ski-run-237600_1280

ビジット・ジャパン(VJ)地方連携事業というものがある。これは、国と地方(自治体、観光関係団体、および民間企業等)が、広域に連携して取り組む訪日プロモーション事業のことだ。ポイントは、従来よりも広域な連携を通じて事業規模を拡大し、プロモーション効率・効果を大幅に向上させ、最終的に滞在日数の長い外国人旅行者のニーズに対応した誘客を実現することだ。

例えば、北海道ブロックの戦略は、まずオフピーク期である春・秋の観光魅力を掘り起こして、観光客数の平準化を図ること、次に広大な北海道の中の様々な地域の魅力を発信することで、北海道全体にあまねく観光産業の恩恵を届けること、第三に他産業との連携による相乗効果で、高品質・高付加価値化を図ることにある。

近年、国内総人口が減るにつれ、日本人の国内旅行者も減少していく可能性が高い。観光消費は、飲食から娯楽、民芸品など工芸まで雇用創出効果が高く、観光振興が地域の雇用拡大につながると期待している地方も多い。期待されるのは、2013年に1,000万人の大台を突破した訪日外国人客数だ。今回は、海外から観光客を呼び込みたい北海道の観光戦略を詳しく見ていきたい。


北海道は、どう他の日本の観光地と差別化していくか

北海道全体が世界の人々の憧れの観光地となるように、海外の観光客に対して北海道ブランドを確立していくための努力を見ていこう。北海道の魅力といえば、夏はグリーンシーズンの景観と各地域の食を満喫できるドライブ観光を、 冬なら世界最高レベルのパウダースノーが、定番だ。

しかし、広域観光連携では、シーズンごとに上下が激しい観光客数の平準化のために、春・秋の観光魅力の掘り起こしにも注力している。例えば、4月でも「雪」を楽しめる北海道の利を生かし、本州と連携して桜と雪をテーマにした旅行ルートを提案できる。5月からは広大な花畑、梅雨のない爽やかな6月、9月からは日本一早い紅葉といった具合に、豊かな自然と本州との気候・季節を売りに、まず他の日本の観光地との差別化を図っている。東京や京都など、北海道よりもはるかに交通のアクセスがよいメジャーな観光地に負けないためだ。


北海道の海外向け情報発信戦略

北海道及び札幌市はインターネットでの情報発信といった努力をしている。そこでは、北海道の自然・食はもちろん、一時は 東日本大震災後の原発事故に起因した風評被害にも苦しんだ経緯から、 北海道の放射線数値まで毎日更新されているように、膨大な量の情報が集積されている。オンラインの情報サイトを充実させることが、直接的に集客を左右しているためだ。日本に関する情報やニュースの入手方法として、SNSを含むインターネットの利用は、テレビや新聞を遥かに上回り、90.3%もの割合を占めていることが明らかになっている。

特に観光の計画段階では、インターネットで格安航空券や宿泊プランを予約する人が最も多い。しかし、いくら日本では有名な観光地である北海道といえど、海外での知名度はまだ低い現状を、どのように打開するのか。


海外スキー場と張り合うまでになった、パウダースノーの町「ニセコ」

札幌・函館などに観光客が集中しがちなことは、北海道観光業界の悩みの一つだが、それを打ち破る成功事例が、北海道西部の倶知安(くっちゃん)だ。蝦夷富士と呼ばれる羊蹄山のもとの、上質なパウダースノーで有名なリゾート地区「ニセコ」にアジア系の観光客が目を向けている。

ニセコのブームが始まったのは、季節が日本と逆の南半球のオーストラリア人がスキーに来たことがきっかけだ。そのトレンドは、2001年のアメリカ同時多発テロ事件以降、これまでカナダ、アメリカ、ヨーロッパへのスキー旅行を考えていた旅行客が、治安も安全な日本を選ぶようになったことで拍車がかかり、さらに経済成長著しいアジアからも富裕層が訪れるようになった。その結果今では、ニセコは、アメリカ・ カナダ・ スイスなどの海外の有名スキー場と張り合う存在までになっている。

日本人のスキー客は、1泊2食付きのペンションに3~4泊滞在というのが一般的だがが、外国人スキー客は、コンドミニアム等に2週間以上の長期滞在することが多い。そのような観光客は、地元のレストランや店での食事や買い物を通して、地元にお金を落としてくれる。


北海道の海外からの観光集客は、日本トップレベル

訪日観光の1割の115万人は北海道に来ること、訪日観光客の7割は距離的にも近いアジアから来ている事実を考えれば、アジアでのPRを手厚くすることは当然だ。実際すでに、今後の経済成長が見込める中国・タイ・インドネシア・マレーシア・シンガポール市場などでは、旅行パッケージの販売や情報発信をしている。 特に、現在中国人の団体観光ビザ発給対象は4億人、海外旅行者は4000万人を突破し、訪日客は120万人を突破している。中国の経済成長に伴い、中間層が今後より一層分厚くなることが期待されるため、中国人向けのPRやサービス改善は重要だ。

また、札幌など中心地だけでなく地方の魅力も強調することで、海外からの観光客のリピーターを促している。さらに、日本と海外の観光ピークのズレに目をつけて、東南アジアの休暇やスクールホリデーの旅行シーズンに合わせたPRにも力を入れている。その成果もあって、アジア諸国での調査では、日本で行きたい場所のトップ3に、北海道は常にランクインしているうえ、台湾からの客の75%はリピーターと観光業界内でも驚異的な数字を誇っている。

状況は違えど、不振にあえぐ日本各地の観光地が北海道に見習うべきところは多いのではないか。

(提供:不動産 online)

【関連記事】
中国の富裕層増加により獲得激化…日本・オーストラリアの取り組み
財政難アトレティコの救世主?中国の不動産王『ワン・ジェンリン』
投資物件の取得は東京23区で 押さえておきたい3つのポイント
楽天本社移転先...住環境が改善中の二子玉川の魅力とは?
好景気で踊る不動産市場、富裕層が購入するべき物件とは?