本記事は、西上 貴志氏の著書『心がほぐれる1分習慣』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

ノートパソコンで何かを見る女性(感動・泣く)
(画像=buritora / stock.adobe.com)

泣ける映画で「涙活」し、涙とともに平日の疲れを洗い流す

平日の疲労感が強く溜まっている時には、家でゆっくりと休みの時間を過ごす日があってもよいでしょう。そんな時、あなたは家の中でどのようなことをして過ごしますか?疲れている状態ですから、あまり活動的なことはしたくないですよね。

例えばですが、そんな休日には泣ける映画を観て、1人で思いっきり涙を流してみるのも良い過ごし方かもしれません。

思いっきり泣いた後にぐっすりと眠れたり、急に冷静に物事が考えられるようになったりしたことはないでしょうか?泣くということは、ストレスケアの観点からはとても効果的なのです。

ここでは、「泣く」ことにはどのような効果があるのか、考えてみましょう。

泣く時に流す涙には3つの役割があります。角膜や結膜の乾燥を防ぐための基礎分泌の涙と、異物が入った時の防御反射の涙、そして感動した時などの情動の涙の3つです。

ストレス解消効果は、この3つ目である情動の涙を流した時に得られます。 ちなみに、喜びや悲しみによって泣くのは人間だけであるとも言われています。

では、この情動の涙を流した時にどのような作用があるのか、考えてみましょう。

情動の涙を流した際には、脳内にエンドルフィンと呼ばれるホルモンが分泌されます。エンドルフィンは強い鎮静効果があるため、痛みを和らげることが期待できます。 痛い時に涙が出る理由がそれです。それだけではなく、エンドルフィンは悲しみを軽減させたり幸福感を高めたりしてくれる効果もあります。 そのため、涙を流すことによって気分がスッキリとするのです。

また涙にはコルチゾールと言われるホルモンを低下させる効果があるとも言われています。コルチゾールはストレスホルモンとも呼ばれており、免疫低下や他のホルモンバランスの乱れなどへの影響をもたらしていると言われています。

そもそも、なぜ人は喜びや悲しみといった、感情が揺さぶられた時に涙を流すのでしょうか。

最近の研究において、涙を流す前には、額のほぼ中央部にあたる前頭前野という脳の場所の活動が急激に高まることがわかっています。前頭葉は記憶や判断、思考といった脳の中でも高次機能を司る領域と言われています。その中でもこの前頭前野は特に、「共感」に関係している部位だと言われています。

現代社会においては相手の気持ちに共感することが、コミュニケーションを円滑に行うためにも欠かせません。情動の涙を流すという行為は、相手の立場に立って共感し、感情移入しているからなのかもしれません。

疲れ切っている休日には、あなたが共感して感情移入ができる映画で、思いっきり涙を流してすっきりしましょう。

インドアで過ごしたい時は部屋の掃除、机の上だけでもきれいにしてみる

せっかくの休日だから、外に出ようと頭では考えていても、なかなかそのような気持ちにならないことってありますよね。とはいっても、家でしたいことも思いつかない時もあるかもしれません。

特に読みたい本もないし、観たい映画もない。このままだと何もしないまま1日が終わってしまいそうで、漠然と焦りすら感じてしまうかもしれません。

そんな時には、思い切って部屋の掃除でもしてみましょう。 部屋の掃除と考えると気が重いのであれば、普段一番よく使っている机の上の掃除だけでも構いませんので、行ってみましょう。きれいになった机を見れば、それだけで少し気持ちがスッキリしますよ。

それではまず、部屋が片付いていないことの影響について、考えてみましょう。

人は視覚から圧倒的に情報を獲得します。片付いていない部屋を想像してみてください。物が溢れた部屋だと視覚から得られる情報量が圧倒的に増えてしまうことがわかるでしょう。たくさんの情報が入ってくると、脳内での情報処理も同様に必要になり、結果的に必要以上のエネルギーの消耗につながってしまいます。すると当然、疲労感や憂鬱感、苛立ちなどにもつながってしまいます。

また、片付けなければというプレッシャーも悪影響をもたらします。完了しているタスクよりも完了していないタスクに関心や意識が残るというゼイガルニク効果が、ここでも影響します。つまり、片付けが終わっていないという中途半端な状態のままであると、そのことに関心や意識が向いてしまうというわけです。なるべく意識しないように考えたとしても「本当は片付けないといけないと思っているんだけど」「部屋が汚いな」と知らず知らずのうちに考えてしまい、それが心理的負担となってしまうのです。

では逆に、片付けを行うことの効果について、考えてみましょう。

片付けを行うことで部屋にいる時に視覚から入る情報が減るため、余計なエネルギーの消耗が軽減されます。また、片付けが終わったことによる安堵感や達成感にも、ストレス軽減効果が期待できます。

それだけではありません。片付けは適度な活動性を保ちつつ過ごすことができますので、活動的休息にもなり、身体的疲労の軽減効果も期待できます。

また、片付けをするという行為自体に、幸せホルモンであるセロトニンの分泌を促す効果があると言われています。片付けの行為の中でも、例えば窓や床を拭くような単純な反復動作は、リズム運動と同様の効果が期待できるため、セロトニンの分泌がより促進されます。

片付けをやらなければいけない家事仕事と考えると、面倒に感じてしまうかもしれません。ですが、リフレッシュ効果の期待できるアクションだと考えれば、これまでよりは取り組みやすいタスクになるかもしれません。まずは手近なところから片付けをやり切って、その小さな達成感を感じてみてはいかがでしょうか。

心がほぐれる1分習慣
西上貴志(にしうえ・たかし)
精神科専門医・産業医/医療法人社団 山桜会 理事長/あすか産業医事務所 代表
東京大学工学部卒。同大学院工学系研究科在籍中に医師を志し、北海道大学医学部医学科に入学。卒業後は精神科救急医療に従事し、外来診療だけでなく入院治療まで幅広く経験。延べ20,000人以上の診療経験を持つ。その中で早期介入・予防が患者・家族にとって最も負担軽減になるとの考えから、産業医活動にも幅を広げる。現在、大手コンサルティングファーム、 電機メーカー、製造業など約20社を担当する。並行して「あすかメンタルクリニック町田」「あすかメンタルクリニック大宮駅前」を開設。
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