中小企業の人材配置のポイント

中小企業が人材を「人財」として活用するためには、人材配置への配慮が欠かせない。人財開発につなげるための配置のポイントを2つ紹介する。

自社の組織課題を明確にする

人材配置は基本的により良い成果を生むことを目的として行うため、まずは組織レベルでの課題を明確にしなければならない。

まずは、経営目標に対する各組織の目標到達状況を確認することで、問題を抱えている組織を見出せるだろう。目標達成ができていないということはすでに何らかの問題が発生していると考えられる。達成が困難な理由を深掘りすることで、課題の見立てができる。

一見うまくいっているような組織でも社員の育成や人間関係などについて問題がないとは限らないため、管理職層やリーダー層へのヒアリングは欠かせない。

企業全体として表面化していない課題が潜んでいる可能性は非常に高いので、社員からヒアリングをするための無記名アンケートを定期的に実施するといいだろう。

社員の強み弱みを分析する

組織分析によって組織レベルの課題が明確になった後は、組織に所属する「個人(社員)」レベルでの課題を分析する必要がある。

人材配置では組織課題の解決を優先して、社員個々人の担当業務への適性で機械的に分けるのではなく、強みや弱み、他の社員との相性やバランス感覚などの見極めが大切だ。

人材育成にも関わるが、社員の強みをさらに伸ばすための配置、弱みの部分を克服するための配置など、社員が成長して人財として長期的に活躍できるような配置をするために、目的を持った分析をしなければならない。

人材配置を間違うと人財として活躍してもらうどころか、モチベーションが低下し離職につながる恐れもある。

社員自身にも考えがあるはずなので、小さな組織だからこそ異動や配置転換を行う前に個別面談を行い、お互いが納得できる形で配置を決めるといいだろう。

中小企業が人材を定着させるための育成のポイント

人材の定着には待遇や労働環境の改善、適正な人事評価の実施などによる従業員満足度の向上が必要だが、人材育成も大切な要素だ。人材育成に絞って、定着率を上げるためのポイントを解説する。

人材育成方針を決める

人材育成では、自社の育成方針という大きな枠組みを定めたうえで、社員それぞれに合わせた具体的な育成計画を立てよう。

人材育成方針は、自社にとって理想となる社員のイメージを決め、育成に関する具体的な取り組みや制度内容を示したものである。

まずは、自社の経営理念や将来的な事業目標から活躍し続けられる人財像を明らかにし、育成のベンチマークを設定することから始めるといいだろう。具体的な社員の理想像を決められないならば、ロールモデルとなる社員や管理職を選んで参考にするのが望ましい。

育成の計画は画一的にするのではなく、社員それぞれの特性を分析した上で、目標水準と具体的な育成計画を作成しよう。

スキル不足解消!リスキリングの流れに乗る

変化が激しいデジタル化社会に対応するために、社員のリスキリングにも積極的に取り組もう。

「リスキリング:Reskilling」とは、社員が職場内で求められるスキルの変化に対応していくために、これまでにない新しい知識やスキルの修得を目指すことで、学び直しの意味が強い「リカレント:Recurrent」とは意味が異なる。

企業経営では経営戦略と人材戦略の連動が欠かせない。しかし、DXが推進されているように、急激なデジタル化で求められる人材の要素が変わりつつある。人材育成の方向性も一様ではなくなったため、社員の育成方法も変化していくだろう。

中小企業が、リスキリングを自前の教育プログラムだけで実施するのは難しい。しかし、外部講師の利用、グーグルやマイクロソフトといったデジタル・プラットフォーマーが提供する通信教育など、外部リソースを活用できる。

また、リスキリングは政府も推進しており、社員が新規事業の立ち上げに必要なスキル習得を目的に職業訓練や研修などを利用した際に、受講費や期間中の賃金を一部助成する「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」が設立されている。

人工知能チャットボットの登場など、デジタル技術の革新はこれからも続くため、社員が人財として活躍し続けられるように、積極的にリスキリングを利用したスキルアップを促すことが大切だ。