1つの財務諸表では分からない黒字倒産のリスク

損益計算書や貸借対照表だけでは、黒字倒産のリスクを見極めることは難しい。

例えば、損益計算書はあくまで利益・損失のみをまとめた書類であり、その内容から資金の流れを読み解くことはできない。仮に売上高や営業利益が同じであっても、売上債権の割合が変わればキャッシュフローは全く違ったものになる。

貸借対照表についても、その内容から「どのような方法で資金調達をしたか」や「何にどれくらいの投資をしたか」は判断できない。資金繰りの穴埋めとして借入金を増やした企業と、設備投資のために融資を受けた企業とでは、黒字倒産のリスクは大きく変わるだろう。

中小企業が黒字倒産を防ぐには、複数の財務諸表を組み合わせて経営判断をすることが重要だ。

黒字倒産の回避法は? キャッシュフロー悪化を防ぐコツ

黒字倒産を回避するには、どのような対策が考えられるだろうか。以下ではキャッシュ不足を防ぐコツとして、3つのキャッシュフロー対策を紹介する。

財務三表を組み合わせて経営分析をする

財務三表とは、損益計算書や貸借対照表に「キャッシュフロー計算書」を加えた書類である。キャッシュフロー計算書は、前期からのキャッシュ増減を項目別にまとめた書類であり、資金の細かい流れを読み解くことができる。

これらの財務三表をどのように組み合わせるのか、以下で一例を紹介しよう。

損益計算書:損益分岐点を確認し、自社が目指す売上や利益の水準を明確にする。
貸借対照表:「資産・負債・純資産」のバランスから、大まかな財務状況を読み取る。
キャッシュフロー計算書:期初や期末の残高を比較し、キャッシュの出入りを確認する。

キャッシュフロー計算書には、損益計算書や貸借対照表を補足する役割がある。非上場企業に公開義務はないが、高度な経営分析のためにも毎年作成することが望ましい。

仕入れ調整で適正な在庫を心がける

過剰在庫や滞留在庫を防ぐために、仕入れ調整をすることも重要である。前述の通り、在庫は販売するまではキャッシュにならないので、常に適時適量を意識しておきたい。

近年では在庫状況を把握・管理する方法として、多くの企業が専用のツールを導入している。人的リソースやコストの節約にもつながるため、在庫管理システムなどの導入も検討してみよう。

入出金のタイミング調整でキャッシュを増やす

入出金のタイミング調整も、黒字倒産を回避する方法である。特に売上が安定している企業は、以下のような施策に取り組むだけでキャッシュフローの改善を期待できる。

<入出金のタイミング調整をする方法>
・売掛金の回収が遅れている取引先に連絡をする
・仕入れの時期をずらす
・融資元の銀行に支払い延長の交渉をする

銀行に対して交渉をする場合は、資金繰り表や返済計画書などの資料が求められる。「確実に返済できること」の証明が必要になるため、十分な情報提供ができるように万全の準備を整えておこう。