本記事は、西上 貴志氏の著書『心がほぐれる1分習慣』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

ビルの前でノートパソコンを持つビジネスウーマン・ワーキングママ(ガッツポーズ)
(画像=buritora / stock.adobe.com)

思考力を要するタスクは1日のゴールデンタイムに集中して取り組む

出社日の1日の過ごし方を振り返ってみてください。始業から終業まで、常に同じ集中力を維持できる方はいますか? はいと言える方は少ないのではないでしょうか?

だとすれば、メリハリのある仕事のやり方が効率的であることは、なんとなく理解が得られると思います。ですが、実際問題としては多くの方が、出社してから目の前にある仕事を盲目的に片付けているのではないでしょうか。

人には集中できる時間帯があります。その時間帯をうまく活用できるような業務の仕分けや整理をすることが、高い生産性には必要となります。

まず、今日からやるべき業務を整理してみることをおすすめします。その上で、あなたにとって最も高いパフォーマンスが得られる時間帯に、思考力を要する高度なタスクをまとめることを考えてみましょう。

例えば、あなたにとって集中できる時間帯が午前中であれば、午前中は思考力を要するタスク、午後は単純作業をかためて行うようにしてみましょう。

ところで、ここでは午前中が最も高いパフォーマンスが得られる時間帯だという前提でお話をしましたが、あなたの場合、最も集中できる時間帯はいつでしょうか? もしかすると、夕方以降の方が集中できると感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

昨今の研究で、必ずしも全ての人が午前中に高い集中力が得られ、かつ生産性が上がるわけではないことが明らかになりました。

朝型や夜型という睡眠習慣には、遺伝的側面が見られることがわかっています。この遺伝的に決まっている睡眠習慣のことをクロノタイプといいます。自分のクロノタイプを知ることで、最も集中できる時間帯がある程度わかるようになります。クロノタイプを「朝型」「中間型」「夜型」に分類すると、諸説ありますが、概ね30%、40%、30%であることがわかっています。

例えば、夜型のクロノタイプを有する方が無理に早起きを心がけようとすると、むしろ生産性が低くなる可能性があることが指摘されています。夜型のクロノタイプの人は、夕方から夜間に最もパフォーマンスが上がる傾向があるとされています。

早起きは三文の徳という言葉があります。早起きをすると健康だけでなく、学業や仕事もはかどり、三文(わずかな金額)でも得しますよ、という意味です。社会的に成功している人たちの言葉として、早朝から活動することのメリットはよく言われます。ですが、実は早起きをしたから社会的に成功できたのではなく、社会的に成功している人に早起きをしている人が多かったのかもしれないのです。これを生存バイアスと言います。

昨今はリモートワークやフレックスタイム制などの多様な働き方が可能になりつつあります。言い換えれば自分の最も生産性の高い時間帯に働ける可能性が高まったとも言えます。自分のベストパフォーマンスの得られる時間帯をしっかりと把握した上で、そこで高度なタスクをこなす習慣を構築するだけで、周囲よりも高いパフォーマンスを出すことができるかもしれません。

今日の会議の気が重い時、「大丈夫」と10回つぶやいてみる

重要な会議でプレゼンテーションを担当することになっている、そんな当日の朝のことを想像してみてください。

もし積極的な議論などを想像して、ワクワクした気分であなたが会議に臨めるのであれば、何も問題はありません。会議を楽しんできてください。ですが、この後の会議のことを想像して、気分が晴れない、お腹が痛い、胸がドキドキして止まらない、といった方が現実には多いのではないでしょうか?

人によっては、気難しい上司が会議に出席することを想像したり、厳しい指摘がなされることを考えたりするだけで、逃げ出したい気持ちになるかもしれません。

そういった時には、試しに「大丈夫」と10回つぶやいてみましょう。それだけであなたの心はつぶやく前と比べれば随分と軽くなるはずです。

では、「大丈夫」と10回つぶやいてみることの効果について考えてみましょう。

あなたは独り言をつぶやきますか? つぶやくと答えた人は、1日に何回つぶやいているか考えてみてください。

まず、独り言をつぶやくこと自体について、心配している人もいるかもしれません。独り言をつぶやいている人を街中で見かけた際には、精神的に不安定なのかなと心配してしまうこともあるでしょう。ですが、独り言自体は、心理学的見地からは全く問題はありません。ご安心ください。

実は、言葉で発する独り言も含めて、自分の心の中で語りかけることをセルフトーク・インナートークと言い、誰もが行っていることなのです。しかも、人は1日に4万回ものセルフトークをしているとも言われています。さらに驚くべきことに、セルフトークは学業や業務のパフォーマンスにも影響をもたらし、セルフトークがポジティブであると、高いパフォーマンスにつながるということが明らかになっています。

これまで、自分自身のセルフトークの内容について、意識して向き合ってきた人はほとんどいないのではないでしょうか。まずはセルフトークの存在を自覚し、その存在を意識することが第一歩になります。

その上で、あなたのセルフトークがどのような内容か、思い出せるだけ思い出してみましょう。もし、「疲れた」「面倒くさい」「嫌だ」などのネガティブな言葉ばかりであれば、今日からポジティブな言葉に切り替えてみましょう。

人は無意識下では、どうしてもネガティブなセルフトークになりがちですから、落ち込む必要はありません。まずは単語レベルから、ポジティブなセルフトークに切り替えていき、徐々に文章も変えていけばよいのです。その第一歩として、「大丈夫」というポジティブワードを10回つぶやいて自分自身にその言葉を浴びせてみるのです。周りに人がいて、言葉を発することに抵抗感がある場合は、自分の心に10回語りかけるだけでも構わない、ということも理解できると思います。

最終的には1日に4万回のセルフトークを、ポジティブワードで埋め尽くしましょう。

心がほぐれる1分習慣
西上貴志(にしうえ・たかし)
精神科専門医・産業医/医療法人社団 山桜会 理事長/あすか産業医事務所 代表
東京大学工学部卒。同大学院工学系研究科在籍中に医師を志し、北海道大学医学部医学科に入学。卒業後は精神科救急医療に従事し、外来診療だけでなく入院治療まで幅広く経験。延べ20,000人以上の診療経験を持つ。その中で早期介入・予防が患者・家族にとって最も負担軽減になるとの考えから、産業医活動にも幅を広げる。現在、大手コンサルティングファーム、 電機メーカー、製造業など約20社を担当する。並行して「あすかメンタルクリニック町田」「あすかメンタルクリニック大宮駅前」を開設。
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