こんにちは。

以前漢 方バブル?酒バブル!?〜中国の規制強化加速と富裕層の特殊な投資事情〜 を書かせて頂いた中国人のS.Sです。

今回の記事では、昨月話題となった 中国人のおばさんによる金投資の例 をご紹介しつつ、中国人はなぜ金が好きなのかというテーマでお届けしたいと思います。

参考: 新興国の富裕層増大により活性化〜嗜好品投資の世界〜


◉中国人の不可解な投資行動


米国のニューヨーク証券取引所の金の先物取引価格が4月に強気市場と弱気市場の分岐点を割り込むと、機関投資家は相次いで金の空売りを表明し、金市場の大暴落を予測する声さえ出始めました。ところがその後、金価格は奇跡的に落ち着きをみせます。

これについて各種調査では、中国市場の人々のパワー、通称「中国のおばさん」が、丸飲みするかのごとく市場で大量の金を買ったことが主な原因だと言われています。
その買付けのエネルギーは凄まじく、多いときは10日で300トンの金の購入が行われました(ちなみに、中国の工業・情報化部(工業・情報化省)のまとめた統計によると、中国は世界一の金生産国なのですが、その年間生産量が360トン前後です)。

ニュースサイトのオーストリアン・タイムズの報道によると、中国黄金協会はこのほど、金価格が下がると中国人の金購入の意欲が高まり、金販売量が通常の5倍の水準に跳ね上がるとまで述べたそうです。また、上海金取引所での取引量は4月19日が30.4トン、22日が43.3トンで、今年2月18日に更新した22.0トンの記録を大幅に塗り替えています。

なぜ金の価格が下落したのに、「中国のおばさん」たちは大量に金を買い込みに出たのでしょうか。典型的な中国人の投資行動であれば、価格が下落したら、できるだけ早く売るのが一般的な常識です。
この不可解な現象の背景には何があるのでしょうか。


◉中国人は文化的に金に思い入れを持つ


ここでまず、とあるエピソードをご紹介させてください。

1950年代、ある中国の家庭は大変に貧しい環境で生活していました。それは未来への希望と生き続けていく勇気すらも失うほどのものであったそうです。
ある日、一族で一番年配のお婆さんは家庭会議を開き、慎重にベッドの下から一つの箱を取って家族の前に開けました。中には、一つの金の塊が入っています。
彼女はおもむろに家族に語り出しました。

「この金の塊は自分が結婚する時、旦那様のお母さんから貰ったものです。旦那様のお母さんの先祖は大きな官僚だったのです。そして、このブロックは先祖代々受け継いできたものです。」

「これを売ったら、みんな幸せな生活が過ごせるだろう。」と家族の一人が述べます。
しかし、彼女は「ダメ、これが売っちゃダメ。私が死んだらこれはあなた達のものになるわ。」と返しました。

最後に、お婆さんは飢えに耐え切れず、亡くなってしまいます。しかし金の塊は売り出さず残ったままでした。

このようなエピソードは、昔の中国を見ると決して珍しいことではありません。
中国人にとって、金は投資商品ではなく、持ち主が永遠に自宅で守り続ける収蔵品であり、また世代を超えて新婦や新生児への贈り物として後代に伝承するものなのです。