本記事は、桐生稔氏の著書『説明の一流、二流、三流』(明日香出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。
説明の届け方
三流は、説明することで精一杯で、二流は、聞き手の耳に届け、一流は、聞き手のどこに届ける?
「説明とは何ですか?」と聞かれたら、私はこう答えます。
「自分の頭の中を、相手の頭の中にインストールすること」と。
何かを説明する際、説明したいことは自分の頭の中にあります。しかし、まだ相手の頭の中にはありません。だからこそ、説明が必要になります。それも、相手の脳内に映し出すような説明です。
特に、人前で話すときは、この意識が説明のクオリティに大きく影響を与えます。なんせ複数の人が聞いているわけです。まるで映画のスクリーンに、映像を映し出すかのように説明しないと、多くの方に一斉に伝えることはできません。
そこで、いい方法を教えます。それはずばり、「実演法」です。
実演法とは文字通り、実演すること。もし、体験談を説明するなら、こんな感じです。
「二十歳の頃、父親に言われたことを今も大切にしています。こう言われたんです。『理沙、お父さんは理沙に悔いのない人生を送って欲しい。だから理沙のやりたいことをやりなさい』と。
そしてこう続けてくれました。『お父さんは誰が何と言おうと、理沙の味方だよ』と。
私はこの言葉のおかげで、今も自分を信じて突き進むことができています」
『 』の部分をまるで父親が話しているかのように、自分で実演します。すると、今、目の前で、本当に会話が行われているかのような映像が、聞き手の脳内に映し出されます。
話すことを仕事にしている人は、落語をよく学ぶと言います。
落語はまさに実演のプロです。古典落語でも新作落語でも、登場人物が何人もでてきて、今まさにその場で会話が行われているかのように進んでいきます。
ぜひ、YouTube大学の中田敦彦さんの動画を見てください。実演の嵐です。多いときは10人以上、登場人物がでてきます。しかし、話しているのは中田さん1人です。
人間は、視覚を使って情報を入手することに慣れています。朝起きて、寝る瞬間まで、ずっと目を開けて、目から情報を入手しています。慣れているから理解も早いわけです。
だからこそ、視覚にアプローチすることが有効になるのです。
では、数字やグラフを説明するときはどうでしょう? 誰も登場人物がいませんね。そのときも実演です。
よく「ポイントが3つあります」というときに、指でも「3つ」を示しましょう、といわれます。これは、視覚に訴えかけるためです。
「売上高1兆円を目指します」というときは、人差し指を立てるとより伝わります。
グラフの推移を説明するとき。「昨年は前年比100%と横ばいでした」というときは手を水平に広げて表し、「今年は120%まで回復しています」というときは、左手を100%、右手を120%とし、右手を少し高くあげると伸びている感じが伝わります。
人前で説明するとき。言葉を耳に届けるだけでは、自分の頭の中を相手の頭の中にインストールすることはできません。大事なことは相手の脳内に映し出すこと。
話し手と、聞き手の頭の中に、同じ映像が見えたときに、面白いように説明が伝わりはじめます。
Road to Executive
一流は、聞き手の脳内に届ける
- 実演法で相手の頭の中に映像を映し出す
- 三流は、あいまいに説明し、二流は、詳しく長く説明し、一流は、どうする?
- 三流は、口頭で説明し、二流は、分厚い資料で説明し、一流は、 どうする?
- 三流は、何の根拠もなく語り、二流は、事実を並べて語り、一流は、どう語る?
- 三流は、話がバラバラになり、二流は、なんとなくまとめようとし、一流は、どうまとめる?
- 三流は、黙ってしまい、二流は、相手に合わせて妥協し、一流は、どうする?
- 三流は、いきなり頭が真っ白になり、二流は、いきなり説明しはじめ、一流は、いきなり何をする?
- 三流は、説明することで精一杯で、二流は、聞き手の耳に届け、一流は、聞き手のどこに届ける?
- 三流は、口頭だけで説明し、二流は、資料だけで説明し、一流は、どうする?
- 三流は、長いメールを送り、二流は、短くまとめたメールを送り、一流は、どんなメールを送る?