11月25日のSankeiBizの記事によると、日本製のランドセルが外国人観光客の間でブームになっており、関西国際空港の免税店では、特に中国人が買い求める姿が少なくないとのことだ。
中国人富裕層による消費は消費税増税後、内需の不振が見られる2014年4月以降も依然消費の下支え要因となっている。今回はこの中国富裕層によるに消費の背景について見ていく。
そして、この高級品の売上増を押し上げているのが、中国人富裕層である。
増え続けるアッパーミドル層
そもそも中国における富裕層とはどのような人たちなのだろうか。Euromonitor Internationalによる2010年の調査では中国では世帯の年間可処分所得が15,000~35,000ドルとなるアッパーミドル層(富裕層における中流階級)の人口が9,000万人を超えるとされる。さらにこのアッパーミドル層は今後も増加し、2020年には4億人を超えると予想されている。この中国の富裕層は他国に比べ、若年層の割合が高く消費意欲も旺盛であることが特徴だ。
そして近年、日本において彼ら中国の富裕層の消費が目立っている背景には、多くの要因があり、確認していきたい。
中国の環境・食品汚染
ご存知のとおり、中国では経済発展が進む一方で深刻な環境汚染に見舞われており、農作物や家畜などの汚染は深刻な問題となっている。加えて今年の7月に上海福喜食品における使用期限切れ食肉使用事件で明らかになったように、食品製造の品質管理も杜撰な場合が多く、多くの中国人は中国での生活における健康面での悪影響に不安を感じている。
そのため、特に富裕層の間では多少割高であっても外国製の商品・食品を購入しようとする傾向が強い。その中でも特に日本製の製品は信頼感が高く、高品質を求める中国の消費者の間で人気が高いのである。
日中間の物価の逆転現象
また近年、品物によっては日中間で価格の逆転現象が生じ、中国人富裕層にとって日本での商品・サービス購入が『割安』になっているケースが多くみられる。その背景には、アベノミクスによる円安に加え、中国の関税の問題がある。
一般に中国で、外国製品を購入する場合には、輸入時に『輸入関税』、『増値税』さらに贅沢品(ゴルフ用品、高級装身具等)の場合には『消費税(日本での物品税に相当)』などがかかり、総額で50%近くを納税する必要があることも珍しくない。そのため、特に高級品の場合には、中国で買うより日本で買う方が安いという逆転現象が起きている。
恩恵を受ける旅行業、百貨店・家電量販店
2009年7月の訪日中国人観光客への個人ビザ解禁以降、中国からの旅行客は増加を続けている。特に2014年は1-10月までの累計で200万人を超え、昨年の130万人を大きく上回っている。この中国からの個人旅行客の増加により、ホテルなど観光産業の売上急増につながっている。また観光地別では東京、大阪、京都などの都市部に加え、特色ある自然豊かな北海道、沖縄の人気が高く、地元経済への寄与も大きい。
また、上述のとおり中国では輸入ブランド品に対する関税が高いため、中国の富裕層はブランド品を海外で購入しようとする傾向が強い。そのため、ブランド品購入目的の来日中国人観光客も多く、訪れる中国人観光客の半数以上が一回に2万元(約38万円)以上消費するとされる。なお一人あたりの品目別購入額をみると『カメラ・ビデオカメラ・時計』が約8.1万円。『電気製品』が約5.2万円、『服・かばん・靴』が4.9万円となっており、銀座の百貨店や秋葉原の家電量販店での売上増加につながっている。