不動産投資において重要な指標が利回りです。購入価格に対してどれくらいの収益を得られるかは利回りで判断することができます。不動産投資の代表的な4つの利回りを、シミュレーションを交えてわかりやすく解説します。

不動産投資で利回りが重要な理由

不動産投資で重要な4つの利回りの意味をわかりやすく解説
(画像=Sutthiphong/stock.adobe.com)

不動産投資は利回りが重要といわれています。条件がほぼ一律の株式投資と違い、不動産投資は物件の購入条件が人によって異なります。一般的にローンを組んで株式投資をする人はほとんどいませんが、不動産は全額自己資金、自己資金と融資を併用、全額融資と3つのパターンに分かれます。ローンの有無によっても見るべき利回りの種類が違ってくるのです。

キャピタルゲインを狙った不動産投資の場合は、売却すれば終わりですので、それほど細かい利回りの計算は必要ないかもしれません。むしろ「1,000万円の利益が出た」というように、利益額を重視するオーナーもいるでしょう。

しかし、インカムゲインを狙う賃貸経営の場合は基本的に長期投資となるので、1年にどれくらいの利回りを上げられるかを考えて収支計画を立てる必要があります。

不動産投資の4つの利回り

不動産投資にはいくつかの利回りがありますが、なかでも次の4つは重要な指標になります。計算式を含めて利回りの考え方を確認しておきましょう。

表面利回り

表面利回りは、年間家賃収入を物件価格で割ったシンプルな指標です。複数の物件の利回りを比べるときに便利な指標といえます。不動産広告ではほとんどの場合表面利回りが記載されています。満室を想定した高めの利回りが掲載されていますので、数字を鵜呑みにしないようにすることが大事です。

また、首都圏よりも地方のほうが利回りは高くなる傾向があります。物件価格が大幅に安いため、表面利回りが首都圏より高くなるのです。しかし、空室を考慮に入れると話は違ってきます。

首都圏でもとりわけ東京23区は地方にくらべて圧倒的に周辺人口が多いため、安定して入居者を確保できます。長い目で見れば空室リスクが高い地方より、首都圏が優位といえます。

【計算式】
表面利回り=年間家賃収入÷物件価格×100

実質利回り

実質利回りは、年間家賃収入からかかった経費を差し引いた金額を物件価格+物件取得諸経費で割った指標です。経費を計算に入れるため、より経営の実態に則した利回りになります。賃貸経営にかかる経費は一般的には家賃収入の15〜20%程度といわれていますので、高いほうの20%で計算すればよいでしょう。

【計算式】
実質利回り=(年間家賃収入-年間諸経費)÷(物件価格+物件取得諸経費)×100

返済後利回り

返済後利回りは、年間家賃収入からかかった経費とローンの返済分を差し引いた金額を物件価格+物件取得諸経費で割った指標です。手元にいくらのお金が残るかを知ることができます。キャッシュフローと似たような意味を持つ指標といえるでしょう。

【計算式】
返済後利回り=(年間家賃収入-年間諸経費-ローン返済額)÷(物件価格+物件取得諸経費)×100

自己資本利回り

自己資本利回りは、自己資金に対してどれくらいの利回りを得られるかを表す指標です。不動産投資として投資効率が高いかどうかを判断するのに役立ちます。自己資金を少なくするとローン返済額が多くなるので、数字のバランスを見ながら適切な自己資金に設定することが大事です。

【計算式】
自己資本利回り=(年間家賃収入-年間諸経費-ローン返済額)÷自己資金×100

4つの利回りでシミュレーションしてみよう

次に、不動産投資でどれくらいの収益を上げられるのか、4つの利回りで具体的にシミュレーションしてみましょう。

【前提条件】
・東京都新宿区の1LDK新築マンション、物件価格5,000万円、物件取得諸経費40万円、自己資金2,040万円、融資金額3,000万円、返済期間35年、元利均等払い、金利1.8%
・年間家賃収入月23万円×12ヵ月=276万円、年間諸経費55万2,000円(家賃収入の20%)、ローン返済額月9万6,327円×12ヵ月=115万5,924円

以上の前提条件で、年間満室だった場合の各種利回りは以下のように計算できます。

・表面利回り
年間家賃収入276万円÷物件価格5,000万円×100=5.52%

日本不動産研究所が公表している「第47回不動産投資家調査(2022年10月現在)」によると、東京城南地区の賃貸住宅一棟の期待利回りはワンルームタイプが3.9%、ファミリータイプが4.0%となっています。その数値と比較すると、5%台の表面利回りなら検討する価値がある物件といえそうです。

・実質利回り
(年間家賃収入276万円-年間諸経費55万2,000円)÷(物件価格5,000万円+物件取得諸経費40万円)×100=4.38%(端数四捨五入、以下同)

実質利回りは諸経費を計算に入れた経営実態に近い利回りです。シミュレーションの物件は4%を超えているので、安定した経営が期待できます。ローンの返済は含まれていないので、物件の稼ぐ力を見ることができる指標といえます。

・返済後利回り
(年間家賃収入276万円-年間諸経費55万2,000円-ローン返済額115万5,924円)÷(物件価格5,000万円+物件取得諸経費40万円)×100=2.09%

返済後利回りは、ローンを返済して手元に残るお金を表す数値ですので、2%を超える利回りを確保できるなら優秀な物件と判断してよいでしょう。逆に返済後利回りがマイナス(赤字)という計算結果なら、預貯金からの持ち出しになる可能性が高いので、購入を見送ったほうが無難です。

・自己資本利回り
(年間家賃収入276万円-年間諸経費55万2,000円-ローン返済額115万5,924円)÷自己資金2,040万円×100=5.16%

自己資金2,040万円で年間105万2,076円の利益を上げていますので、同じ利益が続いた場合、2,040万円÷105万2,076円=約19年で自己資金を回収できる計算になります。35年ローンの中間地点(18年目)に近い時期に回収できますので、空室や家賃の下落を考慮に入れても返済期間内の回収は問題ない水準といえます。

収支のシミュレーションは厳しめに行うのがセオリー

収支をシミュレーションするときは、甘い収支計画にならないように実質利回りや返済後利回りで厳しめに計算するのがセオリーです。上記よりさらに慎重にシミュレーションするなら、空室が出ることを考慮して家賃2ヵ月分程度の空室損を差し引いて計算すると万全な収支計画になります。上記シミュレーションの返済後利回りでは105万2,076円の利益が出ていますので、空室損の46万円を差し引いても約60万円の黒字を確保できるので安心です。

中古と新築の利回りの違いも把握しておく必要があります。一般的に中古マンションは新築よりも利回りが高く算出されます。購入価格が安いため、満室を想定した場合の利回りが高くなるからです。しかし、不動産は単純に物件価格が安いことイコールお買い得というわけではない点に注意が必要です。いくら価格が安くても、空室が続いて家賃を下げることになれば利回りは低下してしまいます。

その点新築の賃貸マンションは希少性が高いことから入居者を確保しやすく、中古に比べ空室リスクが低くなります。また、建築後10年程度はほとんど修繕が発生しないため、実質利回りは新築のほうが高くなる可能性があります。

コスト管理は大事ですが、はじめにコスト安ありきではなく、稼ぐ力を持つ物件を探し、少しでも高い利回りを得られる経営を目指していきましょう。

※記事中のシミュレーションは一例であり、結果を保証するものではありません。諸条件によって計算結果は異なりますので、参考程度にお考えください。

(提供:Incomepress



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