12月2日、衆議院選挙の公示が発表された。14日には投開票が迫る。安倍首相は2015年10月に予定していた消費税率10%の引き上げを1年半延期し2017年4月からとし、この政策変更については衆議院を解散し、総選挙で国民の信を問う必要があると判断した模様だ。
消費税は当初2014年4月に8%、2015年10月に10%とする予定だった。しかしながら、11月17日に公表された7月~9月期の実質国内総生産(GDP)が二四半期連続でマイナス成長となったこと等が要因となり、延期に踏み切った。2017年4月の消費税引き上げの際には景気判断条項を付すことなく確実に実施する」と表明している。
消費税引き上げと共に議論されている軽減税率とは?
消費税10%への引き上げと共に議論されているものがある。それが軽減税率だ。軽減税率とは「複数税率とも言われ、食料品など生活に欠かせない品目の消費税率を標準の税率より低く抑えるもの」だ。
つまり原則は10%とするが、一部の品目については税率を低くするということである。国民にとってみれば、今までよりも税率が低くなる可能性があるのだから、家計負担が減るということになる。ヨーロッパや韓国ではすでに軽減税率が導入されている。イギリスの場合、標準税率は20%であるが、食料品、医薬品、新聞・雑誌・書籍、水道水等は0%となっている。ドイツは標準税率が19%である一方、食料品、水道水、新聞・雑誌・書籍等は7%、スウェーデンは標準税率が25%である一方、医薬品が0%、食料品や外食サービス等は12%、新聞・雑誌・書籍、スポーツ観戦、映画等は6%となっている。
軽減税率は消費税率の引き上げの家計に対する影響を緩和する効果はある一方、国の税収が減るという一面も持っている。消費税率1%の税収は2.7兆円と言われている。そして、自由民主党と公明党の与党税制協議会によれば、全ての食料品を軽減税率の対象とする場合、単一税率と比べた場合の減収額は1%あたり6,600億円になる。消費税10%に引き上げた時に全食料品について8%の据え置きとすれば、1兆3,200億円の税収が得られなかったことになり、全食料品だけ逆に消費税を0%とすれば、単純計算で5兆2,800億円の税収減となるというわけだ。
軽減税率をどのような形で行うのかに注目!
軽減税率にはその対象をどうするかという線引き区分の問題、経理上の煩雑さの問題があるが、最も考えなければいけない点は「社会保障の財源はどうするのか」という点だ。本来的には今後増大する社会保障費等を賄うために消費税増税に踏み切ったはずだ。安倍首相は、「消費税引き上げによって景気が腰折れすれば、国民生活に大きな負担をかけ」、「税率を上げても税収が増えなくなっては元も子もない」と述べている。
しかしながら、消費税率を引き上げておきながら、軽減税率も導入するのでは税収増のインパクトは薄くなる。軽減税率が低所得者のためであるというなら、一旦、税収として吸い上げて、還付又は給付するという手段もある。衆議院総選挙後の政権が軽減税率をどのような形で行うのか又は行わないのか注視したい。
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