本記事は、林 重光氏の著書『声のデザイン 一瞬で相手を惹きつける最強のプレゼンスキル』(ジー・ビー)の中から一部を抜粋・編集しています。

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(画像=vegefox.com / stock.adobe.com)

手の形ひとつで呼吸が変わる、声が変わる

ここで、手の形ひとつで声を変えるテクニックをご紹介します。

まずは、手をグーの形に握って深呼吸をしてみてください。息を吸ったときに、胸が大きく膨らむのを感じるはずです。

では次に、小指と薬指だけを折り曲げてみてください。中指、人差し指、親指の3本の指は力を抜いて、軽く曲がった状態にします。そのまま、深呼吸をしてみてください。手をグーにしたときと違い、胸ではなく、腹部が膨らむのを感じませんか? 心なしか、呼吸もしやすいのではないでしょうか。

実は「握る」というグーの形では胸式呼吸になりやすく、首・肩・胸・腕に力が入りやすい状態になるため、声帯のコントロールがしにくくなり、声が震えたり、うまく出せなくなったりします。一方で、小指と薬指を折り曲げると自然と腹式呼吸になり、安定した声が出せるようになります。

手の形を変えることによって、呼吸をするときに使う筋肉が変わります。使う筋肉が変わることで、出てくる声も変わってくるのです。

声色や声質でいえば、少し高い声、明るい声が出るようになります。また、腹式呼吸をして腹部が広がることによって、柔らかく落ち着いた声が出るようになります。

両手が不思議な形になっていると、それを見た聞き手に違和感を与えてしまう場合があるかもしれません。ですので、小指と薬指を折り曲げるのは片方の手だけで構いません。

また、小指と薬指がほかの3本の指よりも手のひらに近ければ良いので、軽く握った形にして問題ありません。これなら、あらゆるシチュエーションでご活用いただけるでしょう。それでも気になるようでしたら、聞き手に見えないように反対の手で隠すと良いでしょう。

マイクを持つときにも、この手の使い方を意識してみましょう。小指と薬指でマイクを支えるようにしてみてください。中指、人差し指、親指はマイクが落ちないように添えるだけ、というイメージです。

両手で握りしめて話す方や、利き手とは逆の手でしっかりと握りしめる方など、マイクの持ち方は人によってさまざまです。

両手で胸の前にマイクを握っていると心情的には安心できるものですが、声にとってはあまり良い状態ではありません。マイクを強く握りしめているために、肩に力が入ってしまうからです。緊張しているときに「肩の力を抜いて」とはよくいわれますが、実は手の握りを緩めることによって肩の力は自然と抜けていきます。

慣れていないことをすると、つい肩に力が入りがちになります。たとえば、乗り慣れていない車を運転するときにはついハンドルを両手でぎゅっと握りしめてしまい、体が前のめりになってしまいませんか?

プレゼンやスピーチのときも同じで、あがり症の方や不安を抱えている方などは、緊張して肩に力が入りがちです。肩に力が入って声帯が固まると声も硬くなります。そうすると、不自然なイントネーションになったり早口になったりして、自分では意図していない声が出てしまうのです。

納会でスピーチを依頼され、冗談のつもりで「うちの上司は本当に鬼なんですよ」と発言したところ、緊張していたためにイントネーションがおかしくなってしまい、「鬼なんですよ!」と語尾を強くしてしまったとします。語尾が強いと怒ったように聞こえてしまいますから、冗談で言っているのか、それとも本気で憤っているのか、聞いている方は混乱してしまいます。

これでは、伝えたいことが伝わったとはいえません。こうした悲劇は、私たちの日常でもよく起きています。

声のデザイン
(画像=声のデザイン)
声のデザイン
林 重光(はやし・しげみつ)
ヴォイスコンサルタント。MAKE UP VOICE代表。大阪芸術大学芸術学部芸術計画学科卒業。2003年から経営者や政治家、芸能人を対象に「伝えたいことを伝わるように伝える」ための、声と言葉のブランディングを行い、約8,000人を指導。日本旅行、みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社など行政機関・民間企業・学校向けのセミナーも多数実施。20年間の発声身体技法研究から、独自のメソッド「身体操作と思考操作の組み合わせでパフォーマンスを安定させる技法」を開発。「話す」「読む」「歌う」ことや、発声障害などにより生じる悩みと苦痛を取り除き、短期間でパフォーマンスを安定させることに定評がある。
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