50代の人のなかには、老後が間近に迫ってきたため、本格的に資産運用(投資)を始めたい人もいるのではないでしょうか。50代の資産運用は、短期で大儲けを狙わずローリスクからミドルリスクの運用を中心に考えることが大切です。本記事では、50代におすすめの資産運用の特徴やメリット・デメリット、始め方について紹介します。
50代におすすめの資産運用6選
50代からでも本格的な資産運用は遅くありません。仮にリタイア年齢が75歳であれば、16年(現在年齢59歳)~25年(同50歳)の運用期間を確保できます。この間、一定の利回りを確保し、複利効果を活用すれば効率的な資産運用も可能です。以下で紹介する投資先を組み合わせて、老後資金を準備してはいかがでしょうか。
株式投資:50代は「配当金」と「株主優待」を手堅く狙いたい
上場株式を購入・保有・売却することで、次の3種類のリターンが期待できます。
- 売買差益:購入時株価と売却時株価の差額
- 配当金:企業の利益の一部を還元
- 株主優待:自社商品や金券などを提供
上記のうち、50代の株式投資では、「配当金」と「株主優待」を手堅く狙うのがおすすめです。過去の配当金や株主優待の実績を参考に銘柄選びを行いましょう。一方、「売買差益」狙いは短期間で大儲けできる可能性もありますが、「配当金」や「株主優待」に比べて元本割れリスクが高まります。50代は、リタイアまでの期間が短いため、資産を大きく減らしてしまうと老後資金が足りなくなる恐れがあります。
【メリット】
・3種類のリターンが期待できる
・ネット証券経由なら手軽に売買できる
・興味のある会社の経営(株主総会)に参加できる
【デメリット】
・株価の急落するリスクがある
・売買量が少ない銘柄だと取引が成立しないケースもある
【始め方】
使い勝手がよいのは、オンライン証券です。2023年9~10月にかけてSBI証券と楽天証券が売買手数料0円を打ち出しました。主な始め方の流れは、以下の通りです。
1.証券会社を選ぶ
2.証券口座を開設する
3.元手となるお金を入金する
4.銘柄を選び保有する
投資信託:50代からは「長期・積立・分散投資」に撤したい
50代の投資信託のポイントは、資産運用の王道といわれる「長期・積立・分散」に徹することです。投資信託とは、大勢の人から集めた資金を運用のプロが株式・債券などで運用する商品のことを指します。投資信託は、ローリスクからイリスクまで幅広い銘柄があります。50代の場合は、分散投資効果の高い「先進国・全世界の株式型」や「バランス型」などがおすすめです。
毎月決まった金額を積み立てていくのがよいでしょう。
【メリット】
・100円や1万円など少ない金額で購入できる
・株式や債券など幅広い分野に分散投資できる
・専門家が運用するため手間がかからない
【デメリット】
・購入時、保有時、解約時などに手数料がかかるケースがある
・なかには割高な手数料もある
【始め方】
投資信託を取引する口座を持っていない場合は、証券会社や銀行などで開設し購入ができます。金融機関ごとに取扱銘柄数が異なりますが、特に本数が多いのはSBI証券(2,597本)と楽天証券(2,561本)です。
※2023年12月18日時点
1.口座開設する金融機関を選ぶ
2.口座を開設する
3.投資するお金を入金する
4.銘柄を選び買付し保有する
新NISA:50代なら早めに限度額に到達したい
50代の資産運用の柱にしたい制度は、2024年1月から始める新NISA(少額投資非課税制度)です。「株式」や「投資信託」と組み合わせることで効率的な資産運用が可能となります。株式や投資信託の運用で得た利益には、通常約20.315%(復興特別所得税を含む)の税金がかかります。新NISAの口座を経由して購入した場合は、利益に税金がかかりません。
新NISAの注目点は「総投資枠が1,800万円まで拡大したこと」「非課税期間が無期限になったこと」です。
旧NISA | 新NISA | |
---|---|---|
非課税保有限度額 (総投資枠) | ・つみたてNISA:800万円 ・一般NISA:600万円 | ・生涯で1,800万円 (うち成長投資枠1,200万円) |
非課税期間 | ・つみたてNISA:20年 一般NISA:5年 | ・無期限 |
【メリット】
