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再生医療ビジネスの今後の展開にさらなる弾み

医療費を決める健康保険制度や診療報酬の改定を行う厚生労働省の諮問機関である中央医療審(中医協)は11月5日、条件・期限付きで承認された再生医療を健康保険に組み入れることを決めた。健康保険への組み入れは再生医療の普及をさらに後押しするもので、京都大学・iPS細胞研究センターの山中伸弥教授のノーベル医学・生理学賞の受賞等で広く認知されるようになった再生医療ビジネスにさらに弾みがつきそうだ。


制度の整備も進む再生医療

中医協による健康保険・診療報酬制度への新たな治療法の組み入れは、普及を後押しするとともに、該当する治療法にお墨付きを与える。さらには、健康保険や診療報酬へ組み入れられた治療に必要な医療機器を提供する企業の株価にも大きく影響する。富士フイルムの子会社化であるジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC) < 7774 >の株価も、同社の人口皮膚『ジョイス』が健康保険に組み入れられるとの報道を受けて、約3倍に跳ね上がった経緯もある。

今回、中医協で認められたのは、あくまでも条件・期限付きの再生医療への保険適用。販売先を専門的な技術や知識、施設のある医療機関に限定したり、原則7年程度の期限を区切って適用を認める方針だ。


民間でも進む再生医療ビジネスの新展開

再生医療ビジネスについては、新たな展開が加速しており、民間サイドでも取り組みが活発化している。J-TECは設立から関わった富士フイルム< 4901 > が子会社化。同社での再生医療関連の研究・開発をさらなる推進が図られている。具体的には自家培養角膜上皮の治験が進められており、安全面に問題ないことが確実になれば製品化される見通しだ。

医療機器大手のテルモ< 4543 >は心不全への再生医療を用いて作った筋肉細胞のシートを用いた治療のための、細胞シート生産事業も着々と進めている。太腿から取り出した筋肉組織を培養し、シート化。心臓へ移植することで心不全の治療を図るが、筋肉組織の細胞シートを再生医療等の製品として、厚生労働省に製造販売承認申請を行ったことを10月31日付で同社が明らかにした。

テルモの心筋再生医療については、2007年に開発がスタート。NEDOや大阪大学と再生医療分野で共同開発を進めて、臨床研究を進めている。同社によれば、先端医療開発特区『スーパー特区』の『細胞シートによる再生医療実現プロジェクト』にも加わり、治験を進めている状況にあるという。

ほかにも、今後のさらなる発展が期待される再生医療の例としては、患者の細胞から軟骨を培養し、欠損した部位に移植する軟骨再生製品や、ウイルスに先天的に欠落した遺伝子を持たせて患者に投与することで遺伝病を治療する遺伝性疾患治療製品などにも注目が集まる。


癌治療などで進む、再生医療の治験

また、人体に侵入した細菌に対抗する免疫を高める物質や癌に対抗できるペプチドを含む細胞により癌免疫を高める再生医療もある。同治療法については、タカラバイオ< 4974 >が『MAGE-A4抗原特異的TCR遺伝子導入リンパ球/TBI-1201』として、実現前に安全性を証明するために行われる実地試験である治験を進めている。同社の治験については、今年3月に開始されてはいるものの、2016年3月までを目途に行われる予定。治験の終了と保険適用の申請まではまだ期間があるとみられるが、再生医療製品の事業化の一例として今後の展開に期待がかかる。

他の医療資材や医療機器と同様に、販売に厚労省の許可が必要となる再生医療等製品も同様で、今回の申請が承認されれば、事業化へのハードルをさらに一つクリアしたことになる。

(ZUU online)

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