中小企業がキャッシュフロー経営を始める4ステップ
キャッシュフロー経営のメリットを最大化するには、正しい手順で経営手法を切り替えなければならない。単に手元資金を把握するだけではなく、改善に向けた施策や体制づくりも必要になるため、入念に計画を立てることが重要だ。
ここからは4つのステップに分けて、キャッシュフロー経営の始め方を解説する。
1.キャッシュフロー計算書(資金繰り表)を作成する
キャッシュフローの状況は、損益計算書や貸借対照表だけでは把握できない。資金の細かい流れを確認するには、「キャッシュフロー計算書」または「資金繰り表」の作成が必要になる。
キャッシュフロー計算書は、損益計算書や貸借対照表とともに「財務三表」に数えられる重要書類である。非上場企業には公開義務がないものの、細かい資金繰りを把握できることから、中小企業や個人事業主にも作成する意義があると言われている。
ただし、キャッシュフロー計算書には厳密なルールがあり、多くの項目を記載する必要があるため、手間を省きたい場合は簡易な資金繰り表でも構わない。いずれかの書類を作成し、自社のキャッシュフローを数値化することから始めよう。
2.実績資金繰り表からキャッシュフローの計画を立てる
現状のキャッシュフローを把握したら、次は過去のデータをもとに「実績資金繰り表」
を作成する。
<実績資金繰り表の作成手順>
1.手元に現金出納帳と預金出納帳を用意する
2.実際の取引データをもとに、直近3年間の資金繰り表を年単位で作成する
3.直近1年分については、月単位の資金繰り表を作成する
実績資金繰り表を作成すると、「毎月どのくらいの支出があるか」や「どれくらいキャッシュが入るか」を視覚化できるため、この情報をもとに将来の計画を立てていく。もし営業キャッシュフロー(※)がマイナスになりそうな場合は、月別に目標や改善計画を立てることが必要だ。
なお、実績資金繰り表に決められた形式・ルールはないため、自社が使いやすいフォーマットを探してみよう。
(※)会社の本業によって生じるキャッシュフローのこと。
3.余計な経費や在庫を減らす
支出を抑える施策としては、経費や在庫を減らす方法が有効である。
余計な経費については、直近数年分の資金繰り表を確認すると見つけやすい。また、生産フローや労務環境の見直しで削減できるコストも多いため、会社のスリム化や業務効率化を進めることも重要だ。
在庫対策では、しばらく売れ残っている不良在庫や、管理コストがかさむ在庫に注目したい。適切な在庫処理が難しい場合は、専用ツール(在庫管理システムなど)の導入も検討しよう。
4.入出金サイトを調整する
資金繰りの改善では、「入出金サイトの調整」もポイントになる。長期的なキャッシュ増減は変わらないが、売掛金などの回収サイトを短縮し、仕入れなどの支払いサイトを延長すれば、手元資金が多い時期を増やせるはずだ。
具体的にどのような対策があるのか、以下で一例を紹介しよう。
入出金サイトは自社だけでの調整が難しく、基本的には取引先との交渉が必要になる。強引に進めると関係が悪化しかねないため、相手側の条件も聞き入れなければならない。
また、金融機関に返済のリスケジュールを依頼する場合は、損益計画書や経営改善計画書などの資料が求められる。信用をできるだけ下げないように、万全の準備を整えてから申し込むことを意識しよう。