を与えます。なんせ複数の人が聞いているわけです。まるで映画のスクリーンに、映像を映し出すかのように説明しないと、多くの方に一斉に伝えることはできません。

そこで、いい方法を教えます。それはずばり、「実演法」です。

実演法とは文字通り、実演すること。もし、体験談を説明するなら、こんな感じです。

「二十歳の頃、父親に言われたことを今も大切にしています。こう言われたんです。『理沙、お父さんは理沙に悔いのない人生を送って欲しい。だから理沙のやりたいことをやりなさい』と。

そしてこう続けてくれました。『お父さんは誰が何と言おうと、理沙の味方だよ』と。

私はこの言葉のおかげで、今も自分を信じて突き進むことができています」

『 』の部分をまるで父親が話しているかのように、自分で実演します。すると、今、目の前で、本当に会話が行われているかのような映像が、聞き手の脳内に映し出されます。

話すことを仕事にしている人は、落語をよく学ぶと言います。

落語はまさに実演のプロです。古典落語でも新作落語でも、登場人物が何人もでてきて、今まさにその場で会話が行われているかのように進んでいきます。

ぜひ、YouTube大学の中田敦彦さんの動画を見てください。実演の嵐です。多いときは10人以上、登場人物がでてきます。しかし、話しているのは中田さん1人です。

人間は、視覚を使って情報を入手することに慣れています。朝起きて、寝る瞬間まで、ずっと目を開けて、目から情報を入手しています。慣れているから理解も早いわけです。

だからこそ、視覚にアプローチすることが有効になるのです。

では、数字やグラフを説明するときはどうでしょう? 誰も登場人物がいませんね。そのときも実演です。

よく「ポイントが3つあります」というときに、指でも「3つ」を示しましょう、といわれます。これは、視覚に訴えかけるためです。

「売上高1兆円を目指します」というときは、人差し指を立てるとより伝わります。

グラフの推移を説明するとき。「昨年は前年比100%と横ばいでした」というときは手を水平に広げて表し、「今年は120%まで回復しています」というときは、左手を100%、右手を120%とし、右手を少し高くあげると伸びている感じが伝わります。

人前で説明するとき。言葉を耳に届けるだけでは、自分の頭の中を相手の頭の中にインストールすることはできません。大事なことは相手の脳内に映し出すこと。

話し手と、聞き手の頭の中に、同じ映像が見えたときに、面白いように説明が伝わりはじめます。

Road to Executive

一流は、聞き手の脳内に届ける

  • 実演法で相手の頭の中に映像を映し出す
説明の一流、二流、三流
桐生稔
株式会社モチベーション&コミュニケーション代表取締役・メンタル心理カウンセラー 人材派遣会社の営業をボイストレーニングスクールの職員を経験後、コミュニケーションスクールを立ち上げる。 現在は全国20ヶ所で、伝わる話し方、好かれる話し方、あがり症改善、人前でのスピーチトレーニングなどを実施。年間1,500回のセミナーを開催し、受講者数は20,000人を越える。

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