スピードとコミュニケーションが改善

M&A後の変化は

前田社長 変わったことは二つあります。一つはスピード感です。以前から私なりに速度を上げて進めていましたが、昨年9月末に株式譲渡が終わって新生イノダコーヒになってからは、ギアがさらに二つか三つぐらい上がりました。一部の社員は驚きと不安を持っていましたが、そこはなぜスピード感を持ってやらなければならないのか。やる目的と意義をきっちりと説明していただけたこともあり、うまくいっていると感じています。

もう一つはコミュニケーションが取れるようになったことです。以前はどちらかというとトップダウンで物事が決まるケースが多く、納得感のない中で業務が進んでいました。うまくいっている時はいいのですが、失敗した時に中途半端な責任しか取らないようない状況があり、あまりいい環境ではありませんでした。

これがファンドさんからイノダに入ってきていただいたメンバーの方が、我々と同じ目線で対等に話をしてくださり、私を含めた取締役の発言内容が次第に変わり、行動も変わっていきました。この部分は比較的短期間で成長できたと思っています。外部の方が言うことはよく聞くという家庭教師と同じような状況だと思っています。

赤荻常務 まずは業務執行のスピードです。厳しい環境でやっていくためには、スピードが大事ですので、ここは我々が促進するような形で補佐させていただきました。PDCAサイクルを回して、うまくいかないようであれば、修正するということを今やっています。こうしたサイクルができつつあります。

また、経営の重要な数値の見える化を行っており、経営の指標に基づいて何を実行しなければならないのかを経営幹部が共有して、まさに自分事としてやっていくような意識が浸透してきたのではないかと思います。

今後の展望は

前田社長 とにかく企業価値を上げることです。価値というのは売り上げです。売り上げを増やす一つの手段は今まで以上にイノダコーヒをアピールすることです。その一つがホームページと、オンラインショップの充実です。今のホームページは真面目な感じですので、初めての方にどんな商品なのだろうか、買ってみようかと思ってもらえるようなホームページにしたいと思います。もう一つは改装中の三条支店です。2024年秋にはリニューアルオープンする予定で、今一生懸命やっています。存続が議論になったカウンターテーブルは残すことになりました。

新しい商品もあります。これは久方ぶりにイノダコーヒの定番商品に育て上げたいと思っているもので「イパネマの瑠璃」といいます。今までのイノダコーヒは非常に濃く焙煎をしており、しっかりとした味わいが特徴ですが、今回はすっきりとした味に仕上げています。パッケージも瑠璃色にしてイメージを変えています。これを一生懸命に育て上げようと考えています。店舗についても現在は9店舗ですが、ピーク時は13店舗ありましたので、同じくらいの数にはしていきたいと考えています。

赤荻常務 イノダのブランドをしっかり残していくことが一番大事だと思っています。三条支店のカウンターテーブルの件がありましたけど、お客様がそれを期待されているという声を随分聞きましたので、それに沿った形でやっていただきたいと思っています。

これからM&Aを検討される方に一言

前田社長 今回はファンドさんにお願いしましたが、なぜファンドなのかというと、私のやりたいことを補っていただけるのではないかと思ったからです。その期間は3、4年か、4、5年だと思っています。その先、ファンドさんがエクジットするわけですけども、その時はまたイノダコーヒのことを愛してくれて、お店のことが好きだと言ってくれる事業会社様やファンド様などに委ねられれば、社員も安心するのではないかなと思っています。

赤荻常務 M&Aはゴールに至るまでの、デューデリジェンスや相互理解、対話などが大事だと思っています。我々は会社をご支援したいという思いでお話をさせていただきますが、会社を売却されたい方の思いも当然ありまし、譲渡価格の問題もあります。時間をかけて、しっかり丁寧にすり合わせをしていくのが非常に大事だと思っています。

文:M&A Online