ZOZO創業者で実業家の前澤友作氏が5月15日に自身のX(旧ツイッター)を通じて、米国のメタ(Meta)とフェイスブックジャパンをそれぞれ提訴したと報告している。
この問題を巡っては、急増するSNS型投資詐欺が社会問題化している背景がまずある。前澤友作氏だけではなく、堀江貴文氏や経済評論家の森永卓郎氏といった著名人になりすました広告がフェイスブックやインスタグラム上で配信されており、被害が急拡大している。すでにメタの日本法人に対して損害賠償を求める訴えを起こした被害者もいる。
警視庁の組織犯罪対策第2課によると、SNS型投資詐欺は昨年1年間で2,271件の被害が確認されており、被害額は約277億円に及んでいる。1件あたりの平均被害額は1,000万円を超えており、500万円以下の詐欺被害が多いものの、1億円を超える高額被害も発生している。自民党の勉強会に出席した堀江貴文氏も自身のなりすまし広告で被害が発生していると述べ、「全部は把握していないが、1人1000万円ずつくらいだまされているらしい」と明かしている。
前澤友作氏は自身がこうした投資詐欺に利用されていることに関して、昨年からメタに対策を要請していたものの一向に改善されず、さらに「社会全体でのアプローチが重要だと考えます」とのメタの声明に対して、「日本なめんなよマジで」と怒りを露わにしている。こうしたことから、前澤友作氏は両社の責任は重大と考え、提訴に至った。
ここで気になるのが、損害賠償請求額だ。前澤友作氏は「損害賠償請求はあえて1円にしました」としているが、メタの2024年第1四半期決算は、売上高は364億5500万ドル(前年同期比27.3%増、約5兆7598億円*)、純利益は123億6900万ドル(同226.6増、約1兆9543億円)と大幅な増収増益であり、「なぜ1円?」という声も多く聞かれている。
そこで、ファッション&ビューティ業界にも精通している弁護士の近藤陽介氏に解説をお願いした。「おそらく2つのことが考えられます。ひとつ目は訴訟提起したというアピールのためです。SNS型投資詐欺は社会問題にもなっているので、多くの人の関心を集めるためにこのような賠償額にしたということです」と、近藤陽介氏が解説する。
「ふたつ目は、勝訴判決が得られるか見通しが読めないので、まずは1円でやってみて勝訴したら第2段で大きな金額を請求するつもりでもいるのかもしれません。仮に1億円の損害請求であれば印紙代だけで32万円かかります。10億円であれば302万円かかりますので、裁判費用のことも当然考えているでしょう」としている。
前澤友作氏は提訴の発表後にXを更新し、「これからAIの進化によって、誰もが自分自身になりすましたフェイク分身の脅威に晒される時代。それらフェイクコンテンツを無断で生成して不正利用する人はもちろん、それら(広告含め)を掲載してしまうプラットフォーム側の責任追及もしておかないと社会がおかしなことになる」と警鐘を鳴らしている。
*1ドル=158円換算(4月28日時点)