総括
FX「円安ムード継続も、GPIFヘッジ、当局牽制、月末輸出には注意」
ドル円=145-150、ユーロ円=159-164、ユーロドル=1.06-1.11
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨最下位(最下位)、株価首位(2位)、円安ムード継続も、GPIFヘッジ、当局牽制、月末輸出には注意」
年初来、最弱である(株価最強)。万年最弱のトルコリラより今年は弱いスタートとなっている。今週は材料も多い。日銀政策決定会合、展望リポート、基調インフレリポート、月末用意、貿易統計、東京CPI、財務省為替牽制、新NISA、GPIFの為替ヘッジ、買収案件双方向。
ドル買いの材料が多いが、GPIFの為替ヘッジと、財務省の円安けん制発言が気になるところだ。テクニカルではボリバン2σ上限を守りながら先週は全日陽線となった。上限では慎重に。
日銀は今回も現状の政策を維持しそうだ。賃金の上昇を春闘で確認したいことや、能登半島大地震への支援という意味もある。物価も低下傾向で、展望リポートや基調的なインフレ率を捕捉するための指標待ちたい。正常化は直ぐにでも出来る状況だと思うが、マイナス金利に慣れ切っている市場、国民生活にショックを与えたくないという配慮もある。
貿易赤字は縮小していると雖も赤字だ。新NISAが騒がれているが、それは個別で騒ぐより毎月発表される外貨投信残高で確認したい。大型買収案件は流失、流入の両方あり(積水 日鉄 アマゾン)。
気になるのがGPIFの為替ヘッジ開始の報道だ。GPIFの外貨資産は100兆円超えで、ヘッジをすると日銀介入のような大玉となる。追随する投資家も出る。もちろん当局と議論しながらの取引となるが、ヘッジしても新規流入資金もあるので、その操作は極めて難しい。両建ては難しいのだ。
(仲値動向基本)
1/22(月) 若干多い
1/23(火) 普通
1/24(水) 普通
1/25(木) ゴトビ
1/26(金) やや多い
(ただ月末なので後場は輸出が散発、また仲値とは関係ないが夕方以降はNISAなど投信のカバー取引の為替も出る)
*米ドル「通貨首位(3位)、株価(NYダウ)6位(6位)、ドル強く、経済指標も堅調。インフレも問題なし」
2024年のドルは最強スタートとなっている。株価指数も一時、マイナス圏に落ちたが、先週末ではダウ、ナスダック、S&Pでプラス圏となっている。12月のFOMCで市場は金利低下方向へ向かったが、相次ぐFOMCメンバーの牽制球で、3月の利下げ確率も急速に低下(70%から50%割れ)している。金利上昇を受けて、ドルも上昇、ただ米国の経済指標は悪くはない。アトランタGDPナウは2.4%、今週発表の4Q・GDP予想は前期比年率で2.0%、先週のミシガン大1月の消費者信頼感指数が2021年7月以来の高水準の78.8となった。インフレは低下傾向にあるも、その他の経済指標が強いこともFOMCメンバーが利下げに慎重な姿勢を維持することとなっている。
インフレも、紅海での航行難での原油価格の先行き不透明感はあるも、PPIの低下やミシガン大のインフレ期待指数の低下もあり以前ほどの懸念はない。ただ中銀マンの習性として利下げは利上げより慎重ということは変わらず、それが発言に繋がっている。
大統領選挙の予備選も始まり、共和党ではトランプ前大統領が勢いを増している。早速、ラガルドECB総裁がトランプ対策をとると表明しているが、トランプ大統領も自国経済を窮乏させる政策をとるわけはない。ただ世界の警察としての役割が低下したり、より米国第一主義をとるので、海外のほうが不安になることは確かであろう。
*ユーロ「通貨5位(4位)、株価11位(11位)DAX)、利下げはFRBより先か?」
利下げはECBが先か、FRBか。ECBの利下げ予想が前倒し、FRBは後退して、ドルがユーロより強い。ただユーロは全体でが貿易黒字化もあり5位と弱くもない。
