本記事は、藤井孝一氏の著書『本当に頭のいい人が実践している AI時代の読書術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

読書
(画像=fran_kie / stock.adobe.com)

本をたたき台にして、読んだ時間の3倍考える

一般的に読書は、自分が知らないことを得るために読む、インプットの手段と考えられています。しかし、本書では、特に読書を脳トレと考え、インプットで終わらせてはいけないとお伝えしてきました。読書は、読後に内容について考え、書いてあることを実践したり、人に伝えたりするなどアウトプットすることでようやく完結すると考えるべきです。この一連のプロセスこそが脳トレになるのです。アウトプットの方法を紹介していきます。

◎どうしたら自分の日常に当てはめることができるか

まず、読書をしたら、読んだ内容をもとに考えます。「読書をしたら、読んだ時間の3倍は考えよ」という人もいます。私は、本を自分の頭で考えるための「たたき台」と位置付けています。読後に考えることこそが、読書の本来の目的です。そうすれば読書は最高の思考活動になります。必要なら、内容の周辺情報を調べたり、文中のキーワードやコンセプトを調べたり、類書や著者の他の作品を読むなどもします。この活動こそが脳を鍛えていくのです。

考えることは色々ありますが、最初は何を考えたらいいのか分からないかもしれません。

その場合は、まず本の内容が「どうすれば自分の日常に役立つか」を考えます。これなら、比較的簡単に思索を巡らせることができるはずです。

たとえば、営業マンが営業法の本を読んだ場合や、独立を考えている人が起業の本を読んだ場合などは、自分にあてはめやすいと思います。ところが、本によっては「自分とは、まったく関係がない」と思えるものもあるはずです。そのような場合も、工夫して自分に当てはめます。

たとえば、フリーランスが、大企業の戦略論を読んでも、自分には何の接点も感じられないかもしれません。その場合は、大企業を自分に置き換えてみます。そして、中長期計画の立て方を、自分の人生設計や目標の作成に応用してみます。経営資源と言われるヒト、モノ、カネは、自分の資産、すなわち「人脈、持ち物、お小遣い・貯金」と置き換えてみます。このように、半ば強引でも、書いてあることを自分事にしてみるのです。

書籍のレビューなどでも「自分には役立たなかった」という意見が散見されます。たとえば起業家が苦闘する本を読んで「自分はサラリーマンだから関係ない」などと書く人がいます。そういう人は読んだ時間を無駄にしてしまいます。そうならないために、自分と縁のない内容からでも、自分に役立つ学びを何かしら得ることです。たとえば、起業家の本から「良い手が無い時は、最善の手を打つ」という教訓を得たら、それは勤め人でも使える思考法です。仕事で苦境に陥った時、この考え方に基づいて行動することができるからです。

このように、異文化や異業界の話を自分で応用できれば、学びの機会は格段に増えていきます。一般に「学び上手」は「応用上手」です。このような工夫が、応用力を鍛えます。

読書を活用すれば、応用上手になれるのです。

◎読んだらすぐに使ってみる

読んで「どうしたら自分の日常に当てはめることができるか」が見つかったら、実際に内容のいくつかを自分の生活の中で実践してみます。特に、ビジネス書は、生かすために読むものです。自分の仕事や暮らしに活かして、はじめて読んだ意味が生まれます。

読書は自己投資です。投資である以上、読むのに投じたお金や時間以上のリターンを回収するべきです。それができなければ、単なるお金と時間の消費であり、浪費です。投資に変えるには、読書で身につけた知識やスキルをどんどん使うことです。仕事や日常生活に役立てて、成果を上げて回収することで、はじめて読書は自己投資に変わったことになります。

読書の内容を活かすコツは、読んだらすぐに使うことです。「鉄は熱いうちに打て」と言いますが、これは読書でも同じです。たとえば、タイムマネジメントの本を読んだら、すぐに自分のスケジュールを作り直してみる、思考法の本を読んでフレームワークを身につけたら、すぐに自分の仕事を捉えなおしてみる、コミュニケーションスキルの本を読んで気になるフレーズがあったら、翌朝の会話に取り込んでみるなどです。

◎本に多くを求め過ぎない

その際、1冊の本に多くを求め過ぎないことです。たった一つでも役立つことが得られれば御の字です。そのたった一つが、人生の舵を大きく切ったり、飛躍させたりすることがよくあります。戦略思考の本で得たフレームワークで思考習慣が変わり、仕事の成果が飛躍的に改善した、時間管理の本を読んで時間の使い方が根本から変わり、夢が叶ったという人はいくらでもいます。読書には、パラダイムシフトを起こす力があります。それが運命を一気に変えてしまいます。それが読書の魅力です。

私も20代の時に船井幸雄さんの『早起きは自分を賢くする! 出勤前の30日「自己革命」!』という本を読んで早起きをはじめました。その結果、朝時間が生まれたため、その時間に勉強したり、副業したりするようになりました。そうして、会社から独立することができました。人生が大きく変わったと言えます。

ちなみに、早起きは今でも続けています。その時間にウォーキングをしたり、体操をしたり、読書をしたりして、心身の健康維持に役立てています。このように、たった1冊の本ではじめた朝時間の活用が、私の人生を形作る上で欠かせないものになっています。このように、読書は人生を変えるきっかけをくれるのです。

しかし、実践しなければ何も起きません。たった1つの小さなことでも、やってみることです。そのためには、本を読む際「書かれたハウツーを1つは即実践する」と自分に言い聞かせて読むことです。どんな本でも1つくらいは実践に値するものが書いてあるものです。それが何かを考え、実際にやってみることを自分に課して読むのです。私のように、大きな転機を得る可能性もありますし、なくても考えること自体が脳トレになります。どうしても実践したいことがない時は、運が悪かったと諦めて次の本に進めばいいのです。

ワンポイント
どんな本も、自分の日常に活かせないか考えてみる
AI時代の読書術
藤井孝一
経営コンサルタント。株式会社アンテレクト取締役会長。年間1,000冊以上のビジネス書に目を通し、300冊以上読破する愛読家。その経験を活かして発行される要約と書評のメールマガジン『ビジネス選書&サマリー』は、同分野で日本最大級の読者数を誇る。雑誌などのビジネス書特集で本の選定や書評を行い、企業の研修で読み方の指南を行うなど、書籍に関する活動も積極的に行う。自らもビジネス書を多数執筆している。代表作『週末起業』(筑摩書房)をはじめ50冊以上。うちいくつかは中国、台湾、韓国でも刊行されている。
『読書は「アウトプット」が99%』(三笠書房)、『ビジネススキル大全』(ダイヤモンド社)、『投資効率を100倍高める ビジネス選書&読書術』(日本実業出版社)、『成功するためのビジネス書100冊』(明日香出版社)などビジネス書関連の書籍も多い。

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