本記事は、北 宏志氏の著書『新しい教え方の教科書』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

怒る上司・パワハラ・オフィス
(画像=naka / stock.adobe.com)

令和は多様性の時代、個性を尊重できない上司は今どき部下に失望される

ここからはいよいよ本題、彼らを指導・教育し成長させていくためにすべきことについてお話ししていきます。

教え育てることのスタートラインは、令和だからと言って大きく変化するわけではありません。第一歩はいつでも、関係性づくりから。良い関係性を持ててこそ、次のステップに入れるのです。

ここで皆さん、かつて社会人になりたてだった頃の自分や同僚たちを思い出してみてください。

男性の場合は、ダークカラーのスーツに白いシャツ、ヘアスタイルは黒髪短髪の人がほとんどだったのではないでしょうか。女性の場合、就職活動時には、最近でも良く話題に上るベージュのトレンチコートがお決まりのスタイルでしたね。

私の周りでも「少し明るい色のシャツを着て行ったら、上司から『今日は派手だな、社会人は白シャツだろう』と言われた」なんていう話を耳にすることがよくありました。

では今はどうでしょうか。もちろん最低限のTPOはあるものの、若手社員の服装やヘアスタイルも随分と自由になってきていますね。

これは何も見た目だけの話ではありません。

令和は多様性の時代です。国籍や性別などといった大きな枠組みだけでなく、個人のスタイルや考え方も多様であるのが当たり前という考え方が主流になっています。

社会人だから白シャツといったような固定観念も、この時代には当てはまらなくなってきている、あるいは〝この考えは、旧来の固定観念ではないか〞と改めて考え直さなくてはならない時代なのです。

多様性と言うと、とても大きな概念のように捉えられてしまうかもしれませんが、分かりやすく言えば、個性。誰もが持つ個性を発揮することが当たり前の世界が来ているということを、我々はしっかりと認識しなくてはいけません。

これは会社においても、同じです。上司が自分の固定観念で、部下である若者たちを締め付けてしまえば、彼らはそんな上司や会社に失望してしまいます。Z世代の若者たちと良好な関係性を構築するためにはまず、彼らの個性を理解、尊重し、認めることが大前提だと、肝に銘じましょう。

のんびり見えて「隠れ負けず嫌い」なZ世代、「みんなやってきたから」の比較はNG

個性を重視し、自己実現を目指すZ世代と言うと、〝あまり他者のことを気にしない〞というイメージを持ちがちです。

しかし私は、彼らは「隠れ負けず嫌い」 なのではないかと考えています。他者を気にせず、自分のペースで物事を進めているように見えて、実は我々が思っている以上に、他者と比べられたくない、負けたくないという意識が働いているのが、Z世代の若者たちなのです。

そんな彼らと良い関係を結ぶために必要なのが、不用意に他者との比較をするような発言をしないこと。その一例が「みんなやってきたから」という言葉です。よく使っているという自覚がある人も多いのではないでしょうか。

なぜ新入社員は朝早く出社するのか?「みんなやってきたから」。この書類はどうしてつくらなくてはいけないのか?「みんなやってきたから」。

Z世代の若者からすると、この言葉は、上司や先輩、同僚が当たり前のようにやっていることだから、〝あなたも当然やるべきでしょう〞というニュアンスに聞こえてしまいます。

仕事の目的や意味を理解することに重きを置いているZ世代にとって、他者がやってきたことだからという理由で、疑いなく発生する物事は理解不能、指示を出す上司への不信感にもつながってしまうかもしれません。

改めてお伝えします。Z世代は目的や意味を重視します。「何のためにそれをやるのか」という目的を伝えないとZ世代は動かないのです。

新入社員が朝早く出社をするのは、「みんなやってきたから」ではなく、出社してくる人に挨拶をし、より多くの職場の人とコミュニケーションを取るため。

マネジメント層はそこに本来ある意図をきちんと説明する癖を付けるべき時がやってきたのです。

新しい教え方の教科書
北 宏志(きた・こうじ)
(株)ポールスターコミュニケーションズ代表取締役
人材育成コンサルタント
大学卒業後、立命館大学に関係する中高一貫校で6年間社会科教諭として勤務。その後、「ララちゃんランドセル」を製造・販売する(株)羅羅屋に転職。中国での3年間の駐在中は経営幹部として部下80名を束ね、中国国内の売上を3年間で9.7倍に拡大させ黒字化させる。帰国後、日本とアジアの架け橋となり、教育をより良くしていきたいという思いから、人材育成コンサルタントとして独立。 現在は、Z世代の若手社員の研修を中心に全国35都道府県で600回以上の登壇実績を持ち、これまでの受講生は17,000名を超える。受講者にやる気スイッチを入れる熱血講師として定評があり、「研修業界の松岡修造」の異名を持つ。大手企業や各種団体から依頼される研修・セミナーのリピート率は90%を超える。離職率低下の実績も多数。

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