2022年以降、頻繁に聞く言葉が「円安」だ。輸出企業の業績を押し上げる一方、原材料の輸入価格を上昇させることから、プラスとマイナスの両面で注目されている。円安基調は長らく続いたものの、円高に振れる場面もあった。

こういった為替の動きを考慮・予測しながら投資・資産運用を行う際に役立つ手法が、テクニカル分析とファンダメンタルズ分析だ。本記事では、主にファンダメンタルズ分析にフォーカスを当て、動きの大きな為替相場を分析する方法を紹介する。

為替相場の2つの分析方法

為替相場の「ファンダメンタルズ分析」、具体的にどうやってするの ?
(画像=Mediaparts / stock.adobe.com)

為替相場を分析する手法には、大きく分けてテクニカル分析とファンダメンタルズ分析がある。

テクニカル分析

テクニカル分析とは、日々の価格推移をグラフ化した「チャート」などを用い、その先の値動きを予測するものだ。

設定された時間内の高値と安値を結んだ「ローソク足」を基本に、一定期間の平均価格を示す「移動平均線」や想定される値幅を数段階で示す「ボリンジャーバンド」などを組み合わせ、現状の価格が高いか安いか、そして将来はどうなるか、を分析する。

テクニカル分析は長年にわたり研究された結果、さまざまな法則が見出されている。チャートの形は個人投資家や機関投資家の取引実績の結果であり、投資家心理の塊と言える。つまり、テクニカル分析は投資家の心理的な機微を読み取って先行きを見極めようとする方法だ。

ファンダメンタルズ分析

一方、ファンダメンタルズ分析とは、各種の統計指標を基に現状の価格が高いか安いかを判断しようとする方法のことだ。企業の株価であれば業績や財務状況を分析し、為替であれば対象国の経済状況や政策を見て通貨の価値を見極める。

テクニカル分析は投資家心理を基にした価格の値動きから予測するのに対し、ファンダメンタルズ分析はより広く外的なデータから適正価格を考える手法ということになる。

ファンダメンタルズ分析の指標

ファンダメンタルズ分析を行う際の指標としては、次の4つが挙げられる。

経済指標

最も注視すべきは、各国の中央銀行が定期的に発表している経済指標だ。経済成長率や物価上昇率、財政支出などが、それに当たる。

これらはマスコミが報道するほか、発表日時はあらかじめアナウンスされているので、予定日時に中央銀行 (国内なら日本銀行) のホームページで資料を見ることができる。

政策・政情

為替を決定づける要素の一つに金利がある。

リスクが高い傾向がある新興国通貨を除いて、金利が高い国の通貨は投資家にとって魅力的だ。そのため、2022年以降のように米国が政策金利を引き上げ日本が低位で据え置くという状況では、資金がドルに流れて「円安ドル高」が進行するということになる。

また、ある国で政情不安が高まれば、その国の通貨の価値は下落するのが普通だ。そうなると、自国は何も変わっていなくても、相対的に自国通貨の価値が上がることもある。

政策金利も、ほかの指標と同様に日銀や米国のFRB (連邦準備制度理事会) といった中央銀行が会見などで公表する。国によっては会見要旨や会見動画をホームページで公開するため、言語の問題はあるがチェックしてみるのもよいだろう。

基礎情報・地政学リスク

各国の基礎情報や地政学リスクも指標の一つだ。二国間関係や地域的な問題により、外交面やエネルギー政策面などで将来的に起きそうな不安がある場合、通貨の価値は上昇しにくい。

ただ、そうした情報は遠く離れた日本ではなかなか得られないものだ。報道経由の2次情報がメインになるが、例えば外務省のホームページなどで、その国の現状に関する情報を参照する方法もある。

要人発言

ここまでは、主に現在や過去に起こった事実や数値が指標となっている。一方、将来を占う上で重要な材料として、要人の発言という定性的な情報もある。

これは中央銀行の幹部や日本で言う財務大臣などが、国際会議や記者会見の席で発した言葉のことで、そうした一国の経済の行く末に影響力や決定権を持つ人が、現状をどのように認識し、これからどんな政策を打とうとしているかを窺い知ることができる。

ただし、1次情報に触れるのは難しいため、ニュースをこまめにチェックすることが大切だ。

情報源に「SNS」は要注意

近年は手軽な情報の取得方法として、SNSの存在感が増している。TwitterやFacebookでは経済情報や投資情報を専門に発信しているアカウントが多数あるほか、匿名の個人がこのような情報を発信している場合もある。

ただ、SNSの情報は玉石混交で真実ではないものも含まれるため注意が必要だ。少なくとも、SNSでたまたま目にした情報だけを信じて投資するようなことは避けるべきだろう。

「データ」だからこそ、自分なりに解釈を

そもそも、経済や金融に関するデータというのは、見る人によって解釈が異なるのが当然だ。もちろん「コンセンサス」と呼ばれる市場の想定値はあるものの、それは専門家の見方の集合に過ぎない。つまり、コンセンサスから実際に世の中がどう反応するかは断定できないのだ。

だからこそ「投資は自己責任」という原則に立ち返り、可能な限り信頼のおける最新情報を取得し、その意味を自分で考えるファンダメンタルズ分析に意味がある。「価格は価値に従う」とも言われるが、現実の価値はどれぐらいなのか、データを自分なりに解釈してから大切な資金を投じることが重要だ。

(提供:大和ネクスト銀行


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