1月25日のECB理事会では政策金利は据え置かれると予想されている。タカ派中のタカ派のナーゲル独連銀総裁の発言も和らいできた。「金利を決定する前に最新のデータを待つべきだ。利下げは遅かれ早かれ訪れるだろう。コアインフレ率は比較的安定している」と述べた。ドイツのデータも引き締めを続けられるものではない。2023年のGDPは物価高や外需低迷で0.3%縮小、昨年12月の生産者物価は前年同月比で8.6%下落し、下げ幅は予想より大きかった。
22年末から続いているリセッション的な状況は今年も続くとみられる。最近のインフレ率低下が家計に一定の安心感をもたらすが、住宅・企業投資は縮小する可能性が高く、建設も深刻な不況に向かっていると見られている。今年のドイツ経済はゼロ成長になる見通し。
ロイター調査によると、ECBは2Qにも最初の利下げを実施する。エコノミスト85人中38人が6月に、21人が4月にそれぞれ利下げがあると見込んだ。インフレの大幅な再燃は新たな供給ショックが発生した場合にのみ考えられる。より重要なリスクはインフレが予想以上に、特に賃金圧力によって、粘着的になることだ、と見る向きもある。
ECBが発表したユーロ圏消費者のインフレ期待は昨年11月に過去1年半で最低の水準を付けた。今後1年間のインフレ期待は前月の4%から3.2%へと「著しく低下」した。
*ポンド「通貨2位(2位)、株価15位(13位)、CPI10カ月ぶりに上昇。一方利下げ論も出てきたが、ECBより遅いか」
強い。メキシコペソを抜いて2位。昨年から続いてるポンド高株安が続く。消費者物価の上昇が影響した。昨年12月の消費者物価上昇率は前年同月比4%となり、10カ月ぶりに加速した。
予想は3.8%。11月は約2年ぶりの低水準の3.9%。インフレ率はここ数カ月、予想以上の鈍化が続いていた。ただ中銀は昨年11月、インフレ率が目標の2%に戻るには2025年後半までかかると予想したが、多くのエコノミストはガス卸売価格の下落などにより今年の4月か5月にも実現する可能性があるとみている。
英中銀の元金融政策委員ソーンダーズ氏は12月のCPIについて、広範なインフレ低下基調と矛盾しているとは思わないと指摘。今年半ばごろに利下げが始まる可能性があるとの見方を示した。
BOAは政策金利を現行の5.25%に据え置く期間について、従来の2025年2月までから今年8月までに変更した。 今年8月以降、四半期ごとに0.25%の利下げを想定している。
英国は利下げサイクルに入る主要中央銀行としては最後になり、少なくともECBに比べるとそのペースはよりゆっくりになる公算が大きいとた。
昨年9-11月の賃金は前年同期比6.6%上昇に鈍化した。8-10月は7.2%上昇だった。 賃金上昇率の鈍化は労働市場が今後さらに軟化すると見られているが、日本から見ると非常に高い。
*豪ドル「通貨9位(11位)、株価13位(6位)、RBAのブロック総裁はインフレを懸念」
豪ドルは全体では弱いのだが対円では強い。その中で豪ドルは先週末は反発し11位から9位へ上昇した。メルボルン研究所の月次インフレ指標で23年12月の物価は前月の0.3%上昇から1.0%に急激に加速した。
2022年11月以来の最高値を示した。RBAのブロック総裁は、海外からの供給ショックではなく、国内の過剰需要によってインフレがますます加速していると警告した。国内経済は高金利下で冷え込んだものの、おおむね底堅さを維持しており、それがインフレの上振れリスクを高めているとの見方を示した。
12月の雇用統計は、就業者数が増加予想に反して大幅に減少したが失業率は約1年半ぶりの3.9%の水準にとどまった。就業者数は前月比6万5100人減少。予想は約1万7600人増、10月と11月の就業者数の予想外の大幅増加が12月の大幅減少につながったとした。
現在4.35%の政策金利は2月6日に決定される。今週の12月企業信頼感指数、1月製造業・非製造業PMI、12月景気先行指数、来週の4Qインフレ指数でデータをチェックする。
*NZドル「通貨10位(7位)、株価10位(6位)、弱い指標で伸びず。今週は4Q・CPI」
