チョロバイは1984年にチョロQのバイク版としてタカラ(現タカラトミー)から発売されました。デフォルメされたフォルムに精巧なディテールが施され、ライダーなら思わず大人買いしたくなる逸品です。今回紹介するモデルの実車は、いずれも1980年代前半に発売されました。この時代はバイクの過渡期。野暮ったく感じるメカやデザインもご愛敬です。魅惑の4台を紹介します。
カワサキ・KR250
「ざんねんないきもの事典」という本をご存じでしょうか。ユーモラスで意外な生物を紹介し、次々と続編が出版されるベストセラーです。KR250も残念具合では負けていません。KR250は、1977年から1983年まで参戦していたWGP250のワークスレーサーKR250のレプリカです。パワーユニットは、レーサーと同じタンデムツインエンジンを搭載。さらに「R.R.I.S.(ロータリー&リードバルブインテークシステム)」という珍しいメカニズムを採用しています。ぶっちゃけよくわかりませんが、これによって二段構えのロケットスタートを可能にしています。
KR250のざんねんなところは、姿かたちをレプリカするのではなく、メカニズムのみをレプリカしていたこと。しかも販売当時、カワサキはレースから撤退していたため、もはやレーサーレプリカと呼べなくなっていたことも、ざんねん具合に拍車をかけました。1988年に発売された後継車の「KR-1」は、レーサーっぽいデザインになりましたが、相変わらずレースへの参戦ナシ。複雑なメカニズムから平凡なパラレルツインになり、さらに残念度増し増しになりました。
ホンダ・VF750F
VF750F(RC15)は、1982年のケルンショーでデビューしました。今ではツアラーのように感じるデザインですが、当時はバリバリのスポーツモデルでした。2輪世界初のバックトルクリミッター機構、クラス初の軽量ブーメラン型オールアルミコムスター16インチホイール、国内生産モデル初の角型断面パイプによるダブルクレードルフレーム、ホンダ独自のブレーキ・トルク応答型アンチダイブ機構とプロリンク式リアサスペンションなど、「よくわからないけどスゴイ」という技術が詰め込まれています。
パワーユニットは水冷4サイクルDOHC V型4気筒エンジンを搭載。挾み角を90度に設定し、一次振動を低減することでバランサーが不要となり、軽く、スリムでコンパクトな設計となりました。人気レーサー、フレディ・スペンサーなどがCB750F改からHRCが仕上げたVF750Fベースのレーサー「VF750R」に乗り換えてAMAレースに参戦するなど力を入れていました。日本では「限定解除」という免許制度の壁に阻まれて販売は苦戦。当時の年間販売計画は15,000台でしたが、達成できたかどうかは微妙なところです。