本記事は、藤井孝一氏の著書『本当に頭のいい人が実践している AI時代の読書術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

読書
(画像=photo@n / stock.adobe.com)

AI時代も脳の筋トレは読書

人間がいくら思考力を磨き、AIとすみ分けたり、使いこなしたりしても、いずれ、技術の進歩でAIが苦手分野を克服し、人間はあらゆる分野で太刀打たちうちできなくなるという人もいます。その結果、現在の頭脳労働の9割はなくなり、人間は一切の頭脳労働から解放されるという説もあります。それがいつかはわかりませんが、少なくともそういう方向に向かっていくことは間違いなさそうです。

とは言え、それは悲観すべきことではなく、むしろ喜ばしいことだと思います。かつて、仕事は肉体労働が中心でしたが、機械化の進展で、そうした人間の仕事を機械が請け負うようになりました。その結果、人間は重労働から解放され、代わりに身体でなく頭を使う労働にシフトしていきました。AIの技術が進歩し、仕事への導入がさらに進めば、いずれ人間は頭脳労働からも解放される日が来るかもしれません。

しかし、だからといって、頭脳を鍛えても意味がないと考えるのは間違いです。なぜなら、人間はAIの主人であり続けるべきで、そのためには思考力が必要だからです。

◎「思考不足」で「基礎思考力」が衰える

それに、人間は仕事するためだけに思考しているわけではありません。生活を維持するためにも、プライベートを楽しむためにも、心身を正常に保つためにも、脳は重要な役割を担っており、正常に活動している必要があります。そのためには、思考活動を続けて脳に刺激を与え続け、機能を正常に保っていかなければなりません。

しかし、仕事で思考する機会が減れば、思考力の衰えが顕在化するかもしれません。機械化で肉体労働が減ったように、AIの普及で頭脳労働が減れば、脳の使用頻度が減ることになります。その分、仕事以外で頭を使えばいいのでしょうが、その時には、あらゆる分野でAIが普及しているはずで、日常生活でも脳を使う機会は減っている可能性が高いと思います。

そうなると、これまでなかった弊害が顕在化するかもしれません。機械化で身体の負担が減り、身体が楽になった結果、現代人の多くが運動不足になり、生活習慣病に悩まされています。それを防ぐために、ジョギングをしたり、ジムに通ったりと、意識して運動習慣を取り入れる必要に迫られています。

同じように、頭脳労働から解放されるなどで、脳の負担が減れば「運動不足」ならぬ「思考不足」が起きる可能性があります。その結果「基礎体力」ならぬ「基礎思考力」が落ちてしまうかもしれません。

◎読書こそが脳を鍛える

こうした思考不足を回避し、脳の機能を維持するには思考を続けることです。そのために有効なのが読書です。このことは昔から多くの識者たちが指摘してきたことです。AIの技術が進歩しても、人間の脳の構造自体が変わるわけではありませんから、昔も、今も、これからも、その点は変わらないと思われます。読書は思考の機会を提供してくれます。読めば、考える習慣ができるのです。その過程で思考力が鍛えられます。つまり、読書習慣は、思考習慣につながるのです。つたな

読書の効果は、思考の機会が増えること以外にも、色々あります。知識や語彙ごい力が増えることはもちろん、想像力が向上する、コミュニケーション能力が向上するなどです。たしかに、AIが即答してくれる時代に、知識や語彙を増やすことを目的とした読書の重要性は低下するかもしれません。それでも、考えるためには一定の知識や語彙は必要です。

これらは思考の材料であり栄養なのです。そうした知識や語彙も読書で吸収することができます。

それに、知識量や語彙力でAIと競うことが難しくても、つたない知識や語彙力では、うまくAIを使いこなすことさえできません。また、AIが導く答えの正誤も判断できません。

読書で知識や言葉を学ぶことで、それらは生きた情報として脳にインプットされます。

そうして、知識や語彙が増えれば、アウトプットする会話や文章の質があがり、コミュニケーション力が向上します。他者からの見方も変わってきます。知識量や語彙力は、人間同士の交流においても重要な役割を果たすのです。

◎読書で著者の考えや価値観を吸収せよ

また、読書で著者の追体験をすれば、著者の考えや価値観が吸収できます。たとえば、経営者や偉人の著作を読めば、彼らの行動を知り、思考法や人生観に触れることができます。その結果、彼らと同じ目線で世界を眺めることができるようになります。

だからこそ、賢い人々たちは読書習慣を大切にしています。ビル・ゲイツは幅広い読書習慣で知られています。気候変動、医療、教育など様々なトピックの本を読み、フィクションも読んでいます。異なる情報源から情報を得ることで、広い視野を得たり、革新的思考力を育んでいると思われます。また、ウォーレン・バフェットは、一日の約80%を読んで考えることに費やすと言っています。彼は、新聞や年次報告書に加え、たくさんの書籍を読み、情報に基づいて投資決定を行っています。

日本でも、ソフトバンクの孫正義氏やユニクロの創業者柳井正氏を筆頭に、多くの経営者が読書を習慣にしていると公言しています。彼らは読書を通して思考を習慣にし、アイデアや視点を育み、成功に必要なマインドを育んでいるのです。

これは、AIが普及する時代でも変わりません。日常業務をAIが代替するようになれば、人間には組織や環境を俯瞰ふかんする視点が求められるようになるかもしれません。そうした視点を得るには、経営者やリーダーの視点を持つことです。経営者と同じ本や、経営者が書いた本を読めば、経営者の視点から仕事を眺めることができるようになります。

このように考えると、読書は上に立つ人間に不可欠な習慣であり、AI時代にAIの上司になるためにも重要です。読書は、AI時代にますます重要な役割を果たすのです。

ワンポイント
AI時代には、読書で脳の筋トレをすることが不可欠になる
AI時代の読書術
藤井孝一
経営コンサルタント。株式会社アンテレクト取締役会長。年間1,000冊以上のビジネス書に目を通し、300冊以上読破する愛読家。その経験を活かして発行される要約と書評のメールマガジン『ビジネス選書&サマリー』は、同分野で日本最大級の読者数を誇る。雑誌などのビジネス書特集で本の選定や書評を行い、企業の研修で読み方の指南を行うなど、書籍に関する活動も積極的に行う。自らもビジネス書を多数執筆している。代表作『週末起業』(筑摩書房)をはじめ50冊以上。うちいくつかは中国、台湾、韓国でも刊行されている。
『読書は「アウトプット」が99%』(三笠書房)、『ビジネススキル大全』(ダイヤモンド社)、『投資効率を100倍高める ビジネス選書&読書術』(日本実業出版社)、『成功するためのビジネス書100冊』(明日香出版社)などビジネス書関連の書籍も多い。

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