本記事は、西上 貴志氏の著書『心がほぐれる1分習慣』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
悲しくて涙が出そうになる時は、1杯の水を飲む
今月の営業成績が目標に到達しておらず、上司に叱責されることを想像した日の朝を想像してみてください。プライベートでほんのささいな行き違いからイライラしてしまい、パートナーと大喧嘩になってしまった翌日の朝でも構いません。
想像するだけで不安や悲しみが募り、涙が溢れそうにすらなるかもしれません。悲しみで心がいっぱいになっている状態で、朝の準備を行って会社に向かうことは、想像以上に大変だと思います。
そのような時には、コップ1杯の水をゆっくりと飲み干すことをおすすめします。
たった1杯の水ですが、その1杯の水を飲み干した後には随分と気持ちが楽になり、不思議と悲しい気持ちが落ち着くのです。
それでは、なぜ朝の1杯の飲水にそれほどの効果があるのか、考えてみましょう。
1杯の水を飲むと、睡眠時に休んでいた胃腸が動き出します。胃腸の動きによって副交感神経が優位となります。
睡眠から覚醒すると、副交感神経優位の状態から、交感神経優位の状態へと切り替えが進みます。平時であれば問題なく切り替えられても、心に負荷がかかっている時には、この切り替えだけでも感情が揺れ動きやすくなってしまいます。
その時に1杯の水を飲むことで、一旦副交感神経を優位にすることができます。ワンクッションをおくことによりスムーズな自律神経のバランス調節が得られ、心を落ち着けることが可能となります。
朝、1杯の水を飲む効果はそれだけにとどまりません。人は寝ている間に、皮膚や呼吸から大量の水分を放出しています。これを 不感蒸泄と言います。不感蒸泄によって、人は睡眠中に500㎖程度の水分を体内から失っていると言われています。
つまり、人は起床時にはみんな水分不足であるということです。
脱水状態であるということは、血液がスムーズに流れない状態ということです。例えば、頭に血液が届かなければ、頭がぼーっとしますし、体の隅々に血液が届かなければ、力が入らない・だるいと感じます。
たった1杯の水を飲むことで血流の改善も促してくれるのです。
睡眠中の不感蒸泄によって、朝は水分だけでなく、ナトリウムやカリウムといった電解質も失われている状態になっています。起床時にめまいや頭痛などが生じて悩んでいる方もいるかもしれません。その原因は電解質不足かもしれません。
朝、たった1杯の水を飲み干すことによって、副交感神経を優位にしてくれるだけでなく、水分と電解質を補給し、脱水状態の改善を得ることで心の安定につながるのです。
吐き気や腹痛がした時は、8秒かけてゆっくり息を吐き深呼吸する
今日は苦手な仕事をしなければならない。もしくは、要求レベルの高いクライアントとの会議がある。そういう日の朝は、これからのイベントを想像して、吐き気や腹痛を催してしまうこともあるかもしれません。
吐き気や腹痛だけでなく、手汗や震え、頭痛などの全身のさまざまな症状を伴うことも、時にはあるかもしれません。
そんな時には、8秒間かけて、ゆっくりと息を吐くような深呼吸をしてみましょう。
あなたが感じていた吐き気や腹痛は、少しずつ和らいでいくでしょう。
それでは、8秒かけてゆっくり息を吐き、深呼吸をすることの効果について考えてみましょう。
人は、緊張や不安などのストレス反応を呈している際、浅く速い呼吸になります。一方でリラックスした状態であれば、深くゆっくりとした呼吸になります。呼吸と感情は密接な関係をしているということになります。
呼吸自体は普段は無意識で行うものではありますが、意識することで呼吸の仕方を変えることが可能です。つまり、呼吸の仕方を変えるだけで感情のコントロールを図ることが可能になるのです。
ストレスを溜めない呼吸法として代表的なものに、腹式呼吸が挙げられます。腹式呼吸のやり方は次の通りです。
- 鼻からゆっくりと4秒数えながら空気を吸い込む
- 4秒息を止める
- 口からゆっくりと8秒数えながら空気を吐き出す
- ①〜③を繰り返す
※その際に、お腹に空気を溜め込む、お腹から空気を吐き出す意識をする
もし、吸う時や吐く時の時間が長すぎて大変であれば、無理をする必要はありません。息を吸う時の時間よりも、吐く時の時間を長めに確保することが重要です。
息を吸う時には交感神経が優位になります。一方で息を吐く時には副交感神経が優位になります。息を吐く時間を長めにとることによって、副交感神経を優位に高めてリラックス効果を得ることが可能となるのです。
ちなみに、疲れている時やストレスを感じている時に、ため息が出ることがあると思います。ため息は溜まった息を吐き出すことで、無意識に緊張状態を緩和する方向につながっているのです。
これまであなたが無意識に行っていたストレス解消法を、今日から意識的に取り入れて、朝のコンディション作りに活用してみましょう。
東京大学工学部卒。同大学院工学系研究科在籍中に医師を志し、北海道大学医学部医学科に入学。卒業後は精神科救急医療に従事し、外来診療だけでなく入院治療まで幅広く経験。延べ20,000人以上の診療経験を持つ。その中で早期介入・予防が患者・家族にとって最も負担軽減になるとの考えから、産業医活動にも幅を広げる。現在、大手コンサルティングファーム、 電機メーカー、製造業など約20社を担当する。並行して「あすかメンタルクリニック町田」「あすかメンタルクリニック大宮駅前」を開設。