・資産運用で得た利益が非課税になる
・無期限の非課税期間で資産運用ができる
・「長期・積立・分散」に向いた銘柄を選びやすい
【デメリット】
・損失が発生した場合、特定口座や一般口座と損益通算ができない
・損失が発生した場合、3年間の繰越控除を使えない
【始め方】
新NISAを始める場合の主な流れは、以下の通りです。
1.金融機関を選ぶ
2.NISA口座を開設する(同時に特定口座か一般口座を開設)
3.投資するお金を入金する
4.銘柄を選び保有する
債券投資:元本割れなしの資産運用をしたいなら個人向け国債
債券投資は、約束した利子を定期的に受け取ることができ、償還日(満期日)が来ると元本を返してもらえる仕組みです。債券の発行元には、国・地方公共団体・企業などがありますが、なかでも資産運用で大きな失敗ができない50代におすすめなのは個人向け国債です。金融機関の窓口で1万円から購入することができ、元本割れリスクが原則ありません(国が破たんした場合は元本割れの可能性があります)。
日本国債は次の3種類があり、それぞれ金利が異なります。
- 変動10年:金利高 0.46%(税引き前)
- 固定5年:金利中 0.25%(税引き前)
- 固定3年:金利低 0.05%(税引き前)
※2023年12月7日~12月29日募集分
参照:財務省「個人向け国債」
【メリット】
・日本国が発行しているという安心感がある
・要件を満たせば中途換金も可能
・元本割れリスクが原則ない
【デメリット】
・株式や投資信託などの投資商品よりも低金利である
・発行後1年以上経過しないと換金できない
【始め方】
1.口座開設する金融機関を選ぶ
2.国債専用の口座を開設する
3.募集期間中に購入申し込みをする
iDeCo:60代以降を考えた資産形成を
iDeCo(個人型確定拠出年金)も50代の資産運用で活用したい制度です。ただし、50代で加入すると受給開始年齢が繰り下がり、60歳で受け取れない場合もあります。いつから受給できるのかを考慮した上で加入しましょう。
iDeCoでは、毎月自分で決めた掛金を拠出し、自分で選んだ商品(定期預金や保険商品、投資信託)で運用していきます。将来の受取額は、自分が選んだ商品の運用成績によって変わるのが特徴です。
【メリット】
・掛金が全額所得控除になる
・運用益が非課税となる
・年金として受け取るときも控除の対象となる※一時金として受け取った場合は退職所得控除になる
【デメリット】
・職業などで掛金の上限がある
・原則60歳にならないと引き出せない
【始め方】
1.掛金の上限を確認する
2.金融機関、掛金、運用先などを決める
3.毎月、掛金を拠出する
不動産投資
まとまった自己資金(頭金)を用意できる50代に限定すると、不動産投資もおすすめの資産運用です。不動産投資の仕組みは、購入した物件(アパートやマンションなど)の家賃収入や売却益を得ていくものです。物件価格は千万単位、億単位のケースもありますが、自己資金に加えて不動産投資ローンを活用するのが一般的です。
ただしローン審査では、現在の年齢(完済時の年齢)がチェック項目の一つになります。50代だと年齢の制約で不利なる可能性があるため、「ローン審査に通らない」「融資額が少ない」などの結果になる可能性もあるため、注意が必要です。
【メリット】
・融資を使って手元資金にレバレッジをかけられる
・インフレのリスクヘッジになる
・管理を専門業者に委託すれば運用の手間がない
【デメリット】
・属性が高くなければ融資を受けにくい
・空室が発生するとローン返済を手元資金でカバーしなければならない
【始め方】
1.物件や不動産会社を探す
2.買付を入れ売買契約を交わす
3.入居者募集をする(またはオーナーチェンジをする)
4.入居者/物件管理を行う
50代からでも始めやすい不動産クラウドファンディング
先述したように不動産投資には、ローンの完済年齢の制限があることから50代以降に不向きな面もあります。とはいえ、近年は物価上昇の圧力が強いため、不動産投資のような実物資産をポートフォリオに組み込むことが理想的です。50代向きの不動産関連の資産運用では「不動産クラウドファンディング」という選択肢もあります。
不動産クラウドファンディングとは、インターネットを介して複数の投資家から資金を募り、これを元手に物件の取得・運用・売却を行い、得た利益を投資家に分配する仕組みです。主なメリットやデメリットは、以下の通りです。
