本記事は、山本衣奈子氏の著書『気がきく人と気がきかない人の習慣』(明日香出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。
気がきく人は 一文字にこだわり、
気がきかない人は 頭に浮かんだ言葉をそのまま話す。
普段の会話において、私たちはかなり反射的に言葉を選んでいます。多くの場合、そこに意図的な理由はなく、「言い慣れているから」「頭に浮かんだから」という理由から無意識に言葉を選んで会話をしています。
ところが、言葉というものは選び方をちょっと変えるだけで、会話の進め方を大きく変えてしまいます。何気なく使っていると、思いがけない方向にいき、誤解を生み出すことも少なくありません。
日本という国は、世界一ハイコンテクストな文化を持っていると言われています。
「コンテクスト」とは「文脈」という意味です。「行間を読む」「空気を読む」といった言い方に表されるような、言語外の要素に重きを置いた文化、ということです。
こうした文化の中でよりよいコミュニケーションを取るには、言葉そのものだけではない部分にも意識を向ける必要があります。
では、気がきく人はどこに気をつけているのでしょうか。
そのポイントの1つが、「ニュアンス」にあります。
「ニュアンス」には2つの種類があります。〝ポジティブニュアンス〞と〝ネガティブニュアンス〞です。私はこれを、〝陽のあたる言い方〞と〝陰になる言い方〞とお伝えしています。日向と日陰では温度も明るさも異なるように、言葉にも「温かさ・明るさ」や「冷たさ・暗さ」があるのです。
例えば、あなたが何かを頼まれたとして、どちらの言葉の方が素直に聞けますか?
「あなたでいいからお願い」
「あなたがいいからお願い」
言葉上はたったの一文字ですが、受ける印象はかなり違いますよね。
「あなたでいい」の「で」には、諦めのニュアンスが含まれます。受け取る方は、言葉の意味よりニュアンスを受け取ることで不愉快な感情が生まれ、行動もそちらに引っ張られやすくなります。
気がきく人は、この言葉選びをしっかり意識的に行っています。言葉だけではなく、そこに含まれるニュアンスにも気に留めて、邪魔になるものは言い換えるようにしています。
例えばあなたが営業職で、お客さまにA、B、Cの3つの商品を紹介するとしましょう。これを説明する際に、
「ABCとあるのですが、今のお話を聞く限り、Aでいいと思いますよ」
と伝えると、相手からは高確率で「そうですか……もう少し考えてみます」と返ってきます。なぜなら、不安になるからです。説明する人(プロ)が、「Aでいい」と少し陰を感じる言い方をしたことで、それを選んでいいのか自信を持てなくなってしまうのです。
これは、伝える側が相手からその言葉を引き出してしまっているとも言えます。
「ABCとあるのですが、今のお話を聞く限り、Aがいいと思いますよ」
たった一文字を変えているだけですが、この方が、Aのよさやそれをすすめる人の自信が伝わります。それが安心感となり「それにしてみようかな」という気持ちや行動につながりやすくなるのです。
ほんの一文字が大きな力を持つのが日本語です。
言葉選びはニュアンス選び。一文字にこだわって、ニュアンスを味方につけましょう。
気がきく人は、言葉に陽をあてる!
大学で演劇を専攻、在学中にロンドン大学に演劇留学。国内外での舞台経験を通して、相手を意識した「表現」と「届け方」を知る。その後人間心理をふまえた「伝わる伝え方」を徹底研究し、その実用性を検証すべくサービス業、接客、受付、営業、クレーム応対等の業務にて30社以上に勤務。15カ国5千人を超える国籍・業種・立場を超えた人々との関わりから、ついに円滑なコミュニケーションの極意を見いだす。
表現力だけでなく、現場で身につけたトラブル対応力、対人能力、傾聴力、マナー術等を駆使し、「伝わるコミュニケーション術」を確立。伝わる表現アドバイザーとして、企業や官公庁を中心に、コミュニケーション研修、プレゼンテーション研修、セルフマネジメント研修、マナー研修等を実施。年間180回近い企業研修や講演を行う現在、総受講者数は5万人を超え、「表現方法が多彩になるだけでなく、モチベーションも上がる」と評判に。そのリピート率は、業界屈指の8割を誇る。また、その会話力を高く評価され、著名人やスポーツ選手との対談の依頼も絶えない。※画像をクリックするとAmazonに飛びます