本記事は、藤井孝一氏の著書『本当に頭のいい人が実践している AI時代の読書術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
AI時代も脳の筋トレは読書
人間がいくら思考力を磨き、AIとすみ分けたり、使いこなしたりしても、いずれ、技術の進歩でAIが苦手分野を克服し、人間はあらゆる分野で
とは言え、それは悲観すべきことではなく、むしろ喜ばしいことだと思います。かつて、仕事は肉体労働が中心でしたが、機械化の進展で、そうした人間の仕事を機械が請け負うようになりました。その結果、人間は重労働から解放され、代わりに身体でなく頭を使う労働にシフトしていきました。AIの技術が進歩し、仕事への導入がさらに進めば、いずれ人間は頭脳労働からも解放される日が来るかもしれません。
しかし、だからといって、頭脳を鍛えても意味がないと考えるのは間違いです。なぜなら、人間はAIの主人であり続けるべきで、そのためには思考力が必要だからです。
◎「思考不足」で「基礎思考力」が衰える
それに、人間は仕事するためだけに思考しているわけではありません。生活を維持するためにも、プライベートを楽しむためにも、心身を正常に保つためにも、脳は重要な役割を担っており、正常に活動している必要があります。そのためには、思考活動を続けて脳に刺激を与え続け、機能を正常に保っていかなければなりません。
しかし、仕事で思考する機会が減れば、思考力の衰えが顕在化するかもしれません。機械化で肉体労働が減ったように、AIの普及で頭脳労働が減れば、脳の使用頻度が減ることになります。その分、仕事以外で頭を使えばいいのでしょうが、その時には、あらゆる分野でAIが普及しているはずで、日常生活でも脳を使う機会は減っている可能性が高いと思います。
そうなると、これまでなかった弊害が顕在化するかもしれません。機械化で身体の負担が減り、身体が楽になった結果、現代人の多くが運動不足になり、生活習慣病に悩まされています。それを防ぐために、ジョギングをしたり、ジムに通ったりと、意識して運動習慣を取り入れる必要に迫られています。
同じように、頭脳労働から解放されるなどで、脳の負担が減れば「運動不足」ならぬ「思考不足」が起きる可能性があります。その結果「基礎体力」ならぬ「基礎思考力」が落ちてしまうかもしれません。
◎読書こそが脳を鍛える
こうした思考不足を回避し、脳の機能を維持するには思考を続けることです。そのために有効なのが読書です。このことは昔から多くの識者たちが指摘してきたことです。AIの技術が進歩しても、人間の脳の構造自体が変わるわけではありませんから、昔も、今も、これからも、その点は変わらないと思われます。読書は思考の機会を提供してくれます。読めば、考える習慣ができるのです。その過程で思考力が鍛えられます。つまり、読書習慣は、思考習慣につながるのです。つたな
読書の効果は、思考の機会が増えること以外にも、色々あります。知識や
これらは思考の材料であり栄養なのです。そうした知識や語彙も読書で吸収することができます。
それに、知識量や語彙力でAIと競うことが難しくても、
読書で知識や言葉を学ぶことで、それらは生きた情報として脳にインプットされます。
そうして、知識や語彙が増えれば、アウトプットする会話や文章の質があがり、コミュニケーション力が向上します。他者からの見方も変わってきます。知識量や語彙力は、人間同士の交流においても重要な役割を果たすのです。
◎読書で著者の考えや価値観を吸収せよ
また、読書で著者の追体験をすれば、著者の考えや価値観が吸収できます。たとえば、経営者や偉人の著作を読めば、彼らの行動を知り、思考法や人生観に触れることができます。その結果、彼らと同じ目線で世界を眺めることができるようになります。
だからこそ、賢い人々たちは読書習慣を大切にしています。ビル・ゲイツは幅広い読書習慣で知られています。気候変動、医療、教育など様々なトピックの本を読み、フィクションも読んでいます。異なる情報源から情報を得ることで、広い視野を得たり、革新的思考力を育んでいると思われます。また、ウォーレン・バフェットは、一日の約80%を読んで考えることに費やすと言っています。彼は、新聞や年次報告書に加え、たくさんの書籍を読み、情報に基づいて投資決定を行っています。
日本でも、ソフトバンクの孫正義氏やユニクロの創業者柳井正氏を筆頭に、多くの経営者が読書を習慣にしていると公言しています。彼らは読書を通して思考を習慣にし、アイデアや視点を育み、成功に必要なマインドを育んでいるのです。
これは、AIが普及する時代でも変わりません。日常業務をAIが代替するようになれば、人間には組織や環境を
このように考えると、読書は上に立つ人間に不可欠な習慣であり、AI時代にAIの上司になるためにも重要です。読書は、AI時代にますます重要な役割を果たすのです。
- ワンポイント
- AI時代には、読書で脳の筋トレをすることが不可欠になる
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