名古屋のスタートアップの課題は「人」

―人づくりについて

藤田 起業家が増えるようになったのに、ベンチャーキャピタリストは増えていない。みな経験者を採用するから、(人が育たず)パイが足りなくなる。スタートアップにお金は出せるが、投資した後にどう伸ばせるか、「その先」ができない。

安藤 成長投資戦略室は、前身の組織が2人で始まり現在8人ほど。私はプロパーだが、足りないピースを埋めるため、そのたびに外部から採用している。

柴山 「STATION Ai」は、行政だけでは絶対にできないので、産学官のプレイヤーを巻き込んで、一緒に走っていた。スタートアップのエコシステムはどんどん生まれているものの、生まれた後に出口戦略までアドバイス、支援する人材が育っていない。メンターというか、我々は「STATION Ai」入居者にはリーンスタートアップを教えているが、そういうことができる人が育っていない。

―名古屋、愛知のスタートアップエコシステムの実情について

藤田 まだまだ五合目。足りないのはマインドセット。愛知県は(製造業などで)潤っている県なので、今すぐは困らない。ご家庭のご両親も学校の先生も、危機感は特にない。自分の子供が「スタートアップやる」といわれて「よしやれ!」というマインドセットになっていない。それでもスタートアップが育ってきている。自動車産業に飛行機産業にプラスして、起業する、という選択肢を増やしていかないといけない。

M&A Online

(画像=柴山政明・愛知県 経済産業局 経済産業推進監、「M&A Online」より引用)

安藤 マインドセットという面では、テレビ局も前から「このままでは…」という話があったのが、いよいよ(危機感が)足もとまで来ている。私たちの部署では新しい収益を生み出す仕事をしており、新規事業を積み上げてはいるが、(本業が)下がっていくスピードに追い付いていない。短期と、長期の収益を得る両方の観点があるが、テレビ局は、今そういうところに来ている。

柴山 私は5割の到達と考えている。スタートアップのエコシステムに、まだやれていないことがある。我々は市場そのものを開発して、そこにスタートアップが参加できるというものを、出口戦略に置き始めている。愛知県で革新創造計画を策定しているが、社会課題解決を、イノベーションで解決する。ブルーオーシャンの新しい市場を作り、再配分構造に頼らない社会課題解決に仕組みが作りたい。認知症対策、MaaS、農業など新しいものを企画していき、そこで生まれたものをスタートアップが組み込んで、活躍する。それが出口戦略となる。

文:M&A Online