キャッシュフロー経営にデメリットはある? 3つの問題点
一方で、キャッシュフロー経営にはデメリットや問題点もある。成長性を損なうケースもあるため、従来経営とのバランスを取ることが重要だ。
<キャッシュフロー経営のデメリットや問題点>
・将来への投資が制限される
・過度な資産処分(リストラを含む)につながる恐れがある
・インフレ時は不利な状況になる
手元資金を重視するキャッシュフロー経営では、営業活動で生じたキャッシュフローの範囲内で投資をすることが原則になる。思い切った投資は難しくなるため、タイミング次第では深刻な機会損失につながるかもしれない。
また、手元資金を重視しすぎると、さまざまな経営リソースを手放すことになるだろう。その中に人的資源が含まれる(=リストラをする)場合は、社員のモチベーションや会社の評判が下がることも考えられる。
キャッシュフロー経営が必要な中小企業
キャッシュフロー経営にはデメリットや問題点もあるため、全ての企業に向いているわけではない。中小企業にも、従来の経営手法が適している企業は多く存在している。
では、上記のメリットとデメリットを踏まえると、キャッシュフロー経営はどのような企業に適した手法と言えるだろうか。
スタートアップ企業
創業して間もないスタートアップ企業は、売上や入出金サイトが不安定になりやすい。融資審査のハードルも高いので、日頃からキャッシュを守るための工夫が必要になる。
以下では一例として、スタートアップ企業の資金繰り対策を紹介しよう。
<スタートアップ企業の施策例>
・料金を前払いしてもらえる契約を結ぶ
・売上債権の回収は当初から厳しく管理する
・支払い時には後払いの契約を結ぶ
支払いを遅らせる方法としては、法人クレジットカードの活用も有効だ。クレジットカードを使うと、支払日を1ヵ月~2ヵ月遅らせることができ、支払額に応じたポイントも貯められる。
法人カードの審査が通らない場合は、経営者個人のクレジットカードを使うことも考えたい。ただし、支払いが遅れると信用を著しく損なうため、使った金額や支払日はしっかりと確認しておこう。
入出金サイトや資金繰りが不安定な企業
入出金サイトや資金繰りが不安定な企業も、キャッシュフロー経営に取り組む意義がある。具体例としては、売上債権の回収が遅れやすい企業や、時期によって仕入れのタイミングが変わる企業などが挙げられる。
実際にどのような資金繰り対策が考えられるか、いくつか例を紹介しよう。
<資金繰り対策の例>
・不良在庫を処分する
・仕入れを調整して過剰在庫を防ぐ
・売上のタイミングを調整する
・借入金返済のリスケジュールを交渉する
・追加で融資を受ける
スタートアップ企業に比べると、起業から数年が経った企業には多くの選択肢がある。取引先や金融機関との交渉も含めて、できるだけ手元資金を増やすための施策を考えてみよう。
大きな支出が多い企業
潤沢な資金があっても、会社から出ていくキャッシュが多いと経営は不安定になる。そのため、大きな仕入れや投資が多い企業も、キャッシュフロー経営で資金繰りを管理することが必要だ。
ただし、営業利益を生み出す投資や、手元のキャッシュを増やす投資はそのまま続けることが望ましい。将来的な効果をしっかりと予測し、「続ける投資」と「控える投資」を慎重に見極めよう。