本記事は、北 宏志氏の著書『新しい教え方の教科書』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

ビジネスミーティング
(画像=metamorworks / stock.adobe.com)

Z世代が働きたい職場の3つの条件とは

私が感じる条件の1つ目は「細かく丁寧な指導」がなされる職場です。コスパ、タイパを求める彼らに「まずは自分で考えてやってみて」はNG。そう言われてやってみたのに、失敗する、後から訂正されるというプロセスは、Z世代にとってはまさに〝無駄〞、彼らのやる気をそぐことにしかつながりません。

Z世代が求めているのは、最も効率的な正解、無駄のないプロセスなのです。そこで重要なのが、マネジメント側が一度明確な正解を示し、それができるようになるまで丁寧に指導していくこと。Z世代は適切な方法論を学び、求められている結果を理解すれば、素晴らしいパフォーマンスが発揮できる、自分がいるべき職場だと感じてくれるでしょう。

条件の2つ目は「風通しが良い」ことではないでしょうか。これは、Z世代にかかわらず、誰もが求めることではありますが、ことZ世代には、その傾向が強いように思います。

はき違えてはいけないのは、風通しが良いことと仲が良いことは違うという点です。彼らは何も皆仲良しな環境を求めているわけではなく、もちろん飲みニケーションが横行している職場が働きやすいと考えているわけでもありません。

Z世代が求めているのは、自分の意見をきちんと主張できる、上司からの命令で動くのではなく、話し合うことができる、年齢にかかわらず、正しいことを言え、それが採用される、そんな環境なのです。

それを実現させるために重要なのは、ここでも上司側のサポートです。意見を主張できる環境だからと言って、全てをZ世代の言うがままにしておくことはできません。また、Z世代に気を遣うあまり、一方の意見を積極的に採用し、正しい判断軸をぶらしてもいけません。

マネジメント層が適切なタイミングで、適切な指導や教育を行ってこそ、Z世代が望むような風通しの良さを生み出すことができるのです。

条件の3つ目は「福利厚生の充実」です。突然、やけに現実的ですね。そう、コスパやタイパを重視するZ世代はとても現実的。〝陽の目を見なくても、コツコツやっていればいつかは……〞なんていうロマンを持つことは少ないのです。

今、自分が過ごす場所が快適か、自分に見合った見返りが受けられているか。彼らは冷静に観察しています。その表れの1つが福利厚生。たしかに最近では、各種手当が揃っていることは大前提、その上で、プライベートで利用できる施設の利用権や、食事やアルコールが無料提供されるオフィスまであるようです。

昭和世代からすると、〝意味が分からない〞ことかもしれませんが、これも時代と思い、理解してください。彼らが求めているのは、安定した生活なのですから。

では、お給料の面でも彼らはシビアな視点を持っているのでしょうか?

Z世代は給料より、成長させてくれる上司や休暇を求めている

もちろん、お給料は安いよりは高い方が良いのは当然です。一方で、私が普段接するZ世代たちは、それ以外のものを求めている場合が多いのも、彼らならではの特徴の1つだと感じています。

ここからは、私がこれまで行ったZ世代との1on1の中で、印象的だった言葉を紹介させていただきます。

中小企業で営業職を務めるAさんは「この会社にずっといるわけではない」と前置きしつつ、「せっかくだからここにいる間に、営業として成長したい。それをサポートしてくれる上司がいる間は頑張って働く」と話してくれました。

〝せっかくだから〞という点にコスパ、タイパを求める世代感が表れていますね。ただ日常をなんとなく過ごすのではなく、身に付けられるものは身に付けておきたいということでしょう。

Aさんは運良く、自分が理想とする営業スタイルを持つ上司の下で着々と成長しています。でも、もしも運悪く、自分を成長させてくれない上司だったら……。

Aさんはきっとここは自分にふさわしい職場ではないと感じ、次のステップを模索することでしょう。

一方、大手企業の総合職であるBさんの発言も印象に残っている言葉の1つです。「会社のためだけに自分の時間を全て使うのは嫌だ。若いうちにたくさん旅行をして、いろいろな世界に触れたいので、きちんと休暇が取れる会社を選びました」。

これはこれで、彼らのタイパ感を感じられる発言です。そう、若い時にしかできないこともたくさんある。それはもちろん、仕事だけでなく、プライベートにおいても同様なのです。

だからこそBさんはきちんとプライベートな時間を確保できる仕事を選んだのでしょう。

彼らの言葉からは端々に、Z世代らしい価値観を感じることができます。何度も言いますが、これはマネジメント層世代とは大きく異なるもの。「何を考えているか分からない」のではなく、こちら側から歩み寄る、理解することが必要なのです。

新しい教え方の教科書
北 宏志(きた・こうじ)
(株)ポールスターコミュニケーションズ代表取締役
人材育成コンサルタント
大学卒業後、立命館大学に関係する中高一貫校で6年間社会科教諭として勤務。その後、「ララちゃんランドセル」を製造・販売する(株)羅羅屋に転職。中国での3年間の駐在中は経営幹部として部下80名を束ね、中国国内の売上を3年間で9.7倍に拡大させ黒字化させる。帰国後、日本とアジアの架け橋となり、教育をより良くしていきたいという思いから、人材育成コンサルタントとして独立。 現在は、Z世代の若手社員の研修を中心に全国35都道府県で600回以上の登壇実績を持ち、これまでの受講生は17,000名を超える。受講者にやる気スイッチを入れる熱血講師として定評があり、「研修業界の松岡修造」の異名を持つ。大手企業や各種団体から依頼される研修・セミナーのリピート率は90%を超える。離職率低下の実績も多数。

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