本記事は、和泉祐子氏の著書『もし部下が「やる気」をなくしたら リーダーが1年目に学びたいこと』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
問題は〈質問→原因特定→対策合意〉のシナリオで解決する
基本となる「シナリオ」の型を説明します。そんなに難しいものではありません。シナリオの型はいたってシンプルです。
シナリオの型
(1)質問する→(2)原因を特定する→(3)対策を合意する
このシナリオの型を習得すれば、かなり広範囲に応用が効きますので、この機会にぜひ覚えてください。簡単にシナリオの流れを見ていきましょう。
上司にとって好ましくない、部下の態度や発言、行動はたくさんありますよね。
しかし部下は、「あえて失敗してやろう」とか「上司に嫌な思いをさせてやろう」などと思ってやっているわけではありません。先にお話しした通り、部下の言動の背景には、その人なりの常識、つまり、考え方や価値観があるはずなのです。
ここでの問題は、必ずしも部下がその価値観を自覚しているとは限らない点です。
そのためにまずは、(1)の質問によって相手の考えを可視化しましょう。
ただし、
「なんで〇〇しなかったの?」
「なんで△△しちゃったの?」
という質問はおすすめできません。
なぜなら「なんで」は、できれば避けたいNGワードだからです。一見、行動や発言の理由を尋ねているようですが、実際は純粋な質問には聞こえません。むしろ、非難しているニュアンスを含んで聞こえる可能性が高いので、要注意というわけです。
したがって、相手が答えやすいような形で質問する工夫が必要です。
- 「〇〇しなくても、うまくできそうだと思った理由を聞かせてもらえる?」
「△△すればうまくいくと思ったポイントは、どんなこと?」
このようにして問題の背景を可視化していくと、いずれどこかで、問題を引き起こしている原因を見つけられます。これが(2)の原因特定です。
ここまでくればあとは簡単。どうやって、その原因を取り除くか、まずは本人に対策を考えさせましょう。
繰り返しになりますが、他人に言われてやるより、自分で決めてやるほうがコミットメントは高くなります。
したがって、部下の考えた対策が「少し甘い」と感じた場合でも、それを否定したり、こちらから一方的に対策を提示したりすることは避けたいところです。ヒントを授けて、部下がよりよいアイデアを見つけられるように導き、共に納得できる対策を練りましょう。これが(3)の対策合意です。
このように、〈質問→原因特定→対策合意〉というプロセスで改善を進めていけば、お互いに大きなストレスを感じることなく、問題を解決できるはずです。
問題が解決した際には、次の2点を必ず実践してください。
- 成果の大小にかかわらず、率直なフィードバックを返すこと
- ヒーローインタビューで2つの質問を問いかけること
上智大学外国語学部卒。外資系の商社に勤め、28才で初の昇進。元上司が部下になるという、逆転現象の洗礼を浴びる。米国本社でコールセンターと出合い、以降、外資企業6社でセンター長を歴任。「どんな人でも育てられる育成力があれば、人を選ぶ必要は無くなるはず」と考え、「採用基準のいらない組織作り」に邁進する。やがて業界屈指の優良センターとなり、数々の表彰を受ける。独自の手法が評判となり、延べ2,200人の見学・聴講者を受け入れた。2016年に独立。組織開発や人材育成、女性活躍を主なテーマに、コンサルタント・講師として活躍中。「コールセンターの教科書プロジェクト」共宰。※画像をクリックするとAmazonに飛びます