本記事は、山本衣奈子氏の著書『気がきく人と気がきかない人の習慣』(明日香出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。
気がきく人は 自然な表情を意識し、
気がきかない人は 笑顔だけを意識する。
コミュニケーションにおいて、もっともよくない表情は無表情とされており、笑顔を心がけることが推奨されています。
確かに、笑顔には安心感を生み出す力がありますし、無表情の人よりも笑顔の人と一緒にいる方が居心地がいいです。
そういった部分だけを考えれば、笑顔はもっとも好ましい表情です。
とはいえ、気をつけたいのは、いつでも笑顔でいればいいというわけではないことです。
口角を上げ目尻を下げる表情を「笑顔」と人は認識しますが、笑顔にも種類があります。自然な笑顔は心地よさをもたらしますが、中には不快感を作り出す笑顔もあります。
例えば、「嘲笑」「作り笑い」「ひきつり笑い」「張り付いた笑顔」などが代表的です。こうした笑顔の違いを理解することが、気がきくということでもあります。
不快感につながる笑顔に共通するのは、〝不自然さ〞です。
自然な笑顔が気持ちを伴って表れる表情なら、不自然な笑顔は頭で一生懸命作り出している形だけの笑顔です。同じ「笑顔」でも、不自然な笑顔は違和感、不信感、不快感を生み出すきっかけとなりやすく、だんだん人が離れていってしまいます。
気がきく人が自然な笑顔を大事にするのは、無理な笑顔が相手の居心地の悪さを生み出してしまうことを知っているからです。
私の講演に参加してくれた方で、コミュニケーションの悩みを直接相談しに来てくださった方がいました。なかなか一歩踏み込んだ人間関係を作ることができないというご相談でした。自分から歩み寄るようにしているし、コミュニケーションスキルも活用するようにしているのに、どうにも相手から距離を置かれてしまうのが哀しい、と言うのです。
彼女の話をじっくりと聞きながら、ふと気づいたことがありました。
仕事のことや家庭のこと、楽しかったことや辛かったこと、様々な話をされるのですが、つねに笑顔なのです。
最初はとてもきれいで感じのいい人だなと思っていたのですが、笑顔がまったく崩れないことがだんだん違和感に変わっていきました。笑顔が顔に表れているというより、笑顔を顔に張り付けているような感じなのです。
私が話している間も笑顔で頷いてくれるのですが、張り付いた笑顔に、なんとなく子ども扱いされているような、適当にあしらわれているような気がしてきて、少し嫌な気分を感じるようになっていきました。
彼女に「自分が話している姿を、客観的に見たことはありますか?」と聞いてみました。ないとのことだったので、試しに会話中の姿を録画して、その映像を一緒に見て感想を聞いてみると、「私、こんなに気取って見えるんですね、これは、嫌だなぁ……」と意外そうにつぶやいていました。
その方には、無理に笑おうとするのではなく、自然に任せることをおすすめしました。そのためには、自分の顔ばかりではなく相手の顔にもっと注目することが必要です。相手の表情に合わせて自分の表情も変えてみるようにしましょう。
相手が笑顔ならこちらも笑顔になり、相手が困った顔をしたらこちらも同じようにする。それを続けていくと顔の筋肉が動くようになって、自然な表情になるだけではなく、相手との共感性も高めることができ、コミュニケーションにもっと表情を活かすことができるようになります。
気がきく人は、自然な笑顔を大事にする!
大学で演劇を専攻、在学中にロンドン大学に演劇留学。国内外での舞台経験を通して、相手を意識した「表現」と「届け方」を知る。その後人間心理をふまえた「伝わる伝え方」を徹底研究し、その実用性を検証すべくサービス業、接客、受付、営業、クレーム応対等の業務にて30社以上に勤務。15カ国5千人を超える国籍・業種・立場を超えた人々との関わりから、ついに円滑なコミュニケーションの極意を見いだす。
表現力だけでなく、現場で身につけたトラブル対応力、対人能力、傾聴力、マナー術等を駆使し、「伝わるコミュニケーション術」を確立。伝わる表現アドバイザーとして、企業や官公庁を中心に、コミュニケーション研修、プレゼンテーション研修、セルフマネジメント研修、マナー研修等を実施。年間180回近い企業研修や講演を行う現在、総受講者数は5万人を超え、「表現方法が多彩になるだけでなく、モチベーションも上がる」と評判に。そのリピート率は、業界屈指の8割を誇る。また、その会話力を高く評価され、著名人やスポーツ選手との対談の依頼も絶えない。※画像をクリックするとAmazonに飛びます