本記事は、山本衣奈子氏の著書『気がきく人と気がきかない人の習慣』(明日香出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

気がきく人は お願いと理由をセットにし、
気がきかない人は お願いだけの単品で伝える。

お願い
(画像=taka/stock.adobe.com)

人に動いてもらいたいとき、あなたはどう伝えていますか?

(1)やってほしいことを端的に伝える「これをやって」
(2)やってほしいこととその理由を伝える「〇〇なので、これをやって」

時間がなかったり、説明している余裕がなかったりすると、人は(1)のように細かいことを端折ってしまいやすくなります。「相手が理解する」ことよりも、「相手が動く」ことを優先し、「いいからやって」という態度を取りがちです。

ですから、(1)のタイプの人がよく言うのは、「とにかく」「細かいことはいい」「余計なことは考えなくていい」「言われたことだけやってくれたらいい」などのセリフです。

しかし、これでは人は気持ちよく動いてくれません。

人が行動を起こすには、「共感」と「納得」が不可欠だからです。

つまり、「何をするか」の前に、「何のために」がわからないと、スムーズに行動できないものなのです。

小さい子どもを持つ親同士の会話で、「子どもが思うように動いてくれない」とこぼす人は多くいます。

例えば、出かけようとしているときに、のんびりしている子どもに「早くして!」と言っても、なかなか動いてくれません。イライラしてつい「早くしてって言ってるでしょ!」と畳みかけてしまう。その結果、子どもが泣き出したりして、より行動が遅れることになり、イライラはさらに募る……。

「早くして」と言っているのだから、早く動いてくれればいいだけなのになんで、と思ってしまいがちですが、まだまだ脳も未発達な子どもにしてみれば、理由もわからないのにただ早くしろと言われても、動く気にはなれません。「電車に遅れそうだから」「今出ないと約束の時間に着けないから」など、どうして早くする必要があるのかを具体的に伝えていないため、急ぎたくない子どもにしてみれば早く動くスイッチが入らないのです。

これは、大人にも共通した心理です。

この心理は「カチッサー効果」と呼ばれています。〝ある働きかけによって、人は深く考えることなく反応する〞というもので、特に、要望に理由があるかどうかだけで、人の反応が変わると言われています。

アメリカの心理学者エレン・ランガーが行った心理実験では、コピーの割り込みをお願いする際、ただ「コピーを取らせてください」と依頼するより、「急いでいるので、コピーを取らせてください」と理由をつけた方が、順番を譲ってくれる確率が上がったという結果が示されています。もっと言えば、「コピーを取りたいので、コピーを取らせてください」といった明確な理屈がない理由であっても、同様の結果が見られたそうです。人は理屈よりも理由に反応し、行動しやすいのです。

先日、工事現場の近くで交通整理をしていた人が、私を含めた歩行者の流れを止めました。「少々お待ちください」とだけ言って、そのまま足止めする格好になりました。朝の通勤時間帯だったこともあり、人はどんどん増えていきます。立ち止まって見ていても、大きな音がするわけでもなく、なぜここで止められているのかわからない状態でした。

痺れを切らした一人の男性が「いい加減に通してくれよ!」と怒鳴ったところ、交通整理の人はそこで初めて、「申し訳ございません。この先の道路でトラックが方向転換をしておりますので、もう1〜2分だけお待ちください」と言いました。「だったら最初からそう言えよ!」と、先の男性はかなりいらだっていました。

理由もわからず要望だけ伝えられるのは、ストレスとなり会話をとても攻撃的にさせてしまうことがよくあります。そして理由を伝えるといっても、「後づけの理由」はさらに関係性に悪影響を与えます。要望があるときは理由をつける、そしてそれを「先に」言うことも忘れないようにしましょう。

気がきく人は、理由を「先に」言う!

「気がきく人」と「気がきかない人」の習慣
山本 衣奈子
E-ComWorks株式会社代表/伝わる表現アドバイザー/プレゼンテーション・プランナー、産業カウンセラー
大学で演劇を専攻、在学中にロンドン大学に演劇留学。国内外での舞台経験を通して、相手を意識した「表現」と「届け方」を知る。その後人間心理をふまえた「伝わる伝え方」を徹底研究し、その実用性を検証すべくサービス業、接客、受付、営業、クレーム応対等の業務にて30社以上に勤務。15カ国5千人を超える国籍・業種・立場を超えた人々との関わりから、ついに円滑なコミュニケーションの極意を見いだす。
表現力だけでなく、現場で身につけたトラブル対応力、対人能力、傾聴力、マナー術等を駆使し、「伝わるコミュニケーション術」を確立。伝わる表現アドバイザーとして、企業や官公庁を中心に、コミュニケーション研修、プレゼンテーション研修、セルフマネジメント研修、マナー研修等を実施。年間180回近い企業研修や講演を行う現在、総受講者数は5万人を超え、「表現方法が多彩になるだけでなく、モチベーションも上がる」と評判に。そのリピート率は、業界屈指の8割を誇る。また、その会話力を高く評価され、著名人やスポーツ選手との対談の依頼も絶えない。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)