【メリット】
・1万円など少額から始められる
・比較的高い利回り(例:5%~など)を得やすい
・基準価格の変動がなくボラティリティが低い
【デメリット】
・流動性が低い(すぐに現金化できない)
・NISAのような税制優遇がない
【始め方】
2023年8月時点で不動産クラウドファンディングのサービス提供企業は、70社弱あるといわれています。しかしなかには、情報開示や管理体制が不十分な企業も少なくありません。そのため不動産クラウドファンディングを始めるときは、利回りの高さだけに目を奪われるのではなくファンドの実績数や企業の信頼性などを確認して契約することが大切です。
不動産クラウドファンディングは、以下のような流れで始めることができます。
1.複数の不動産クラウドファンディング事業者のサービスを比較する
2.選択した不動産クラウドファンディング事業者で口座開設を申し込む
3.不動産クラウドファンディング事業者の口座へ必要額を入金する
4.ファンド(銘柄)を選ぶ
不動産クラウドファンディングは、募集金額を上回る申し込みがあるとファンドを購入できない場合もあるため、注意が必要です。なお募集方式には、先着式と抽選式があります。どちらの方式を採用しているかを確認したうえでファンドに申し込みをしましょう。
方式 | 特徴 |
---|---|
先着式 | 募集金額に達した段階で募集終了 |
抽選式 | 申込期間が終了したら抽選を実施 |
50代の資産運用の基本的な考え方
資産運用では、どの投資商品を購入するか以上に資産全体をどのように構成していくかが大切です。基本的な考え方は、次の通りです。
資産を生活費と余剰資金に区分けする
資産運用に回すお金は、余剰資金が基本です。余剰資金とは、生活費や近々使う資金などを差し引いたお金のことです。
一般的に生活資金は、毎月の生活費の3~6ヵ月分を現金・預金などで準備しておくのがよいとされます。50代は、家族がいてまとまった生活費が必要になったり、病気で入院したりする可能性もあるため、余剰資金を多めに確保しておくのがベターです。
なお余剰資金の全額を資産運用に回す必要はありません。「子どもの教育費がかかる」「生活費を手元に多く置いておきたい」など個別の事情によって調整しましょう。
コア運用とサテライト運用に区分けする
余剰資金を「コア運用」「サテライト運用」に分けて運用すると、資産を守る効果が高まります。「コア運用」とは、安定性を重視した運用のことです。この基準に合う投資商品には、以下のようなものがあります。
- 個人向け国債
- バランス型や債券型の投資信託
- 不動産クラウドファンディング
一方、サテライト運用はハイリターン・ハイリスクを狙う運用のことです。この基準にあった投資商品は次の通りです。
- 海外債券
- 海外株式型の投資信託
- 新興企業の株式
コア運用の比率を高めるほど、資産を守る効果が高まります。50代であれば、例えば「コア運用8:サテライト運用2」のように、保守的な比率に設定するのがおすすめです。
50代の資産運用に関するQ&A
50代で投資をしている人の割合は?
金融リテラシー1万人調査(MUFG資産形成研究所)によれば、50代以上で投資をしている人の割合は約40%です。同じ50代以上でも保有する金融資産が多いほど、投資をしている割合が高くなる傾向があります。例えば、金融資産を3,000万円以上保有している50代以上の約60%が投資をしています。
1000万円あったら何に投資する?
リスクとリターンをどう設定するかで、投資対象が変わってきます。ローリスク・ローリターンの投資を目指すなら、「物価連動国債ファンド」「不動産クラウドファンディング」「不動産小口化商品」「投資信託(国内債券型)」「米ドル定期預金」などがおすすめです。
50代おひとりさまの貯蓄の相場は?
総務省統計局の「2019年全国家計構造調査」によれば、50代単身女性の平均的な金融資産の残高は約1,110万円です。また50代単身女性の金融負債の平均的な残高は、約260万円となっています。
(提供:YANUSY)
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