本記事は、和泉祐子氏の著書『もし部下が「やる気」をなくしたら リーダーが1年目に学びたいこと』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

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(画像=Freedomz/stock.adobe.com)

報連相は「ピラミッド型」が正解

「ピラミッド型の報連相」とは、下図のように上から下に降りるほど、報告する情報の量が多くなるイメージです。

もし部下が「やる気」をなくしたら リーダーが1年目に学びたいこと
(画像=もし部下が「やる気」をなくしたら リーダーが1年目に学びたいこと)

第一階層は、「ヘッドライン」の報告です。ヘッドラインとは、新聞などの目立つ文字で書かれた見出しのことを言います。

例えば1日の終わりに、「今日やった仕事の報告」をさせる場面を想像してください。新人のうちは、どうしても結果ではなく、プロセスを語りたがる傾向がありますよね。このヘッドライン報告をさせると、自然と結論から先に述べる習慣がつきます。

ヘッドラインの報告を教えるには、次のような説明が効果的です。


「ネットニュースのサイトを思い出してください。無数のヘッドラインが表示されますが、すべてを読む人はいませんよね。興味のあることだけをクリックするでしょ? あれと同じです。1行で内容がわかる、簡潔なヘッドラインで報告してください」

ヘッドラインの報告の中で気になることがあれば、そこをクリックすればいいわけです。つまり、「それって何だっけ?」と新人に尋ねればOKです。そこから、第二階層の「事実」の報告に移ります。

事実の報告では、いつ、誰が、何を、どうしたなど、5W1Hに基づいて、事実を報告させます。それを聞いて、「あ、そういうことか」と納得できれば終了です。まだ情報が足りなければ、「もっと詳しく教えて」と、もうワンクリックして、第三階層に移りましょう。

第三階層は、「詳細」の報告です。つまり、持っている情報をすべて報告させます。

背景や経緯、第三者からの伝聞、部下の所見などがここに含まれます。

ただし、部下本人が確認した事実なのか、他人からの伝聞なのか、部下の個人的な考えなのかなど、情報の性質や出所を明確にして伝えるように指導することが肝要です。

「ピラミッド型の報連相」のメリット

ピラミッド型の報連相には、上司と部下の双方に多くのメリットがあります。主な

メリットを5つご説明します。

(1)上司の価値観を理解できるようになる

上司がどのような性質の情報をクリックする(必要としている)のかがわかれば、おのずと上司の価値観が明らかになります。ネットの検索で、徐々に「おすすめ情報」が的確になっていくように、部下も上司のニーズに合わせて、情報のプライオリティ(優先順位)をつけてくれるようになります。

(2)時間を節約できる

最初は、報告のために必要なすべての情報を【第三階層】まで整理して準備する必要があります。しかし、必要のないものが明らかになってくれば、詳細の情報整理にかけていた時間は不要になります。

また、上司にとっても、簡潔で不備のない報告を一度で受けられれば、何度も確認する手間が省け、時間の節約につながります。

(3)新しい上司や部下と関係を構築しやすい

段階的に報告することで、ビジネス哲学の違いによって起こる、かみ合わない報連相のストレスは発生しなくなります。

もちろん、上司の求める情報がわかるまでは、少し準備に時間がかかります。しかし、かみ合わない状態が続くことによる双方のストレスに比べれば、よほど建設的な時間の使い方でしょう。

(4)ビジネスに相応しい話し方が身につく

自然と「結論から簡潔に話す」習慣が身につきます。部下のダラダラした話を聞きながら、上司がイライラするような場面を回避することができます。

(5)早期離職の芽を摘む

「それは報告なのか、相談なのか、何なんだ? 結局、何を言いたいのか、さっぱりわからない」と、上司が声を荒らげる場面はよくあります。しかし、この叱責で心が折れて、退職を考える新人もいますので要注意です。

上司としては、「え、たったそれだけで?」と言いたくなりますが、打たれ弱いタイプの新人には、この叱責が耐え難いハラスメントに聞こえることがあるようです。

早期の離職は、上司にとっても新人にとっても、そして組織にとっても大きな損失です。あらかじめ「理想の報連相」を教えておけば、早期離職の芽を1つ摘むことにつながります。

ここまでで、報連相を例にとって「当たり前スキル」の考え方を説明してきました。

繰り返しになりますが、「できて当たり前」は、上司の希望的な思い込みです。ビジネススキルは、教えることが基本です。もともとできていたら、ラッキーくらいに考えるようにしましょう。

千に一つの奇跡をつかめ!
和泉祐子
カルディアクロス 代表/人材育成・組織開発コンサルタント
上智大学外国語学部卒。外資系の商社に勤め、28才で初の昇進。元上司が部下になるという、逆転現象の洗礼を浴びる。米国本社でコールセンターと出合い、以降、外資企業6社でセンター長を歴任。「どんな人でも育てられる育成力があれば、人を選ぶ必要は無くなるはず」と考え、「採用基準のいらない組織作り」に邁進する。やがて業界屈指の優良センターとなり、数々の表彰を受ける。独自の手法が評判となり、延べ2,200人の見学・聴講者を受け入れた。2016年に独立。組織開発や人材育成、女性活躍を主なテーマに、コンサルタント・講師として活躍中。「コールセンターの教科書プロジェクト」共宰。

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