本記事は、久野孝稔氏の著書『How To STARTUP』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

「リスクテイクしながら動く」生きたお金の使い方

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(画像=lovelyday12 / stock.adobe.com)

▼▼「お金をかければ手に入るもの」で差をつける

ビジネスでは、お金の力を使って他社に差をつけることができます。こう書くと当たり前のように思えてしまいますが、これには1つ大事なことが抜けています。それは、「お金を使うべきところで使った場合に」というものです。

使うべきところは、「信用を得る」「自分への投資」「情報への投資」「ネットワーク作りへの投資」など、あなたのビジネスを有利にすることを考えると見えてきます。

例えば、多くのスタートアップは実績がないため、最初は信用もありません。「では、その信用を蓄積するためのお金の使い方にはどんなものがあるか」と考えてみるわけです。

もしあなたが金融機関からの信用を蓄積したいのなら、毎月少額の積み立てにお金を使うとよいでしょう。地域の信用金庫などで口座を作り、コツコツと積み立てを始めることは、お金の力を借りて信用力を高めることにつながります。一気に大口のお金を口座に振り込むよりも、毎月少額の積み立てをすることが「この人は計画性のある人だ」という信用を作り出すのです。

自分への投資で言えば、本を買って読み漁る。また、本を書くなどは自分へのインプットとアウトプットになりますから、他者に差をつける有意義な方法です。

情報への投資で言えば、ホームページやSNS、ブログなどを整備することが考えられます。

ホームページはあなたの代わりに24時間営業をしてくれます。あなたの会社は、ホームページがしっかりとしているかどうかで他社と比較されているかもしれません。つまり、ここに投資をするかどうかでチャンスの度合いが変わってくるのです。たかがホームページと思うかもしれませんが、されどホームページです。勤勉な営業マンを1人雇うという感覚でホームページに投資をするとよいでしょう。

ネットワーク作りへの投資は、未来のビジネスとの出会いへの投資とも考えられます。今はスタートアップコミュニティが乱立している状態にあるとも言えますから、どのコミュニティに帰属するかは大変重要な問題ですが、参加して行動することでつながりができ、ビジネスチャンスにつながる可能性のある場所でもあるので、必ずどこかのネットワークに加入し、あなたのビジネスチャンスへの遭遇確率を高めるようにしてください。

▼▼ 運をつかむために小さなリスクを取り続ける

ビジネスには運も必要です。それはスタートアップも変わりません。スタンフォード大学工学部のティナ・シーリグ教授はビジネスにおける運の必要性を次のように伝えています。

『私は20年ほどかけて、何が運をよくさせるのか観察し、人々がより幸運になるよう、手助けしてきました。私は起業を教えていますが、新しいベンチャー企業はたいてい失敗するものです。だから、イノベーターや起業家は、できるだけ運をつかまなければなりません』

(『新版20歳の時に知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義』
ティナ・シーリグ・著、三ツ松新・解説、高遠裕子・訳/CCCメディアハウスより)

彼女は運はそんなに特別なものではなく、いつも、周囲に風のように吹いているので、その風をうまくキャッチすればいいと説いています。そのドリームキャッチャーのような、風をキャッチしやすい帆を作る方法は次の3つです。


(1)小さなリスクを取る
(2)感謝を示す
(3)ひどいアイデアの中に可能性を見出す

このうち、最初の「小さなリスクを取る」には注目です。私は、リスクを取るとは、コンフォートゾーン(自分が居心地よくいられるところ、ぬるま湯)から出ることであると考えています。つまり小さなリスクを取るとは未知の世界に足跡を残すようなことなのです。少なからず今までの行動とパターンが変わるわけですから、運がよくなるというのは、意外なものに遭遇するということと同義のような気がします。私もその通りだなという経験があります。

私は今、新しいロータリークラブを創設して会長を務めています。その名はイノベーションゲートウェイ。これも、思い切ってロータリークラブの世界に入ったからこそできた経験です。ちなみに、ロータリークラブは1905年に誕生した国際的な社会奉仕連合団体「国際ロータリー」のメンバー団体であり、その一員になることで世界のロータリー会員とつながることができます。私はロータリークラブで地元の経済界の重鎮と出会い、「イノベーションを起こすには研究者だけじゃダメで、市民の力が必要なんです」と力説していました。その時、先ほどの新ロータリークラブの創設を勧められたのです。

このことは、私の世界の人々と一緒にイノベーションを生み出すというライフワークを進める上で、世界の多くのフィランソロピスト(篤志家)たちと気軽に知り合いになれるという大きなメリットになっています。こうして、私の運の風向きも変わりました。運は自分の周りにあるとするのなら、受け身で待っているだけでは、つかむことができません。また、つかむことができるパワーを持っていなければ見つけることもできませんし、受け止めることもできないのです。

少し勇気を出して、小さなリスクを取る行動を積み重ねていくと、だんだん強運になっていくのでしょう。リスクを取るというのは、自主的になることでもありますから、やり続けていると前向きな気分になるはずです。「私は運が悪い」と思っている人は、ぜひ、小さなリスクを取ることを試してみてください。安定を望んでいる限り、成長は望めないものです。

How To STARTUP
久野孝稔
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科
(SFC)特任助教/シミックホールディングス株式会社CEOオフィスExternal Innovation担当部長/株式会社NERV代表取締役
1976年茨城県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、1999年に茨城県庁に入庁し筑波研究学園都市のスタートアップ産業政策を担当。31歳の時に筑波大学発スタートアップのCYBERDYNE株式会社に転職し、初代営業部長、初代広報戦略部長など要職を歴任。2012年に身体機能を改善するロボットスーツ®️の価値を世に広げるため、麻痺などの後遺症に悩む方をケアするトレーニングセンターを企画。企画から1年後、国内に運営会社を社内起業で一度に複数立ち上げる。自身は湘南ロボケアセンター株式会社を設立後、代表取締役に就任。その後、武田薬品工業株式会社に転職して日本最大級の創薬エコシステム「湘南ヘルスイノベーションパーク」を立ち上げた。さらに、エコシステムを成長させるためにグローバル製薬企業の視点から日本を見る必要があると考え、スイスのメガファーマであるノバルティスファーマの医療政策部長などを経て現在に至る。日本公共政策学会会員。マサチューセッツ工科大学VMSコース修了者(日本初)。

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