本記事は、山本衣奈子氏の著書『気がきく人と気がきかない人の習慣』(明日香出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。
気がきく人は 最後に何を言うかにこだわり、
気がきかない人は 最初に何を言うかにこだわる。
「まず結論から話そう」
「第一印象がもっとも大事」
このように言われたことがある方は、多いのではないでしょうか。
確かに、結論の見えない話はわかりにくいですし、第一印象がよくないとその人を好意的には受け止めにくくなります。だからこそ、「最初に言うこと」や「最初の印象」をきちんと意識することは、とても大切です。
その心がけに間違いはないのですが、実は人の印象に強く残るのは、最初だけではありません。
心理学の言葉に、「新近効果」というものがあります。アメリカの心理学者ノーマン・H・アンダーソンが提唱した「最後に抱いた印象が、その後の情報の評価に影響を与える」というものです。
この影響から、「最後に何を言うか」を疎かにしてしまうと、勘違いやすれ違いを生んでしまうことも少なくありません。
「最初」の印象は、その後の流れでフォローされることもありますが、「最後」の印象はずっと残り続けてしまいます。
つまり、言葉も「最後」に言ったことの方が、より相手の印象に残りやすいのです。
例えば、人を紹介するとき、どちらの紹介の方がより優しそうに感じますか?
A 頑固だけれど優しい
B 優しいけれど頑固
おそらく多くの人が「A」と答えるのではないでしょうか。どちらも「優しさ」と「頑固さ」を同じくらい持ち合わせていたとしても、後にくる言葉の印象の方が強く残りやすくなります。
だからこそ、気がきく人は、最初よりも「最後に何を言うか」にこだわっています。
もっとも印象に残してほしい言葉を、最後にしっかり伝えているのです。
以前、取引先の方をとあるイベントにお誘いしたとき、その方が最後にこう言いました。
「今日はありがとう。とても楽しかったけど、ちょっと疲れたねえ。じゃあまた」
「とても楽しかった」「ちょっと疲れた」と言っているのですが、「とても」なのか「ちょっと」なのかに関係なく、「疲れた」という言葉が強く印象に残り、残念な気持ちと申し訳ない気持ちが湧いてきました。
それ以降、その人をお誘いするのは気が引けて、声がかけにくくなってしまいました。同じことでも、こう言われていたらまた違っていたかもしれません。
「今日はありがとう。ちょっと疲れはしたけれど、とても楽しかった。またぜひ!」
疲れたということもきちんと伝えてはいるのですが、受け取る印象としては「楽しかった」「また行きたい」という方が強く残り、次もまた誘いやすくなりますよね。
言葉というのは、小さな出し方の違いが、大きな受け取り方の違いを生みます。
最初の印象も大事ですが、最後の印象がもっとも強く、そして相手の中に長く残ります。もっとも伝えたい言葉、もっとも受け取ってほしいものこそ、意識して最後にしっかり渡していきましょう。
気がきく人は、最後に一番大事なメッセージを 伝える!
大学で演劇を専攻、在学中にロンドン大学に演劇留学。国内外での舞台経験を通して、相手を意識した「表現」と「届け方」を知る。その後人間心理をふまえた「伝わる伝え方」を徹底研究し、その実用性を検証すべくサービス業、接客、受付、営業、クレーム応対等の業務にて30社以上に勤務。15カ国5千人を超える国籍・業種・立場を超えた人々との関わりから、ついに円滑なコミュニケーションの極意を見いだす。
表現力だけでなく、現場で身につけたトラブル対応力、対人能力、傾聴力、マナー術等を駆使し、「伝わるコミュニケーション術」を確立。伝わる表現アドバイザーとして、企業や官公庁を中心に、コミュニケーション研修、プレゼンテーション研修、セルフマネジメント研修、マナー研修等を実施。年間180回近い企業研修や講演を行う現在、総受講者数は5万人を超え、「表現方法が多彩になるだけでなく、モチベーションも上がる」と評判に。そのリピート率は、業界屈指の8割を誇る。また、その会話力を高く評価され、著名人やスポーツ選手との対談の依頼も絶えない。※画像をクリックするとAmazonに飛びます