先週は豪ドルに逆転されて10位へ後退。NZ経済総合研究所の2023年4Qの企業信頼感は前期から大幅に改善したものの、全般にはなお悲観的な内容にとどまった。
業況全般が「改善する」と回答した企業から「悪化する」と回答した企業を引いた割合はマイナス2%。前期はマイナス52%だった。NZ経済総合研究所は、インフレ率が24年後半までに中銀の目標である1-3%の範囲内に戻り、25年前半には2%に達すると予想している。追加利上げはないという予想を支持するとした。
その他の指標では、 12月食品価格指数は前月比-0.1%低下、建設コストは12月までの1年間で2.4%増加し、年間増加率としては2016年9月までの1年間以来最小となった。金融引き締めと経済成長の鈍化により、住宅価格の下落と年間の大半の消費者信頼感の低迷が引き起こされ、新築住宅の需要が鈍化した。また23年4Qの小売店における電子カードの支出は前年比0.2%減少した。
全体的に経済状況が冷え込む中、失業率は2024年にかけてさらに上昇し、賃金の伸びは鈍化する見通しだ。
今週はやや低下すると見られている4QのCPIが焦点だ。
テクニカル分析
*ドル円「5日連続陽線、雲上、一時ボリバン2σ上限」
日足、一時ボリバン上限へ。5日連続陰線。1月17日-19日の上昇ラインがサポート。11月27日-1月19日の下降ラインが上値抵抗。5日線。20日線上向き。
週足、ボリバン一時2σ中位越える。上3週連続陽線。1月8日週-15日週の上昇ラインがサポート。11月13日週-1月15日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、実需の季節的ドル下げのデータ通り11月、12月は陰線。年初からはそのドル下げのデータはない。1月は陽線スタート。22年4月-12月の上昇ラインがサポート。22年10月-23年11月の下降ラインが上値抵抗。5か月線下向き、20か月線は上向き。
年足、2022年、2023年と長い上ヒゲの陽線となった。151円後半がダブルトップとなる。22年-23年の上昇ラインがサポート。1985年-2022年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロドル「ボリバン下限で推移、雲中には落ちず」
日足、ボリバン2σ下限で推移、1月18日-19日の上昇ラインがサポート。1月16日-19日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線下向き。
週足、雲中へ下落。12月11日週-1月15日週の上昇ラインがサポート。1月2日週-15日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、11月、12月連続陽線も1月は陰線スタート。7月-12月の下降ラインが上値抵抗。11月-12月、10月-11月の上昇ラインがサポート。5か月線上向き、20か月線上向き。
年足、2023年は陽線。ドルより強かった。ボリバン2σ下限到達し長い下ヒゲでサポ―ト。今年は陰線スタート。22年-23年の上昇ラインがサポート。14年‐21年の下降ラインが上値抵抗。
*ユーロ円「急回復」
日足、2σ上限に沿って上昇。1月17日-19の上昇ラインがサポート。11月27日-1月19日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線上向く。
週足、ボリバン2σ上限から急回復。上位。1月8日週-15日週の上昇ラインがサポート。11月27日週-1月15日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、11月-12月の下降ラインを上抜く。23年3月-12月の上昇ラインがサポート。5か月線、20か月線上向き。
年足、4年連続陽線。22年-23年の上昇ラインがサポート。08年-23年の下降ラインが上値抵抗。24年も陽線スタート。