本記事は、久野孝稔氏の著書『How To STARTUP』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

会社のVisionの作り方

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(画像=24Novembers / stock.adobe.com)

▼▼ Visionとは

あなたはどんな人生を歩みたいですか。

そう聞かれた時の問いの答えが「人生のVision」というものです。ここでは、起業する時のVisionについて考えてみます。

試しにあなたの知っているスタートアップ企業のホームページを開いてみてください。ほとんどの会社でこのVisionに関する言葉が書かれていると思います。

ちなみに私の経営するNERVでは次のようなVisionを掲げています。

「How to STARTUP」より引用
「How to STARTUP」より引用

あなたがこれから起業しようと考えているのはどんな会社ですか?

起業する時には、自分の人生のVisionが大事になってきます。なぜなら個人の想いが会社のVisionに大きく影響してくるためです。

スタートアップは個人の想いを起点に起業するものです。よって、起業したい会社のVisonが創業者(つまり、あなた)のVisionと同じ軸であれば、行動と思考に一貫性が出てくるため、きっと想いの強いVisionができるはずです。

では、想いの強いVisonとはどのようなものか、考えていきましょう。世界的に支持されているビジネス書に、『ビジョナリーカンパニーZERO ゼロから事業を生み出し、偉大で永続的な企業になる』(ジム・コリンズ、ビル・シアラー、土方奈美・訳/日経BP)という本があります。Visionについてはこの本で詳しく取り上げられているので、ぜひ手にして読んでみてください。

まず、Visionとは何かについてですが、ビジョナリーカンパニーの著者のコリンズは次のように書いています。

『時代を超えて存続する偉大な企業を作りたいなら、ビジョンが必要だ』

Jim Collins(ジム・コリンズ)

コリンズによると、Visionとは次の3つで構成されると言います。

  • コアバリューと企業理念(核となる価値観と理念)
  • パーパス(存在意義)
  • ミッション(使命)

これらを自分自身の心と会話して、言葉にするのです。

良いビジョンを作るためには、具体的、長期的、野心的であることを心がけて策定するようにします。

では順を追ってみていきましょう。

▼▼ コアバリューと企業理念(核となる価値観と理念)

コアバリューと企業理念は一度決めたらほぼ変わることがない項目になりますので、じっくりと腰を据えて考えていきます。

企業経営を行う上で重要なのがコアバリューです。このコアバリューが話題になったのは2016年。アメリカのビジネス誌フォーブスが発表した「優良中小企業ランキング」に掲載された上位半数がコアバリューを公開していたという事実からです。なぜ、コアバリューを設定して公開することが企業を成長させるのかという因果関係はさておき、先のような事実から世界的にコアバリューを明確化することが経営の定石となりました。

では、コアバリューとは何であり、そのメリットは何なのでしょう?

コアバリューとはその名の通り「核となる価値観」を指しています。これは主に、創業者の価値観を表したものと言え、これを設定し、見える化することで創業者の思いを組織や社会に浸透させることが可能となります。その設定手順については、次の3ステップを踏みます。


① 経営者として自分の価値観を明確にする
② 経営者として自分の価値観を他者が理解できる言葉に置き換え、定義する
③ 見える化して共有し、「共感」を促す

コアバリューが定まり、共感を得られると何が起きるかというと、仲間が増えたり、お客様が増えたり、企業としての組織力が強くなります。これがコアバリューを設定することの大きなメリットであると言えるでしょう。ですから、ぜひスタートアップで起業をする際には、コアバリューを設定するようにしてください。

次に、企業理念です。

企業理念とは、その会社が最も大切にしている考え方、価値観を意味します。

具体的には、「なぜ、会社が存在するのか」「何を目的として経営を行うのか」「どこに向かって企業活動を行なっているのか」といった会社としての使命や思想、存在意義、在り方、さらには社員の行動規範となる内容を明文化したものになります。

これと似た言葉に経営理念がありますが、こちらは、その時代の経営者の価値観を表したものであって、経営者が変わると経営理念は変わります。その点、企業理念は経営者が変わっても変化しません。

そして、企業理念は、この後説明するパーパス(存在意義)の土台になる部分となります。

Visionを作成する際に、最初に考えるべきコアバリューと企業理念について、700字から800字以内くらいで書けるように準備するとよいでしょう。それぐらいの分量があれば、さまざまな形で短縮バージョンなどを用意できると思います。

▼▼ パーパス(存在意義)

パーパス(Purpose)は、100年は変わることのないもの。つまり、あなたの事業が存在する根本的理由を言います。

パーパスは、2019年に米国トップ企業が所属する財界ロビー団体「ビジネス・ラウンドテーブル」が、「企業のパーパスに関する宣言」を発表したのをきっかけに注目され始めました。

宣言では、行き過ぎた株主資本主義を否定し、代わりに全てのステークホルダーへの配慮を目指す「ステークホルダー資本主義」への転換を表明したことが画期的なことでした。

How To STARTUP
久野孝稔
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科
(SFC)特任助教/シミックホールディングス株式会社CEOオフィスExternal Innovation担当部長/株式会社NERV代表取締役
1976年茨城県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、1999年に茨城県庁に入庁し筑波研究学園都市のスタートアップ産業政策を担当。31歳の時に筑波大学発スタートアップのCYBERDYNE株式会社に転職し、初代営業部長、初代広報戦略部長など要職を歴任。2012年に身体機能を改善するロボットスーツ®️の価値を世に広げるため、麻痺などの後遺症に悩む方をケアするトレーニングセンターを企画。企画から1年後、国内に運営会社を社内起業で一度に複数立ち上げる。自身は湘南ロボケアセンター株式会社を設立後、代表取締役に就任。その後、武田薬品工業株式会社に転職して日本最大級の創薬エコシステム「湘南ヘルスイノベーションパーク」を立ち上げた。さらに、エコシステムを成長させるためにグローバル製薬企業の視点から日本を見る必要があると考え、スイスのメガファーマであるノバルティスファーマの医療政策部長などを経て現在に至る。日本公共政策学会会員。マサチューセッツ工科大学VMSコース修了者(日本初)。

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